ダノックス“10億円軍団”でも遠い頂点…初優勝どころかダービー出走なしの危機も?
16日に中山競馬場で行われた皐月賞(G1)。牡馬クラシックの開幕戦を制したのは、2番人気のソールオリエンスだった。
デビューから2戦2勝で京成杯(G3)を制したキタサンブラックの新たな怪物候補が、3連勝で世代の頂点へ。最内枠から後方待機策を採り、4角17番手から大外を回しての差し切り勝ちは、桜花賞(G1)のリバティアイランドを彷彿とさせる圧巻のパフォーマンスだった。
一方、このレースで最下位の18着に沈んだのがダノンタッチダウンだ。前走は朝日杯フューチュリティS(G1)で2着と、世代屈指の能力の持ち主であることは示している同馬だが、この日はタフな馬場コンディションの影響もあってか4角で手応えいっぱいとなって失速してしまった。
来年2月で引退が控えている安田隆行調教師にとっては、これが「最後の皐月賞」だっただけに、リーディングジョッキーの愛弟子・川田将雅騎手の手腕をもってしても「現状の精一杯」で18着というのはショッキングな結果だったことだろう。JRAのG1では通算14勝を挙げている名伯楽も、実はクラシックレースでは未勝利。今回もその壁を打ち破ることはできなかった。
そしてその“悲願”という意味では、オーナーサイドにも同じことが言える。「ダノン」の冠名でお馴染みダノックスの代表・野田順弘氏も、これまでJRAのG1は通算9勝を挙げながら、未だクラシックレースでの勝利がない。
悲願の達成に向けて、現3歳世代も18頭の精鋭をJRAに登録。しかもその半数にあたる9頭がセールでの購買馬で、その総額はなんと「10億8680万円」(取引価格)という超豪華な布陣を整えたが、それでも世代の頂点への道は険しいものとなっている。
初優勝どころかダービー出走なしの危機も?
ダノンタッチダウンの大敗に続いて、週明けには青葉賞(G2)から日本ダービー(G1)を目指していたダノンザタイガーの「春全休」が発表された。
『サンケイスポーツ』によると、歩様の乱れが見られたため検査を実施した結果、「右前の深管、中筋の付け根あたりにダメージ」が見つかったとのこと。国枝栄調教師も「残念ですが、先のある馬ですから」と語っており、ここは無理せずに大事を取って出走回避を決断したという。
ダノンタッチダウン(取引価格=2億6400万円)が皐月賞でシンガリ負けを喫し、ダノンザタイガー(取引価格=2億9700万円)はダービーへの挑戦権すら得ることができず……。この世代のエース候補2頭が共倒れとなった今、ダノックスの“第3の矢”にして最後の希望となるのがダノントルネードである。
同馬も後のダノンタッチダウンを購入した2021年夏のセレクトセール1歳で1億8150万円の値が付いた期待の1頭。ここまで3戦1勝、2着が2回とその歩みは順調とは言えないが、過去の出走歴を見ると、世代屈指のポテンシャルの持ち主であることはすぐに確認することができる。
昨年7月の新馬戦はハナ差の辛勝だったが、負かした相手は後にすみれステークス(L)を勝って皐月賞にも出走したシャザーン。さらに3着馬のラスハンメルと5着馬のウインオーディンも皐月賞まで駒を進めているほか、4着馬のシーズンリッチも皐月賞への出走はなかったものの、毎日杯(G3)を制してこの後はダービーに向かうことになっている。この世代屈指の“ハイレベル新馬戦”を勝ったというのは強調できるポイントだ。
さらに、前走は今年1月の1勝クラス戦で2着に敗れているものの、相手は後にきさらぎ賞(G3)を勝って皐月賞でも4番人気になるフリームファクシだった。この一戦以降は音沙汰がなかったために不安の声も寄せられていたが、先週には栗東に戻り、調教にも乗り込まれている。休みを挟んでの成長が見られれば、ダービーでも好勝負を演じる資格はあるはずだ。
あとはその“大目標”に駒を進めることができるか。ここからダービーへのチケットを掴むためには、5月6日に控えている“ダービー最終便”こと京都新聞杯(G2)、もしくはプリンシパルS(L)で結果を残すしか道はない。
どちらを選択するにしても、この春の悲願達成のためには絶対に負けられない一戦であり、このチャンスを逃すようなことがあれば、クラシック初制覇はおろか、ダービーの出走馬ゼロという危機的状況も現実味を帯びてくる。
“10億円軍団”をもってしても悲願達成は霧散となってしまうのか。ダノックスの最後の希望・ダノントルネードの動向に注目だ。