【日本ダービー(G1)展望】「上積みしかない」無敗ソールオリエンスが断然主役!ファントムシーフに「テン乗り」武豊は史上最多7度目V狙う
28日、東京競馬場では競馬の祭典・日本ダービー(G1)が開催される。混戦模様だった皐月賞(G1)から一転、牡馬クラシック第2弾は“1強”で迎えることになりそうだ。
今年の牡馬クラシック戦線は、2歳王者の2頭が皐月賞に進まなかったこともあって混沌としていた。トライアルを終えた時点でも確たる主役候補は現れず、皐月賞は単勝10倍未満に6頭がひしめいた。
そんな主役不在のムードを僅か2分間で打ち砕いたのが、ソールオリエンス(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だった。
昨年11月の2歳新馬を辛うじてクビ差で勝ち上がったソールオリエンス。今年1月の京成杯(G3)では抜群の切れ味を発揮し、2馬身半差の完勝を収めた。しかし、4角で外に大きく膨れるところを見せ、皐月賞では最内枠を不安視する声も聞かれた。
そんな杞憂を吹き飛ばしたのは、他でもないソールオリエンス自身の末脚だった。
序盤はじっくりと後方を追走。勝負所で大外を通って押し上げていったが、4角で京成杯と同様に逆手前で入ってしまい、またも外に膨れてしまった。しかも位置取りは後方2番手という厳しいポジション。ぬかるんだ重馬場で絶体絶命と思われたが、中山の短い直線をあっという間に突き抜け、16頭を交わし去った。上がり3ハロンは次点に0秒9差。まさに異次元と呼べる末脚を見せつけた。
レース後、管理する手塚師は「今後に向けては上積みしかありません。コースが東京に替わっても、それはプラスだと思います」と話しており、広い東京へのコース替わりと距離延長は歓迎。今回は抜けた1番人気に推されるのは間違いない。
20年のコントレイル以来、史上8頭目の無敗二冠馬誕生は果たしてあるのか。
打倒ソールオリエンスに燃えるライバル候補の筆頭は、皐月賞で2着に入ったタスティエーラ(牡3歳、美浦・堀宣行厩舎)だ。
昨年11月に東京の2歳新馬で初陣を飾ると、2戦目で出世レースの共同通信杯(G3)に挑戦。しかし、2番人気に支持されるもよもやの4着に敗れた。
その後は松山弘平騎手との新コンビで弥生賞ディープインパクト記念(G2)へ向かった。3番人気とやや評価を落とした一戦は、同騎手が「自分から動いて勝ちにいく競馬をしました」と話したように、早めに仕掛ける横綱相撲で完勝。共同通信杯からの巻き返しに見事成功し、最高の形で本番への優先出走権をつかんだ。
そして迎えたクラシック第1弾は5番人気とあくまでも上位の一角。それでもいつも通りの先行策を取ると、差し馬有利なトラックバイアスの中、4角4番手から2着に健闘した。
最後はソールオリエンスに交わされたが、3着馬には1.3/4馬身差をつけたのは力がある証拠。父が2200m以上の距離で活躍したサトノクラウンなら、2400mへの距離延長もプラスだろう。
ローテーションは共同通信杯から3か月半の期間で4戦目とややタイトにはなるが、これをはねのけられれば逆転も見えてくる。
皐月賞で3着に敗れたファントムシーフ(牡3歳、栗東・西村真幸厩舎)も形勢逆転を狙う。
前走はそれまでの安定した先行力が評価された部分もあって、最終的に1番人気に支持された。実際にスタートで遅れたホープフルS(G1)を除けば好位2~3番手からの先行策を取っていたが、C.ルメール騎手の好判断で中団に控える競馬を見せた。
勝負所でポジションを押し上げていき、4角では先行集団を射程に入れて直線を向いたファントムシーフ。直線半ばで進路取りにやや手間取るシーンもあったが、馬場の真ん中をしぶとく伸びて何とか3着争いを制した。
結果的に外が伸びる馬場の恩恵を受けた面もあったが、先行したタスティエーラに離された3着はやや不満が残る内容だったといってもいいだろう。
また、今回は更なる試練も待ち受けている。鞍上がルメール騎手からダービー通算6勝を誇る武豊騎手へと乗り替わる。レジェンドへの手替わりはダービーの大舞台ではプラスにも思えるが、武騎手は乗り替わりによるダービー制覇は一度もなく、「0-0-1-8」と低調。特にテン乗りのときは「0-0-0-6」とサッパリだ。果たして、自身初のテン乗りでのダービー制覇はなるか。
皐月賞の上位3頭を追いかけるのは前哨戦を経由した3頭だ。
青葉賞(G2)を制したスキルヴィング(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)は、ルメール騎手がファントムシーフを断って選んだ馬である。
昨年10月のデビュー戦は2着に敗れたが、その後は3連勝中で、内容もレースごとに良化している。特に近2走は本番と同じ東京2400mで勝利を収めているのは何とも心強い。
「木村調教師×ルメール騎手×キタサンブラック産駒」といえば、昨年のJRA年度代表馬イクイノックスと全く同じ。昨年は2着に敗れた舞台だけに期するところはあるだろう。これまで1頭もいない青葉賞組によるダービー制覇へ、今年はスキルヴィングに大きなチャンスがある。
その青葉賞で半馬身差の2着だったのがハーツコンチェルト(牡3歳、美浦・武井亮厩舎)だ。
昨年9月に中京の2歳新馬を8馬身差で圧勝し、一躍クラシック候補に躍り出たハーツクライ産駒だが、その後は4連敗中。2走前の若葉S(L)では見せ場なく4着に沈み、大きく評価を下げていた。
しかし、前走でスキルヴィングと接戦を演じたことで、改めて力のあるところを証明。19年前に父が2着に敗れた舞台でその借りを返したい。
同じくダービー2着馬を父に持つのがサトノグランツ(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)だ。こちらは7年前にマカヒキとハナ差の名勝負を演じたサトノダイヤモンドの初年度産駒である。
初勝利に3戦を要したが、そこから3連勝で京都新聞杯(G2)を制覇した。その前走は1000m通過が63秒8の超スローとなった流れを4角5番手から抜け出し、瞬発力を発揮した。鞍上は前走に続き川田将雅騎手が務める。奇しくもサトノダイヤモンドを破ったダービーでマカヒキに跨っていた騎手でもある。それ以来となるダービー勝利はなるか。
昨年のホープフルSを14番人気で制覇したドゥラエレーデ(牡3歳、栗東・池添学厩舎)は皐月賞に向かわず、今年初戦はダート1900mのUAEダービー(G2)で2着に好走。前例のないローテーションで向かう大一番を坂井瑠星騎手との初コンビで迎える。
この他には、皐月賞で人気を大きく上回る好走を見せた4着メタルスピード(牡3歳、美浦・斎藤誠厩舎)と同5着ショウナンバシット(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)、きさらぎ賞(G3)勝ち馬のフリームファクシ(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)、3番人気に支持された皐月賞は好位追走も展開が向かず10着に敗れたベラジオオペラ(牡3歳、栗東・上村洋行厩舎)など、脇役陣も秘めた実力は確かだ。
皐月賞でソールオリエンス1強ムードに一変した風向きはいったいどうなるのか。国内外のホースマンも注目する第90回日本ダービーは28日、15時40分に発走を迎える。