今春の最大目標でブービー大惨敗、そのわずか5日後に「転厩」…タイトルホルダー、ジャスティンパレスらに先着した古豪が復活へ再始動
イクイノックスが完勝した昨年暮れの有馬記念(G1)。2着に6番人気ボルドグフーシュ、3着に3番人気ジェラルディーナが入り、まずまず順当に収まったが、4着に13番人気のイズジョーノキセキ(牝6歳、栗東・中村直也厩舎)が突っ込んだことに驚いたファンも多かったのではないだろうか。
同馬は前走のエリザベス女王杯(G1)で二桁着順に敗れていたため、当日は単勝万馬券の超人気薄。ここまで芝2000mの距離までしか連対経験がなかった上、一部ではこのレースを最後に繁殖入りの可能性もあると報じられていた5歳牝馬だっただけに、評価が高くなかったことも頷けるかもしれない。
しかし、レースでは2番枠を活かして巧みにインを立ち回ると、最後の直線でもロスなく外へ出して差を詰めるなど、主戦・岩田康誠騎手の真骨頂ともいえる神騎乗が炸裂。G1・3勝馬のタイトルホルダーや後に天皇賞・春(G1)を勝つジャスティンパレス、そして前年の年度代表馬エフフォーリアに先着を果たしたのだから、十分すぎるほど立派な内容だった。
この結果に手応えを感じたのか、陣営は2023年もイズジョーノキセキの現役続行を表明。当時管理していた石坂公一調教師は『スポーツ報知』に「感動しました。オーナーの意向もあり、現役を続行します。馬体が充実して今が勢いがあるので、今年も楽しみにしています」と、今年に懸ける意気込みを語っていた。
「競走生活を延長したイズジョーノキセキは、今年2月に開催されたサウジアラビアのネオムターフC(G3)に選出されていたのですが辞退。今春の最大目標にヴィクトリアマイル(G1)を置くと、復帰初戦にドバイターフ(G1)や大阪杯(G1)も候補に挙がりましたが、本番と同距離である阪神牝馬S(G2)からの始動を決めました」(競馬誌ライター)
今年初戦の阪神牝馬Sは、前走の有馬記念から900mもの距離短縮が若干不安視されていたものの、陣営は「広いコースなので競馬はしやすいと思う」「流れひとつでしょう」と話すなど、それなりの自信を持って送り出した。有馬記念4着馬が始動戦でどのような走りを見せてくれるのか、楽しみにしていたファンも多かったに違いない。
今春の最大目標でブービー大惨敗、そのわずか5日後に「転厩」…
だが、約2年1ヶ月ぶりでもあったマイル戦への対応が難しかったか、イズジョーノキセキは直線で伸びを欠いて12頭立ての10着に惨敗。続く大目標のヴィクトリアマイルでも巻き返しは叶わず、ここでは16頭立てのブービー15着という大惨敗を喫してしまった。
するとヴィクトリアマイルからわずか5日後、驚きの事態が報じられる。これまで管理してきた石坂厩舎から、開業2年目の中村厩舎に転厩したというのだ。
移籍するに至った経緯は明らかにされていないが、重賞を勝っている6歳牝馬の転厩はあまり類を見ないケースである。それもあってか、ネットの掲示板やSNSなどにも「何があったんだろう」「現役続行が決まった時は石坂先生も気合い入ってたのに」「ここ2戦とも二桁着順に惨敗したのも理由の1つかな」などといった原因を探るコメントが寄せられていた。
「ヴィクトリアマイルが終わってすぐの報道だっただけに、これには私も驚きましたね。なおイズジョーノキセキと同じ泉一郎オーナー所有馬で、2連勝中だったアドヴァイスも、同時期に石坂厩舎から中村厩舎へ転厩となっています」(同)
そんなキャリア晩年にして環境の変化を迫られることとなったイズジョーノキセキが、今週30日に札幌競馬場で開催されるクイーンS(G3)でヴィクトリアマイル以来となる復帰戦を迎える。
過去2戦では精彩を欠いてしまったが、今回は昨年の府中牝馬S(G2)でソダシを破るなど実績のある芝1800mとなるだけに、好戦が十分期待できるだろう。昨年の有馬記念で強豪たちに先着した力強い走りを、再び見せることができるだろうか。