「皆様のおかげで」リバティアイランド圧勝の裏に光った川田将雅の政治力。記者が「記憶にないほど静か」と驚く4万人が味方についた理由

リバティアイランド 撮影:Ruriko.I

 21日、東京競馬場で行われた牝馬クラシック第2戦・オークス(G1)は、1番人気のリバティアイランド(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)が勝利。2着ハーパーに6馬身差をつける圧勝劇で、牝馬三冠に王手をかけた。

 同世代のライバルには十分な実力差を突きつける、まさに独壇場だった。

 18頭立て、芝2400mのレース。前走の桜花賞(G1)は発馬で後手を踏んだリバティアイランドだったが、この日はすんなりとスタートを決めて中団から。同世代の力関係を鑑みれば、もしかしたらこの時点ですでに「勝負あり」だったのかもしれない。

 道中やや行きたがる面を見せたが、危ない場面を強いて挙げればここだけ。外に持ち出されて最後の直線を迎えると、馬なりのまま先頭集団を射程圏へ。残り200m手前で、川田将雅騎手が満を持す形でステッキを入れると、あっという間に後続を突き放した。

「強すぎましたね。最後は2着ハーパーから6着ヒップホップソウルまでが0.3秒差という接戦でしたが、リバティアイランドはその上位集団を1秒置き去りにしているのですから、別次元としか言いようがありません。これまでのオークスの最大着差は、後の三冠馬ジェンティルドンナの5馬身差でしたが、それすら塗り替えました。

まだ牝馬三冠は秋の秋華賞(G1)が残っていますが、他馬が逆転するシーンはちょっと想像できません。それくらい今日のリバティアイランドは完璧でしたし、完璧な勝利だったと思います」(競馬記者)

「ゲートが切られるまでは声援を我慢していただいて、ゲートが開いてから、全力で盛り上がってもらえればと願っています――」

 週中、オークス直前の共同会見の席で、川田騎手から異例のお願いがあった。「以前であれば、ゲートが開くまで(声援を)我慢していただいていたところ」と過去の事例を持ち出していたが、このタイミングでの発言は、桜花賞のスタートで後手を踏んだ結果2着コナコーストに3/4馬身差まで詰め寄られた大本命馬を気遣ってと受け取られても仕方ないだろう。

 そんな背景があってか、トップジョッキーの「異例の発言」は各メディアでも大きく取り上げられた。

 ネット上でも「マナーは守らないと」「リバティアイランドに気を使ってるんだね」「本来ならJRAが言うべきこと」と言った賛成の声が大多数を占める中、一部の競馬ファンからは「客に指示すんな」「それは1騎手がお願いするものじゃない」「(耳を塞ぐ効果のある)メンコ付ければ良いだけ」と言った声もあった。

 果たして、レース当日はどうだったのか。現場の記者が話してくれた。

リバティアイランド 撮影:Ruriko.I

「ネット上では賛否両論といった様子でしたけど、実際のスタート直前はちょっと記憶にないほど静かでしたね。この日の東京競馬場には4万人を超えるファンが詰めかけたそうですが、後になって思わず『みんな、(静かに)できるやん!』と独り言ちたくらいです(笑)。

昨年のサッカーW杯や、今年のWBCなどを通じても日本人観客のマナーの良さは度々取り上げられていますが、おかげさまで今年のオークスは大きな出遅れはなし。リバティアイランドの大きな勝因の1つになったことは確かですが、他の馬たちにとってもよかったのではないでしょうか。このまま定着してくれればいいですね」(同)

 記者曰く「ここまで静かになるとは思っていなかった」とのこと。オークスが行われる東京・芝2400mは正面スタンド前の発走となるため、その効果は一際大きかったようだ。

「本人もレース後に『何より(東京への)輸送があり、桜花賞を使ったこともあり、テンションが上がっていた』とリバティアイランドの課題を挙げていましたが、事前に呼びかけて、観衆を味方につけた川田騎手の“政治力”の勝利ですね。

昨年、騎手大賞を受賞した川田騎手は今やJRAを代表するジョッキー。主張は正当なものでしたし、今の彼が発言するからこそ大きな意味を持ったと思います。

それに加えて、リバティアイランドは単勝1.4倍の大本命馬。逆に言えば、あの場(オークスが行われた東京競馬場)には、リバティアイランド絡みの馬券を買っていた人が大勢いたということです。そういった意味では、観衆と川田騎手の利害が一致したと言えるかもしれません」(別の記者)

「(オークス前の共同)会見で、発走の時に2秒ちょっと(声援の我慢)のお願いをして、皆様のおかげで安全なスタートを切ることができました。この馬が勝つことを楽しみにしている方が多かったと思いますので、それを見せられてよかったと思います」

 レース後、改めてそう感謝を伝えた川田騎手。「この馬に関わるすべての人々が力を尽くして、二冠馬になってくれた」と語った通り、最高の馬に最高のパフォーマンスを発揮させた今年のオークスの背景には、関係者の様々な努力があったに違いない。

GJ 編集部

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