「ダメヤン」戸崎圭太が手に入れたタナボタチャンス! 「他の騎手なら買えた」と嘆くファンも…災い転じて福となしたヴィクトリアマイルの快勝

ソングライン 撮影:Ruriko.I

 ソダシと初コンビを組んだD.レーン騎手の斜行がファンの間で物議を醸したヴィクトリアマイル(G1)。ゴール前で必死の抵抗を見せる白毛のアイドルをアタマ差交わして勝利を掴んだのは、戸崎圭太騎手とソングライン(牝5、美浦・林徹厩舎)のコンビだった。

 鞍上の戸崎騎手にとっても、アカイトリノムスメで制した2021年の秋華賞(G1)以来となる久々のG1勝利だ。ピクシーナイトに騎乗した前日の京王杯スプリングC(G2)では、直線の勝負どころで進路をなくして不完全燃焼に終わっていたばかり。不甲斐ない騎乗の翌日に最高の結果を残し、元リーディングジョッキーの意地を見せた。

 ただ今年の戸崎騎手は、ファンが心配するほどツキから見放されているような状況だったことも事実である。

 ヴィクトリアマイルまでに重賞3勝を挙げていたとはいえ、戸崎騎手が過去に騎乗したことのある馬が、次々に別の騎手とのコンビで重賞勝ち。G1レースにおいても、フェブラリーSのレモンポップ、皐月賞のソールオリエンス、NHKマイルCのシャンパンカラーなど、コンビを継続していたならG1を勝てたかもしれない馬も複数いた。

「他の騎手なら買えた」と嘆くファンも…

 NHKマイルCについては、2番人気のエエヤンに騎乗したが、スムーズな競馬が出来ずに9着。これにはエエヤンに◎を打っていた『東京スポーツ』の田原成貴氏(元JRA騎手)から「ダメヤンがおったのよ、エエヤンの上に」と辛辣な評価が下された。

 あまりにも悪い流れが続いていた戸崎騎手とのコンビが決定した際、ネットの掲示板やSNSなどでは、ソングラインに期待していた一部のファンから「よりによって戸崎」「もっと他にいなかったの?」「嫌な予感しかしない」といった嘆き節まで出る有様だった。

 ソングラインの実力や状態が申し分なかったことは確かだが、チャンスをきっちりモノにした戸崎騎手の手腕もさすがというしかない。

 ヴィクトリアマイルのレース後には、「戸崎信じてた」「戸崎ありがとう」という声が見られたものの、「他の騎手なら買えた」という恨み節も散見された。

 その一方、今回の勝利が理想的な展開だったのかとなると、実はそうでもなかったといえる側面もある。

戸崎圭太騎手 撮影:Ruriko.I

 こちらについてはレース後のコメントで戸崎騎手が「思ったよりも位置取りが後ろになりました」「内に入りこんでしまいました」、林調教師も「馬場傾向は外差しだと思っていました」「内をすくったので祈るような思いで見ていました」と振り返っていたように、結果的にすべての条件が好転しての勝利。2着ソダシとわずか「アタマ差」だったことを考えれば、もしスムーズに外に出せていても、同じ結果とはならなかった可能性がある。

 内目の馬群の窮屈なところにいたソングラインだが、すぐ前を走っていたスターズオンアースが強い馬だったため、C.ルメール騎手のすぐ後ろについていくだけで容易に進路が見つかるという幸運もあった。

 ツキのないときは、やることなすことすべてが裏目に出やすいが、少なくとも今年のヴィクトリアマイルに関しては、戸崎騎手にとって「災い転じて福となす」結果だったのではないか。

 また、昨年の安田記念(G1)を制したソングラインの騎乗依頼が回ってきたことも、戸崎騎手にまだまだ運が残っていたように感じられた。

 同馬は過去にレーン騎手やC.ルメール騎手、池添謙一騎手が手綱を取ったことのある馬だが、ソダシ陣営が吉田隼人騎手とのコンビを解消してレーン騎手を起用。そしてルメール騎手がスターズオンアース、池添騎手がメイケイエール(左前脚のフレグモーネで回避)と出会ったことにより、鞍上が宙に浮いた状況となっていた。

 そんなタイミングで棚ボタ的に白羽の矢が立ったことも幸運であるし、戸崎騎手の手腕が買われていたからこその騎乗依頼だろう。

 自身が騎乗したことのある馬が次々に好結果を残していた中で、騎乗経験のなかったソングラインで勝てた意味は、今の戸崎騎手にとって非常に大きい。ツキに見放されかけていた男に、ようやく追い風が吹き始めた前兆なのかもしれない。

黒井零

1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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