「種馬として成功してほしい」キタサンブラック、ドゥラメンテに続け! 「冷遇」が続くあの名馬へ、皐月賞(G1)で堀宣行調教師が語った思い

イクイノックス 撮影:Ruriko.I

 14日、JRA(日本中央競馬会)が公式HPでロンジンの『ワールドベストレースホースランキング』を発表し、日本のイクイノックスがレーティング129で世界1位を獲得した。日本調教馬が世界の単独トップに立つのは2014年ジャスタウェイ(130)、16年エイシンヒカリ(129)に続く、7年ぶり史上3頭目の快挙だ。

 イクイノックスが先月のドバイシーマクラシック(G1)で見せた圧巻のパフォーマンスは、日本だけでなく世界を驚かせた。

 ほぼ馬なりで楽勝した走りも然ることながら、3馬身半差を付けられた2着ウエストオーバーは昨年の愛ダービー馬。ディフェンディングチャンピオンであるシャフリヤール、昨年のブリーダーズCターフ(G1)の覇者レベルスロマンスらを寄せ付けない走りは、まさに世界No.1の評価に相応しいと言えるだろう。

 また、この勝利は父キタサンブラックにとっても大きな勲章に違いない。

 史上最多タイ(当時)の7冠馬として種牡馬入りを果たしたキタサンブラックだったが、決して良血とは言えない血統背景から初年度の種付料は500万円と控えめだった。さらに翌年以降は400万円、300万円と下降……。これまでも現役時代に脚光を浴びた多くの名馬が種牡馬として期待された結果を残せずに消えていったが、本馬もまた同じような道をたどるのかと思われた。

 しかし、イクイノックスの登場で状況が一変した。昨年、スタート時の500万円に復帰したキタサンブラックの種付料は今年1000万円と倍増。今回の勝利で、その人気ぶりにさらなる拍車が掛かることは間違いないだろう。

 その一方で、今なお早世が悔やまれるのが、キタサンブラックの同世代でクラシックを分け合ったドゥラメンテだ。

 先週の桜花賞(G1)のゴール前。先に抜け出しG1制覇にあと一歩まで迫ったキタサンブラック産駒のコナコーストだったが、それを豪快に差し切ったのが父ドゥラメンテ譲りの切れ味を見せたリバティアイランドだった。

 なお、ドゥラメンテ産駒は昨年のスターズオンアースに続く桜花賞連覇。他にもG1・3勝のタイトルホルダーや、昨年末のホープフルS(G1)を勝ったドゥラエレーデらを輩出するなど、重ね重ね一昨年の死去が惜しまれる名馬である。

 もしドゥラメンテが健在であれば、キタサンブラックと共に2015年のクラシック組が、その血で日本の競馬をリードしていたことは間違いないだろう。

「サトノクラウンには、種馬として成功してほしいと思っています」

 そんな中、今週末の皐月賞(G1)に向けた共同会見の席で、タスティエーラを送り込む堀宣行調教師がエールを送っている。トライアルの弥生賞ディープインパクト記念(G2)を勝った管理馬の父サトノクラウンは、かつて師が手掛けた馬だった。

タスティエーラ 撮影:Ruriko.I

 そして、このサトノクラウンもまた2015年のクラシック組。ドゥラメンテが勝った皐月賞で1番人気に支持されていたのが、タスティエーラと同じように弥生賞を勝って本番に挑んだサトノクラウンだった。

 また、本馬は重馬場で無類の強さを発揮することでも有名だ。特に天皇賞・秋(G1)で見せたキタサンブラックとの死闘は競馬史に残る激闘だ。激しい雨で最悪のコンディションになった東京の馬場を2頭が叩き合うシーンは、今なお記憶しているファンも少なくないはずだ。

 その後、ドゥラメンテやキタサンブラックの後を追うように種牡馬入りを果たしたサトノクラウンだが、初年度の種付料はわずか100万円に留まっている。宝塚記念(G1)や香港ヴァーズ(G1)を勝った名馬にしては異例の厳しい船出だ。

 主な原因は、やはりサトノクラウンの血統にあるのだろう。母ジョコンダIIのお腹の中で海を渡った本馬は、いわゆる持ち込み馬である。その父マルジュは2004年のカルティエ賞最優秀古馬ソヴィエトソングを輩出するなど、欧州で大きな成功を収めている種牡馬。

 だが、だからこそ日本の馬場への適性に疑問符が付いているというわけだ。

 実際にサトノクラウンも重馬場では無類の強さを誇った一方、軽い良馬場になると思わぬ敗戦を喫する馬だった。昨年、待望の初年度産駒がデビューしたが、今年の種付け料は150万円と相変わらずの低空飛行だ。

「タスティエーラが良い成績を挙げることで、良い影響が出ればいいなと思っております」

 度重なる故障に泣いたドゥラメンテがタイトルホルダーのような丈夫な産駒を出し、逃げに逃げまくったキタサンブラックがイクイノックスのようなキレッキレの産駒を出したように、タスティエーラの活躍がサトノクラウンの現役時代のイメージを良い方向へ変えてくれるかもしれない。

 堀調教師の言葉は、かつて厩舎を屋台骨として支えた愛馬の冷遇を汲み取ってのものだろう。まずは今週末の皐月賞でキタサンブラック産駒のソールオリエンス、ドゥラメンテ産駒のタッチウッドらを退け、サトノクラウンが同期対決に名乗りを上げる日を楽しみに待ちたい。

浅井宗次郎

1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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