横山武史「オヤジ狩り」成功の大外一気! NHKマイルCでC.ルメールの「完コピ」冴えた、春の東京で大爆発の予感
先週のNHKマイルC(G1)を制したのは、関東のベテラン内田博幸騎手とシャンパンカラーのコンビ。9番人気の低評価を覆しただけなく、鞍上の内田騎手にとってもノンコノユメで制した2018年のフェブラリーS(G1)以来となる久々のG1タイトル獲得だった。
雨中のNHKマイルCと内田騎手で思い出されるのは、ピンクカメオとのコンビで大波乱を演出した2007年の同レースだ。17番人気でアッと驚く激走を見せ、2着に1番人気ローレルゲレイロ、3着に18番人気ムラマサノヨートーの入った3連単の払戻は、なんと973万9870円の超高配当。名手の巧みな手綱捌きが大金星を手繰り寄せたといえる。
直前に稍重へと変わった馬場、道中の騎手による駆け引きなど、多くの見どころのあった今年のNHKマイルだが、内から3頭に横山一家が揃って入ったことでも、一部のファンから注目を集めていた。
奇しくも1番枠のフロムダスクに横山和生騎手、2番枠のモリアーナに横山典弘騎手、3番枠のウンブライルに横山武史騎手と長男、父、3男が勢揃い。和生騎手が17番人気、武史騎手が8番人気に対し、典弘騎手は人気で上回る5番人気。騎手の大先輩である横山典騎手としても、2人の父としても、威厳を見せつける絶好のチャンスだっただろう。
ただ最も期待の大きかった横山典騎手のモリアーナは、スタートで後手を踏んでしまう。道中は中団やや後方の内目での追走を強いられ、最後の直線に入って進路取りに苦心するシーンも見られた。5番人気6着という結果は良くも悪くもといった感じだが、横山典騎手としても満足できる内容ではなかったかもしれない。長男の和生騎手も最下位と振るわなかった。
これに対し、とても届かないような後方から大外一気で勝ち馬をアタマ差まで追い詰めたのが、ウンブライル(牝3、美浦・木村哲也厩舎)に騎乗した横山武騎手だ。
横山武史騎手「オヤジ狩り」成功の大外一気!
勝利まであと一歩という善戦に「馬は最高でした。結果だけが残念です」と武史騎手も悔しさを露わにしたが、横山一家3人の中で最も好騎乗だったといえるのではないか。
特筆すべきは大舞台で思い切った作戦を採った武史騎手の勝負勘だ。
一般的に距離のロスを抑えられる内枠に入った場合、経済コースを通れる利を生かした立ち回りが功を奏するケースが多い。そのため2枠3番のウンブライルが、ほぼ最後方から大外を回す博打を打つと予想したファンは決して多くはなかったはずだ。
8番人気という気楽な立場だったことが後押ししたかもしれないが、一歩間違えれば騎乗ミスと批判されてもおかしくない選択。この大胆不敵な騎乗ぶりこそが、並の騎手ではないという証左ともいる。
「ゲートが開いてからレースプランを考える騎手が多い中、横山武騎手は最初から外へと持ち出すイメージで騎乗しいていたようです。モリアーナと同じく出負け気味のスタートでしたが、内を選んだ父に対して武史騎手は徐々に外へ外へと誘導。馬群からも少し離れた後方2番手での追走は“プチポツン”のような感じですね。
勝ちを意識した騎手が早仕掛けになったこともあり、最後の直線は真ん中から内に馬群が密集して外にスペースがある状況。気難しいところもある馬だけに、これといった障害もなく伸び伸びと走れたからこそ、上がり最速の末脚を引き出せたのでしょう」(競馬記者)
実際、前走のニュージーランドT(G2)でもC.ルメール騎手が既にお手本騎乗を見せていたことも確かだ。
このときは東京と違って直線の短い中山だったため、道中はもう少し前目の位置取りだったが、馬のリズムを優先する騎乗で外から豪快に追い込んだ。このレースには武史騎手もルミノメテオール(6着)で参戦。ウンブライルとのコンビが決定した際には、ルメール騎手の騎乗を確認していたに違いない。
とはいえ、15番枠の前走と3番枠の今回とでは勝手が異なることも確か。それでも後方に下げてまで“完コピ”をして見せた手腕には恐れ入るばかり。結果的に父を凌ぐ好走で“オヤジ狩り”にも成功した。
今週も続く春のG1連続開催。ヴィクトリアマイル(G1)はナミュール、オークス(G1)はペリファーニア、そしてエフフォーリアとの苦い記憶が残る日本ダービー(G1)には無敗の二冠奪取の懸かるソールオリエンスと有力馬がスタンバイと、大爆発の予感もヒシヒシ……。
ゴールデンウィークの後は“横山武史月間”といきたいところだ。