「エエヤン」では済まない? 戸崎圭太「ドン詰まり」の不完全燃焼で「直線でスムーズさを欠いた」この春、有力代打の相次ぐ失敗…
7日、東京競馬場で行われた3歳マイル王決定戦・NHKマイルC(G1)は、9番人気のシャンパンカラーが勝利。鞍上の内田博幸騎手にとっては、2018年のフェブラリーS(G1)以来、5年ぶりのG1制覇となった。
雨のNHKマイルCで、元大井の名手が見事な復活を遂げた。JRA通算1300勝を超える内田騎手だが、元は南関東のトップジョッキー。そんな内田騎手が初めてG1を勝ったのが、今年と同じように雨中で行われた2007年のピンクカメオだった。
衝撃的な勝利だった。当時のピンクカメオは出走18頭中17番人気という大穴で、前走・桜花賞(G1)14着からの巻き返しである。管理する国枝栄調教師でさえ東京ではなく、裏開催の新潟遠征を選択するほどの驚きの勝利だった。
あれから16年。その後、地方のトップジョッキーとして鳴り物入りでJRAジョッキーとなった内田騎手は2009年にリーディングジョッキーに輝くなど一時代を築いたが、徐々に低迷……。昨年は22勝に終わり、今年もここまで9勝と苦しんでいた。
だからこそ、そんな内田騎手の苦労を知っているファンは少なくない。「その時(ピンクカメオのNHKマイルC)はまだJRAのジョッキーじゃなかったので。今回はJRAのジョッキーとして勝てたことが一番です」と語った際には、温かい拍手と声援に包まれた。
そんな内田騎手と対照的に、またも存在感を示せなかったのが、同じく元南関東の名手として名高い戸崎圭太騎手である。
戸崎騎手が騎乗していたのはトライアルのニュージーランドT(G2)を勝ち、2番人気に支持されていたエエヤン。前走でコンビを組んでいたM.デムーロ騎手がクルゼイロドスル(感冒で取り消し)に騎乗するため、戸崎騎手に大きなチャンスが巡ってきた格好だった。
しかし、自身が連載する競馬ラボの『週刊! 戸崎圭太』で「未勝利の時は確かに折り合いが難しい印象を受けますよね」と語っていた通り、今回も折り合いに苦戦……。レース後「ペースが落ち着いた時に折り合えるかが課題だったが、そこで上手に乗れず、掛かる感じになってしまった」と敗因を語っている。
さらに致命的だったのが、最後の直線だ。折り合い重視の競馬で、後方から最後の直線に懸けたエエヤンと戸崎騎手だったが、前にセッションとフロムダスクが立ちはだかって進路がない状況。結局、まともに追えたのはラスト200m付近で、すでに大勢が決した後だった。
戸崎騎手は「直線でスムーズさを欠いたのは確かだけど、そこでエネルギーを消耗したのが影響した」と行き場を失ったことよりも折り合い面を最大の敗因としたが、2番人気9着という不完全燃焼に納得がいかなかったのは、レースを見守ったファンだろう。
レース後には一部のファンからSNSや掲示板などで「何故、外に出さなかったのか」「最内空いてなかった?」「2番人気でイチかバチかの競馬とか」といった戸崎騎手の騎乗に対する疑問の声が続々……。
中には「やっぱりデムーロ→戸崎の時点で」「安心して切れました」「いつも通りの戸崎」といった厳しい声もあった。
南関東のリーディングジョッキーとして、まるで内田騎手の後を追うように2013年にJRAのジョッキーとなった戸崎騎手。こちらも2014年から3年連続でリーディングに輝くなど一時代を築き上げている。
最近は川田将雅騎手やC.ルメール騎手、若手の横山武史騎手などの台頭を許している格好だが、それでも昨年は関東1位、自身4度目となるMVJを受賞するなど、まだまだ“戸崎ブランド”は健在だ。今回のNHKマイルCでエエヤンが巡ってきたのも、関係者が戸崎騎手を高く評価しているからに他ならないだろう。
しかし、記者曰く、その“戸崎ブランド”の信頼性も「このままでは危ういと言わざるを得ない」という。
「最近の戸崎騎手は、G1などの大舞台で乗り替わりになった有力馬を任されるケースが目立っていますが、残念ながらいい結果を残せていません。もちろん、G1で有力馬が巡ってくるのはトップジョッキーの証と言えますが、あまり結果が出ないようでは……」(競馬記者)
実際に今春では、ドゥーラと新コンビを結成したチューリップ賞(G2)で1番人気に推されたものの15着に大敗。スプリングS(G2)でも乗り替わったセブンマジシャンで1番人気に支持されたが6着に敗れている。また、高松宮記念(G1)では、かつてのスプリント王ピクシーナイトの復帰戦を託されたが、13着と見せ場さえ作ることができなかった。
「戸崎騎手は、来週のヴィクトリアマイル(G1)で有力馬のソングラインと新コンビを組む予定。また、日本ダービー(G1)でも毎日杯(G3)を勝ったシーズンリッチに乗り替わりで参戦することが決まっています。さすがに本人も、そろそろ結果が欲しいでしょうね」(同)
今回、再び存在感を大きくアピールした内田騎手が5年ぶりのG1勝利なら、戸崎騎手も最後のG1制覇は2021年の秋華賞(アカイトリノムスメ)まで遡る。最近は大舞台で有力馬を託されることも増えているだけに、何とか結果で“戸崎ブランド”の価値を守りたいところだ。