「最高傑作」は武豊×メジロマックイーンにあらず!? ライアン、パーマー最強「御三家」を超える期待をかけられた“メジロ四天王”の筆頭とは
今年、京都競馬場に帰ってきた天皇賞・春(G1)は「連覇」の多いG1としても有名だ。
なにせ2014年にフェノーメノが連覇を飾って以降→別の馬(ゴールドシップ)→連覇(キタサンブラック)→別の馬(レインボーライン)→連覇(フィエールマン)→別の馬という流れが続いている。この“法則”通りなら、今年勝つのは昨年の覇者タイトルホルダーになるが、果たしてどうだろうか。
そして、若き武豊騎手を背にこの天皇賞・春で最初に連覇を達成したのが1991年、92年のメジロマックイーンである。
ちなみに、1938年に創設された歴史を思えば、最初の連覇まで時間を要した感もあるが、これは1度優勝した馬の再出走を認めない勝ち抜き制度が1980年まで続いた影響だろう。
大ヒット競馬アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)でも主役級の扱いを受けているメジロマックイーンは、まさに名門「メジロ」を代表する存在だ。
特にこの時期のメジロ軍団は、まさに絶頂期。昔を知らないウマ娘ファンには、メジロマックイーンとメジロライアン、メジロパーマーがすべて同い年と言えば、当時の盛況ぶりが伝わるかもしれない。彼らはかつて「メジロ御三家」と呼ばれ、春のグランプリ・宝塚記念(G1)を3頭で3年連続勝利するなど、まさに一時代を築いた存在だった。
だが、実は当時のメジロ軍団には、そんなメジロ御三家を超える「筆頭」がいたことは、あまり知られていない。
「御三家」を超える期待をかけられた“メジロ四天王”の筆頭とは
メジロマックイーンは幼少の頃から、周囲の関係者に大きな期待をかけられていた。祖父メジロアサマ、父メジロティターンはメジロが誇る天皇賞馬である。さらに兄には菊花賞(G1)と有馬記念(G1)を制したメジロデュレン。生まれながらにして兄と同じ池江泰郎厩舎(後のディープインパクトの厩舎)に“内定”するなど、期待されて当然の存在だったといえるだろう。
ただし、幼駒の頃の評価そのものはメジロライアンの方が上だった。晩成傾向だったメジロマックイーンに対して、皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)で3、2着するなど早期から活躍したのがメジロライアン。つまりは当時の馬体の完成度は、本馬の方が優れていたというわけだ。一方、さらに奥手のメジロパーマーは、エリートが集うメジロ軍団の中では特別目立った存在ではなかったという。
そんな中、メジロライアンとメジロマックイーンを抑え、「同期のNo.1」と目されていたのが、後にメジロルイスと名付けられる牡馬である。
メジロルイスの母はメジロの基礎牝馬となったシェリル。メジロマックイーンの父メジロティターンの母であり、つまりマックイーンとルイスは甥と叔父という間柄だ。ちなみにティターンとルイス兄弟の姉にあたるメジロチェイサーから生まれたのがメジロライアンである。メジロルイスもまた、メジロの粋を集めた1頭といえるだろう。
また、メジロは年によって馬名にルールを設けており、この年(1987年)に生まれた牡馬は「米国の有名人(ヒーロー)」だった。俳優のスティーブ・マックイーンからメジロマックイーン、野球選手のノーラン・ライアンからメジロライアン、ゴルファーのアーノルド・パーマーからメジロパーマーという具合である。
ここまで言えばピンとくる読者もいるかもしれないが、メジロルイスは陸上選手のカール・ルイスから拝借された。1984年のロサンゼルス五輪で4冠を達成するなど、当時の米国を代表する有名人だった。このことからも本馬の期待の高さが伺える。
ただ、名門メジロの超エリートとして、極めて大きな期待を背負ったメジロルイスだったが、そのキャリアはわずか2戦で幕を閉じている。デビュー前に腰を痛めてしまい、思うようなパフォーマンスを発揮できなかったためだ。幼少期から最も高く評価されてきた本馬だが、デビュー戦は奥手のメジロマックイーンよりもさらに遅く、皐月賞が1か月後に控えた3歳の3月だった。
ちなみにメジロルイスの父はリアルシャダイである。数々の名ステイヤーを輩出したスタミナ系の種牡馬だったが、当時社台グループが購入し、さっそくシャダイカグラ(桜花賞・G1)やリアルバースデー(日本ダービー2着)、オースミシャダイ(阪神大賞典・G2)などが活躍した新進気鋭の種牡馬だった。日本ダービーよりも3200mの天皇賞を勝つことに重きを置いていたメジロ軍団のニーズにマッチしたというわけだ。
しかし、その代表産駒のライスシャワーが後にメジロマックイーンの天皇賞・春3連覇を阻止するとは、メジロ軍団にとってはなんとも皮肉な話であり、そこがまた競馬の奥深いところでもある。
あのメジロ黄金時代から、もう30年以上が経過しているが『ウマ娘』などの競馬ゲームやインターネットのおかげもあってメジロマックイーン、メジロライアン、メジロパーマーの御三家には、今なお多くのファンがいる。
だが、彼らを超える期待をかけられた“エース”がいたことも覚えておいて欲しい。もしメジロルイスが期待通り活躍していれば、御三家は「四天王」と言われていたかもしれない。