7年目若武者「消極的騎乗」でブービー大惨敗…「第二の師匠」とタイトル初奪取のチャンスも無念の一戦に
6日に行われたダート重賞・エルムS(G3)は、武豊騎手のセキフウが優勝。最後方から徐々にポジションを押し上げてレースを進め、最後の直線で末脚が爆発。管理する武幸四郎調教師との兄弟タッグで重賞Vを決めた。
武豊騎手はレース後「前が速くなりそうだったので、マイペースで行こうと思ってた」「いい脚を使ってくれました」と、してやったりのコメント。この日、3勝の固め打ちとなったレジェンドの手綱が実に冴えわたった格好である。
セキフウは今後、昨年3着に敗れたコリアC(韓G3)への再戦も視野に入れているようだ。同レースは来月10日、ソウル競馬場で開催される。隣国の首都でも、武兄弟の重賞制覇が見られるかもしれない。
一方で、富田暁騎手が騎乗した1番人気ペプチドナイル(牡5歳、栗東・武英智厩舎)は直線で早々に失速。14頭立てのブービー13着に終わっている。
前哨戦のマリーンS(OP)を、3馬身半差で逃げ切っていた同馬。北海道のダート1700mで連勝中だっただけに、高い評価を受けることとなったのも頷ける。ここ2戦と同様に先手を奪い、堂々と押し切る競馬をファンは期待していたことだろう。
だが、人馬は1コーナーでタイセイサムソンにハナを譲ると、好位のインに控える競馬を選択。終始砂を被る展開になったことが堪えたのか、4コーナー手前で早くも追っ付け通しとなる。直線に入るとすでに手応えが残っていなかったようで、ズルズルと後退していってしまった。
自分の形に持ち込めず大惨敗を喫してしまっただけに、富田騎手はレース後「無理をさせてでも、強気にハナに行くべきだった。1番人気に支持して貰って申し訳ない。馬の状態が良かっただけに悔しい」と、無念の言葉を並べ立てていた。
「第二の師匠」とタイトル初奪取のチャンスも…
だが、同騎手がレース後にこれほどまで悔やんだ理由は、消極的騎乗で人気を裏切ってしまったこと以外にもありそうだ。
「ペプチドナイルを管理する武英調教師が、富田騎手にとっては“第二の師匠”のような存在なんです。ここはタッグで重賞初制覇のチャンスだったのですが、悔しい結果となってしまいました」(競馬誌ライター)
2017年のデビュー以来、栗東の木原一良厩舎に所属している富田騎手だが、同厩舎で調教助手を務めていたのが調教師になる以前の武英師だ。
26歳の若武者・富田騎手は馬乗りの基礎などを、元騎手でもある武英調教師から教わったとのこと。『デイリースポーツ』の取材に対し「ヒデさん(武英調教師)がいなければ今の僕もいないです」とまで語ったほどの存在である。また武英調教師も富田騎手のことを、実の弟子のように接してきたようだ。
今回のエルムSは富田騎手にとって、武英調教師に恩返しをする絶好のチャンスだった。意気込みが相当のものであったことは想像に難くないが、先述の通り後手の競馬でペプチドナイルの持ち味をまったく引き出せず、悔いの残るレースとなってしまった。
残念ながら結果を出せなかった富田騎手だが、ペプチドナイルが控えると力を存分に発揮できないと明確になったことは、収穫の1つだったに違いない。この敗戦を糧に、次は攻めの騎乗で最高の結果を出してくれることを期待したい。