ジャックドール“逃げ宣言”で他馬を威嚇?大阪杯(G1)武豊「メンバーを見渡せばそういう競馬に」
4月2日には阪神競馬場で大阪杯(G1)が行われる。最後の直線が短い内回りコースが舞台とあって、逃げ先行馬有利の傾向が顕著だ。実際、G1昇格後の過去6年を見ても、4角で5番手以内の馬が「6-5-3-21」と、6番手以下の「0-1-3-46」を圧倒している。
当日のトラックバイアスは要チェックだが、やはり道中の位置取りは前目がベターになるだろう。次に気になるのはどの馬がレースの主導権を握るのかだ。出走馬16頭の中に前走で逃げた馬はおらず、近3走まで遡っても不在だった。
そこで浮上するのが昨年の当レースでハナを切ったあの馬である。
それは、3歳の秋以降に本格化したモーリス産駒のジャックドール(牡5歳、栗東・藤岡健一厩舎)のことだ。圧倒的なスピードを武器に中距離で5連勝を飾り、金鯱賞(G2)を圧勝して臨んだのが昨年のこのレースだった。
エフフォーリアに次ぐ2番人気に推された一戦。主戦の藤岡佑介騎手は予想通りにハナを切ったものの、直線で伸びを欠いて5着に敗れた。敗因として右トモの落鉄も挙げられたが、それ以上に2番手を進んだアフリカンゴールドの執拗なマークに遭い、道中で息の入らない展開になったことも痛かった。
ジャックドール自身は近3走でハナを切っておらず、3走前の札幌記念(G2)も2番手からの競馬でパンサラッサを破っている。控えても競馬はできるが、逃げたときの方が強い競馬を見せている。ハナを主張する馬がいなければ、逃げを選択する可能性が高そうだ。
実際に前走・香港C(G1)からコンビを組む武豊騎手もそれに近いイメージを持っているようだ。
“逃げ宣言”で他馬を威嚇?
29日に行われた最終追い切り後の共同記者会見にて「逃げて何勝もしていますし、逃げなくても勝っていますが、そういうところは頭に入れて乗りたい」とコメント。同日夜には公式サイトの日記を更新し、「逃げにこだわる馬ではありませんが」と前置きした上で、「メンバーを見渡せばそういう競馬になるのかな」(3月29日付)と、事実上の“逃げ宣言”とも捉えられる表現を用いている。
「もし競馬界のレジェンドがハナを切れば、後輩騎手はなかなか競りかけていくことはできないでしょうね。武豊騎手はペース判断に優れた騎手でもありますし、時にはまるで機械のような正確なラップを刻むこともあります。絶妙なペースで逃げを打つだけに、半端に競りかけると後ろの馬に有利な展開となるリスクもあるため、周りの騎手が遠慮しがちになるケースも見られます」(競馬誌ライター)
これまでも武騎手がハナを切って、結果的に “楽逃げ”になったレースは少なくない。ただ、G1の場合、武騎手が逃げ切ったレースは意外と少なく、JRA通算79勝のうちわずか5勝。それを唯一上回っているのがG1通算17勝を誇る元騎手の藤田伸二氏である。17勝のうち実に6勝が逃げ切り勝ちだった。
そんな“逃げの名手”藤田氏は19年に連載していた『日刊ゲンダイ』のコラム(19年3月23日公開)で興味深い持論を述べていた。
その年の高松宮記念(G1)は武騎手がモズスーパーフレアとのコンビで参戦。武騎手は、レース前に今回と同じように事実上の“逃げ宣言”をしていた。
それを受けて藤田氏は「先手を取りたいと思っている騎手も、ユタカさんが逃げ宣言していれば、無理にハナには立てんだろ」とレジェンドに競りかけていく騎手はいないと推察。「ユタカさんの逃げ宣言をうがって見れば、不安の表れとも読み取れるわな。『ハナに行く』と宣言した時点で、他の馬を威嚇してることになるからね。自分の競馬に持ち込むために伏線を張っているとも言えるんじゃないか」と、武騎手の心中を読み解いていた。
実際にそのレースではダッシュがつかなかったモズスーパーフレアに対し、先行各馬は無理にハナを主張せず。むしろ武騎手とモズスーパーフレアにハナを譲るような展開となった。
4年前の高松宮記念と同じように逃げを示唆している武騎手。ジャックドールは上位人気が予想されるだけに、ライバル勢も楽逃げを許すとは思えないが……。藤田氏が言う逃げ宣言による“威嚇効果”は果たしてあるのか。今年の大阪杯は武騎手もポイントに挙げるスタート、そして序盤の主導権争いに注目だ。