D.レーン、1年間短期免許アウトも「来年の秋OK」に違和感…2011年C.スミヨン&D.ホワイトとは異なる運用に見られた「重大な欠点」とは

D.レーン騎手 撮影:Ruriko.I

 この春、タスティエーラとのコンビで日本ダービー(G1)を初制覇するなど、“旋風”を巻き起こした豪州のD.レーン騎手だったが、今回の短期免許期間終了日の6月13日から1年間は再交付が認められないことが明らかになった。メディアの取材にJRAが回答する形で公開されている。

 本件については当サイトの既報通りだが、本来、騎手の制裁点については「本会の内規に関すること」(JRA)であり、JRAの公式ホームページなどでも公開されていない。ただ、今回はレーン騎手が「所定の点数(30点)を超過した(=1年間、JRAの短期免許の交付が認められない)」ということで、特別に回答があったようだ。

 2019年のJRA初参戦から、短期免許で来日するたびに強烈なインパクトを残してきたレーン騎手。この春も日本ダービー制覇だけでなく、わずか2カ月間で35勝はリーディングトップの川田将雅騎手やC.ルメール騎手らを凌駕するハイペースだった。

 それだけに馬券を通じて“お世話になった”人も少なくないはずで、これから1年間、この豪州の名手の手綱さばきが見られないことは日本の競馬ファンにとっても残念だ。

 しかし、その一方で今回の決定に「違和感」を覚えたのは筆者だけだろうか。

1年間短期免許アウトも「来年の秋OK」に違和感…

 先述した通り、レーン騎手は制裁点が所定の30点を超過したため、今回の短期免許期間終了日の翌日2023年6月14日~2024年6月13日まで、JRAの短期免許の交付が認められないこととなった。

 この決定により、レーン騎手は今年予定していた残り1か月間の短期免許が交付されないことになる。これ自体は「制裁」として機能しているが、逆に言えば2024年6月14日以降は“乗れる”のだ。

 つまり、レーン騎手は来年6月14日以降の2か月間であれば、(JRAが定める短期免許の交付条件を満たしていれば)これまでのようにJRAで騎乗可能ということである。本来最大3か月間の交付が認められている中で2か月間に制限されるのは、今回の制裁点が所定の15点を上回ってしまったためだ。

 ただ、仮に本件が「すでに3か月間の短期免許期間を満了していたケース」なら、どうだろうか。

 2023年6月14日~2024年6月13日まで、JRAの短期免許の交付が認められないことは今回のケースと変わらないが、すでに3か月満了していれば2023年はどの道、騎乗できない。そして2024年の2024年6月14日以降の2か月間であれば騎乗できるわけだ。

 だが、もしこの騎手が元々「2023年は春、2024年は秋」という短期免許のプランを持っていた場合、「実質ノーダメージ」と言えなくはないだろうか。

 無論、本来3か月間認められるところを2か月間しか騎乗できないことはダメージと言えるだろう。しかし、これは制裁点が規定の15点を上回った場合の制裁である。

 つまり、30点を上回った際の「1年間、短期免許の交付が認められない」とは無関係であり、こちらの制裁が機能しているとは言い難い状況になってしまう(先に断っておくが、これは仮定の話であってレーン騎手は関係ない。彼はルールに従って制裁を受けた正当な立場にある)。

 その上で、今回異例の形でJRAから公開された「短期免許期間終了日から1年間」短期免許の交付が認められないという規則を知らなかったファンは、少なくないのではないだろうか。

撮影:Ruriko.I

 というのも、この制度は2011年から運用されたものであり、これまでに4件しか適用例がないレアケースだからだ。

 しかも、その内2件となるC.スミヨン騎手とD.ホワイト騎手は、この制度の運用が開始された2011年の前年に対象となっていた関係で「騎乗した翌年1年間=2011年すべて」という今回のレーン騎手とは異なる形だった。

 その後は、昨年のC.デムーロ騎手まで間隔が空いたわけだが、JRAの「本会の内規に関すること」という言葉通り、これといった情報公開もなく、ニュースにもならなかった。そのため本制度はファンだけでなく、多くのメディアにとってもブラックボックスのようなものだったのである。

 果たして、この1年間の短期免許失効は、今後も今回のレーン騎手のように「短期免許期間終了日から1年間」として運用されているのだろうか。それとも今回のケースが特別で、従来はスミヨン騎手とホワイト騎手のように「騎乗した翌年1年間」が適用されているのだろうか。

 もしくは本年の短期免許の期間が残っている場合は前者、残っていない場合は後者として臨機応変に運用されているのか……。内規に関することであり、レアケースであることは確かだが、公式ホームページなどを通じてルールの詳細を公開してほしいと感じているのは筆者だけではないだろう。

GJ 編集部

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