怪物リバティアイランド効果で「トライアル勝利騎手」が“見学”危機!? NHKマイルC(G1)「先約優先」乗り替わりも、M.デムーロに迫る賞金ボーダー
14日、ニュージーランドT(G2)を勝ったエエヤン(牡3歳、美浦・伊藤大士厩舎)が、戸崎圭太騎手とのコンビで5月のNHKマイルC(G1)へ挑むことがわかった。
デビュー2戦こそ躓いたが、その後3連勝で重賞初制覇を飾り、春の3歳マイル王決定戦の有力候補に浮上したエエヤン。このシルバーステート産駒を連勝街道に導いたのはM.デムーロ騎手だったが、未勝利戦を勝たせた戸崎騎手に再び手綱が戻る格好となった。
「どうやらデムーロ騎手は、1月のジュニアC(L)を勝ったクルゼイロドスルの先約を優先したそうです。今週の皐月賞(G1)でも、スプリングS(G2)を勝ったベラジオオペラが横山武史騎手の先約の都合で田辺裕信騎手に乗り替わったように、デムーロ騎手としても後ろ髪を引かれる思いがあるかもしれませんが、クルゼイロドスルとのコンビで頑張ってほしいですね」(競馬記者)
ちなみにクルゼイロドスルはデビューから4戦2勝、すべて1600mを使われているマイルのスペシャリストだ。3連勝中のエエヤンほどの勢いはないかもしれないが、ジュニアCを勝った際にデムーロ騎手も「東京(未勝利戦)で勝った時から能力の高さを感じさせてくれていた」と高く評価していただけに楽しみな存在である。
デムーロ騎手が評価している通り、未勝利戦は出遅れながらも上がり3ハロン最速となる33.8秒の末脚で差し切る豪快な内容。NHKマイルCと同じ東京・芝1600mで見せたパフォーマンスだけに、結果的に「デムーロ騎手の“選択”は正しかった」というオチになるかもしれない。
「トライアル勝利騎手」が“見学”危機!?
だが、その一方で最悪の場合、デムーロ騎手がNHKマイルCに騎乗できない可能性があるというから驚きだ。
「まだ先の話なので不透明な部分も大きいですが、場合によってはクルゼイロドスルが賞金不足で除外になってしまうかもしれません。
というのも、今年は抜けた馬があまりおらず収得賞金を持っている馬が結構多いんですよね。ジュニアCを勝っているので例年なら問題ないはずですが、トライアルを勝ったはずのデムーロ騎手が、まさかの“見学”なんてことにならないといいですが……」(競馬記者)
記者曰く、出走ボーダーのカギを握っているのは、激闘を繰り広げたばかりの桜花賞組だという。
今年の桜花賞(G1)は阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)2着のシンリョクカが除外の危機に陥るなど、戦前から異例の賞金ボーダーの高さが話題になっていた。最終的に回避馬が出たため“滑り込み出走”となったが、賞金不足で除外されて今週のアーリントンC(G3)に回ったユリーシャは、クルゼイロドスルと同じ収得賞金1600万円の馬である。
例年、桜花賞からNHKマイルCへ向かう馬はそう多くないが、今年は2つの理由で「ちょっと増えるかもしれません」という。
1つはスピード色が強く、2400mのオークス(G1)よりもNHKマイルCに魅力を感じている馬が桜花賞組に少なくない点。
そして、もう1つが桜花賞で圧倒的な強さを示したリバティアイランドの存在だ。
「2着コナコーストの鮫島克駿騎手も『凄いのが来ました』とコメントしていましたが、桜花賞でリバティアイランドが見せたパフォーマンスの前に、戦意を喪失してしまった関係者も少なくないとか……。
あの日の阪神の馬場は前に行った馬が有利で、実際にリバティアイランドとシンリョクカの阪神JFで1、2着した2頭以外の上位陣は、すべて中団より前に行った馬。そんな流れをほぼ最後方から差し切ってしまったのが、リバティアイランドです。
久々のレースでしたが折り合いに苦労している様子もなかったですし、スタートが速くない馬なので2400mへの延長はむしろプラス。あの末脚が今度は東京で炸裂することを思えば、オークスをノーチャンスと捉える陣営が出てきてもおかしくありません。中には、混戦模様でワンチャンありそうなNHKマイルCを選択する馬も出てくるでしょうね」(同)
取得賞金1700万円のシンリョクカが滑り込み出走だったことからも、桜花賞組はすべて1600万円のクルゼイロドスルよりも高い賞金を持っていることになる。さらに今週末のアーリントンCで、クルゼイロドスルよりも取得賞金の低い馬たちが優先出走権を得るようなら、NHKマイルC出走枠はさらに狭き門になる可能性があるということだ。
「リステッドを勝ったことで、現在の収得賞金が1600万円。直行でも出走できる可能性が高いと判断をしました」
クルゼイロドスルの高橋義忠調教師がそう方針を語ったのは今年1月。例年ならまったくその通りなのだが、今年の3歳戦線はちょっとした異常事態に陥っている。