C.ルメール騎手レイデオロと共に「悲願」のダービー制覇へ……フランスから日本に来た名手のあまりにも数奇な運命が結ぶ「8年越し」のドラマ
どちらに騎乗しようとも、選ばなかった方が「最大のライバル」になるであろうことは、両頭の手綱を通じて、ルメール騎手自身が最も深く感じ取っていたはずだ。
当然ながらルメール騎手の中にも様々な葛藤があっただろうが、競馬界全体がその選択に注目する中、最終的に選んだのはサトノダイヤモンドだった。
決め手となったのは、やはり日本ダービーに対する思いだった。
まだ、皐月賞を戦う前であったにもかかわらず、ルメール騎手はサトノダイヤモンド選択した理由として「(東京の)距離2400mへの対応力を考えると、マカヒキよりもサトノダイヤモンドのほうが上」と言い切ったのだ。
同じ3歳牡馬クラシックの皐月賞を無視してとまで述べるつもりはないが、早くから「目標は日本ダービー」と皐月賞を100%で挑むつもりがなかったサトノダイヤモンドを選んだということは、やはりそれだけ日本ダービーに対する強い思い入れがあったからに他ならない。
だが、ルメール騎手の思いは日本ダービーの最後の最後、土壇場で、その手をスルリと抜けていった。
その後、ルメール騎手は菊花賞(G1)や有馬記念(G1)などの勝利で、サトノダイヤモンドを選択したことが間違いではなかったことを証明した。だが、それでもやはり「ダービーの借り」はダービーでしか返せないのかもしれない。
そのことは当然ルメール騎手も意識しているだろうし、8年前にフランスでクロード・ルジェ調教師と共に成し遂げた運命的な歴史的快挙も忘れているはずがない。
言葉を選ばなければ、皐月賞を”叩き台”にしてでも日本ダービーを獲りに行くレイデオロのやり方は、昨年のサトノダイヤモンドと同じだ。今度こそ悲願達成に手が届くか。
ルメール騎手にとって、昨年の「8cmの差」を埋める戦いが始まる。