“首位陥落”川田将雅よりも心配な“ソダシ元主戦”の今…「華の20期」上半期の明と暗
宝塚記念(G1)が終わり、今週末から7月に突入。中央競馬は函館・福島・中京の3場開催となり、本格的な夏競馬が幕を開ける。
ちょうど1年の半分を消化したこのタイミングで各騎手の成績を見てみると、全国リーディングの首位にはC.ルメール騎手が君臨している。
昨年は最多勝利騎手の座を川田将雅騎手に明け渡したが、奪還を狙う今年はすでに77勝をマーク。年間の勝利数が109勝だった前年の7割以上の白星を手にしている計算となる。
実は今年の騎手リーディング争いも川田騎手が年始から快調に飛ばしていたのだが、この6月に来て勢いに陰りが見え始めた。6月は月間7勝に留まり、その間にルメール騎手が月間16勝で猛追。先週は宝塚記念を含む6勝の固め打ちを見せ、一気に川田騎手から首位の座を奪った。
川田騎手は『netkeiba.com』で連載中のコラム『VOICE』の中でも「一番じゃない自分を自分が認め切れない。誰かが僕の上にいることを僕が許せない」と語っていただけに、この6月の苦戦に加え、“2位”という立場で7月を迎えることには不本意だろう。再び闘志を燃やし、夏競馬での逆襲に期待がかかる。
そんな中、リーディング上位以外の騎手の数字を見て行くと、川田騎手以外にも気になる騎手が浮かび上がってくる。特に苦戦を強いられているのが、川田騎手とは「JRA競馬学校20期生」の同期にあたる吉田隼人騎手だ。
昨年は年間83勝を挙げて騎手リーディング9位に入る活躍を見せただけでなく、大阪杯(G1)とヴィクトリアマイル(G1)を制して自身初の年間G1複数回勝利も達成した同騎手だが、今年は現在のところ22勝止まり。リーディング25位に低迷している。
なかなか成績がついてこない苦しさもあってか、6月4日の競馬開催終了後に「調整ルーム居室の備品を損壊」していたことが発覚。2日間の騎乗停止処分を受けたため、上半期を締めくくるはずの6月24日・25日の競馬に参加することができなかった。
思い返してみると、昨年は春にG1で2勝を挙げただけでなく、フェブラリーS(G1)やマイルチャンピオンシップ(G1)でもソダシとともに3着に入り、菊花賞(G1)ではボルドグフーシュとのコンビで勝ち馬とわずかハナ差の2着と善戦。暮れの阪神ジュベナイルF(G1)でもドゥアイズを3着に導くなど、年間を通して大舞台での存在感が光っていた。
それが今年は相棒・ソダシとの“別れ”もあり、G1での最高成績はドゥアイズと挑んだ桜花賞(G1)の5着。連覇を目指したヴィクトリアマイルはアンドヴァラナウトとのコンビで臨み、D.レーン騎手に乗り替わって2着に入ったソダシから0秒8差の11着に終わる。
さらに続く安田記念(G1)では、レーン騎手がセリフォスに騎乗するためソダシは吉田隼騎手の元に戻ると思いきや、ソダシの鞍上を任されたのは同期の川田騎手。自身はレースに参加することすら叶わなかった。「備品損壊」は、その安田記念デーの阪神競馬場で起こった出来事である。
節目のデビュー20年目に味わったキャリア最大級の屈辱……。苦しみぬいた歩みに自らの過ちも重なり、残念な形で上半期の戦いを終えることとなってしまっただけに、反省を経て臨む下半期はリベンジが待たれるところだ。
「華の20期」上半期の明と暗
ちなみに、同じ「華の20期生」では津村明秀騎手が昨年の38勝に対して今年はすでに26勝をマーク。キャリアハイ52勝の更新にも期待がかかり、藤岡佑介騎手も昨年47勝に対して今年は27勝。特にこの6月は6日間の函館開催で9勝を稼ぐなど、本格的な夏の到来を前に躍進が目立っている。
加えて、上半期はやや苦戦が目立っていた丹内祐次騎手も北海道開催で上昇の気配を見せ、先週は函館で3勝の固め打ち。この後には昨年16勝を荒稼ぎした札幌開催も控えているだけに、地元・北海道での快進撃を予感させる。
各所で“兆し”を見せている同期たちを尻目に、「華の20期生」のなかで川田騎手に次ぐ通算1153勝を誇る吉田隼騎手が沈んだままで戦いを終えていくわけにはいかない。
騎乗停止からの復帰となる今週は函館で計10鞍に騎乗を予定。まずは浮上のキッカケとなる勝利を掴み取ることができるか、ベテランの意地に期待したい。