今村聖奈、永島まなみらの「戦線離脱」でローカル開催に異変…存在感発揮した若手と名伯楽に見込まれた「元有望株」の評価が赤丸急上昇
21日に全8日間の日程を終了した春の新潟開催。ジョッキー部門は8勝を挙げた菱田裕二騎手、トレーナー部門は5勝を挙げた斎藤誠調教師がリーディングを獲得した。
自身初となる新潟リーディングに輝いた菱田騎手は「たくさんの有力馬に騎乗させていただきありがたく思います。2着も多く、勝つことができたレースは他にもあったと思うので、もっと精進したいと思います」と振り返りつつ、「ローカル開催で騎乗していますが、主場開催でも活躍できるように、これからも頑張りたいと思います」と、さらなるステップアップに意欲を見せた。
喜びと決意を表明した菱田騎手とは対極の結果となってしまったのは、7勝で2位に終わった佐々木大輔騎手だ。4月29日から毎週のように勝ち星を積み重ね、リーディングの座をほぼ手中に収めかけたが、最終週にまさかの未勝利。猛チャージを見せた菱田騎手の逆転を許してしまった。
その一方で、春の新潟で異変が起きていたことにも触れなければならない。
というのも、当初は新潟開催のリーディング候補として今村聖奈、永島まなみといった女性騎手に有力馬が集まると見られていたからである。ところが彼女らは6人が騎乗停止となった例の一件で戦列を離脱したため、一気に混沌とした状況となってしまった。ライバルが手薄になった追い風もあって、デビュー2年目の同期でもある佐々木騎手が存在感を見せた訳だが、経験で上回る菱田騎手が壁として立ちはだかった格好だ。
ただリーディング争いに敗れたとはいえ、佐々木騎手に対する関係者の信頼が上がったことも確か。小倉などで着実に結果を積み重ねたことも躍進のきっかけとなったはず。同期が謹慎している間に少しでも差を詰めておきたいところだ。
「昨年までのローカルは、吉田隼人騎手や西村淳也騎手が常連でしたが、実績を積んだ彼らは中央場所に主戦場を移すようになりました。プチブレイクした佐々木騎手にも勿論、注目をしていましたが、最終週はすっかり元気がなくなっていました。土曜は1番人気を連続で馬券圏外に敗れた頃は、まだ親しい記者と笑顔で話している様子でしたが、日曜の後半には完全に落ち込んでいました」(競馬記者)
リーディングが視野に入ったこともあり、この件で週中から取材を受けるなど、いつもと違う心境になったことも推察される。その結果、勝ち急いで強引に行ったり、出遅れるシーンも見られたが、関係者からの評判は上々だ。
「同期の今村騎手や角田大河騎手らに比べると少々地味ですが、佐々木騎手は凄く真面目な性格です。レースにも研究熱心で、競馬が第一といった生活を送っていることも、高く評価されています。
同世代と比較にならない大金を手にして、悪い遊びを覚える若手騎手もいる中で、羽目を外す事なく競馬と真摯に向き合っています。減量のない特別戦でも活躍していたように騎乗技術の裏付けもありますから、これなら将来的に減量特典が少なくなっても大丈夫でしょう。今回の悔しさを糧に再び頑張れば、また秋にはリーディングのチャンスが回ってくると思います」(同)
これに対し、最終日に大逆転を成功させた菱田騎手は、東京開催にも騎乗したこともあって、新潟はわずか6日間の騎乗。しかも最初の2週は未勝利だったのだから、そこから実質3日でリーディングを獲得したことになる。佐々木騎手も健闘したとはいえ、経験値や引き出しの多さで上回った。
昨年2月にダイヤモンドS(G3)をテーオーロイヤルで制してからは、重賞勝利から遠ざかっているものの、人気薄のアイコンテーラーと中日新聞杯(G3)や愛知杯(G3)で穴を出し、10番人気のバジオウで小倉大賞典(G3)に3着に入るなど、腕達者ぶりは健在である。
年齢的にはもう30歳で中堅騎手となるが、若手の頃はブエナビスタなどを手掛けた松田博資調教師からその才能を高く評価されていた騎手だ。今回の新潟のようにチャンスを生かして信頼を勝ち取れば、再び大舞台で騎乗する機会も増えてくるのではないか。
近年は年間30勝前後で未だG1勝利はないが、今年は自身最多の64勝に迫る勢いで好調ぶりも目立っている。新潟リーディングで明暗を分けた2人だが、関係者からの評価は赤丸急上昇中。今後の活躍に注目しておきたい。