【北九州記念(G3)展望】武豊を驚かせた「超絶ロケットスタートV」モズメイメイVS小倉で「伝説のごぼう抜き」ロンドンプラン!
数年前に国内スプリント路線を盛り上げたモズスーパーフレアを彷彿とさせる牝馬が、20日、小倉競馬場で開催される北九州記念(G3)に登場する。
同じ「モズ」を冠する3歳馬モズメイメイ(牝3歳、栗東・音無秀孝厩舎)のことである。共通点は馬主だけではない。脚質と厩舎に加えて、今回新たに鞍上もかつてモズスーパーフレアの主戦を務めた、あの騎手に乗り替わる。
テンのスピードこそ“先輩”には到底かなわないが、今春のチューリップ賞(G2)と葵S(G3)をどちらも逃げ切ったモズメイメイ。前走は初の1200m戦で激流についていけるかが注目された。
ところがゲートが開くと、他馬より1馬身ほど速いまさにロケットスタート。これであっさりハナ争いが決着すると、前半3ハロン33秒9の平均ペースを作り出し、最後までリードを保った。
鞍上を務めた武豊騎手も稀に見る好発に「タイミングが合いすぎて、速かったですね」と驚きの表情。「前半のアドバンテージが効いた」とも話したように、スタートで勝負が決したといっても過言ではないだろう。
今回は武騎手が札幌記念(G2)に参戦するため、松若風馬騎手に乗り替わる。2020年の高松宮記念(G1)も制した快速牝馬と同じ「モズ×音無厩舎×松若騎手」が主役不在のスプリント界を席巻することになるのか。有無を言わせぬ会心の“逃げ切り勝ち”に期待がかかる。
同じく武騎手がかつて主戦を務めたデュガ(牡4歳、栗東・森秀行厩舎)も有力視される1頭として出走を予定している。
いきなりフェニックス賞(OP)でデビューして話題を呼んだのが、ちょうど2年前の夏の小倉。その一戦で3着に敗れると、2戦目には小倉2歳S(G3)にも挑戦した(結果は4着)。
4戦目の未勝利戦で勝ち上がると、続く2歳1勝クラスも順当に勝ち、短距離界で一躍注目を浴びる存在に。ところが3歳になってからは、オープンクラスで苦戦続き。秋以降も自己条件の2勝クラスで掲示板がやっとという状況だった。
同クラスで頭打ち状態になった同馬が復活の狼煙を上げたのは、2走前の相模湖特別(2勝クラス)。新たに菅原明良騎手を鞍上に迎えた一戦で、1年7か月ぶりの勝利を収めると、続くバーデンバーデンC(3勝クラス)も同コンビで制して、一気にオープン入りを決めている。
菅原明騎手とまさに息の合ったコンビで巻き返しに成功した米国産馬のデュガ。3連勝で重賞初制覇を飾るようならスプリンターズS(G1)の秘密兵器となるかもしれない。
昨年夏の小倉2歳王者が久々の実戦復帰を果たす。それがグレーターロンドン産駒のロンドンプラン(牡3歳、栗東・宮本博厩舎)だ。
同馬は昨夏の小倉・芝1200mでデビュー2連勝を飾ったスピード馬。特に圧巻だったのは2戦目の小倉2歳Sだろう。スタートで大きく出遅れ、道中は終始最後方を走っていたが、小倉の短い直線で12頭をごぼう抜き。度肝を抜く快勝劇だった。
そのレースで繰り出した上がり33秒1の豪脚は次点より1秒1も速かった。松山弘平騎手も「すごい末脚を使ってくれて、馬が非常に強かったと思います」と笑顔を見せ、「距離が延びても大丈夫だと思います」とも話していたが、続く1400mの京王杯2歳S(G2)は1番人気を裏切り14着に敗れた。
レース後には右第1趾骨近位骨折が判明。長期休養に入っていたが、7月に馬場入りを再開し、数日後には坂路で時計を出し始め、ここまで順調に追い切りを消化している。
2週前には栗東CWで6ハロン81秒7の好時計をマーク。9か月半ぶりのレースとなるが、2戦2勝の得意舞台なら勝ち負けは十分可能だろう。
ソダシの全妹ママコチャ(牝4歳、栗東・池江泰寿厩舎)はこれが初のスプリント戦。前走の安土城S(L)は久々の7ハロン戦だったが、好位から抜け出して、最後は3馬身差をつけ、オープンクラス初勝利を挙げた。
今回はさらに距離を1ハロン短縮。これまで前半3ハロンのレースラップが34秒台の緩いペースしか経験していないが、32秒台も珍しくない激流必至の展開に果たしてついていけるかがカギとなる。
8歳のトゥラヴェスーラ(牡8歳、栗東・高橋康之厩舎)は、今年の高松宮記念で3着に食い込んだように自慢の末脚は健在。ここで初の重賞タイトル獲得を狙う。
この他には、7月のCBC賞(G3)で逃げ切ったジャスパークローネ(牡4歳、栗東・森秀行厩舎)、そのレースでジャスパークローネを追い詰めたサンキューユウガ(牡7歳、栗東・西村真幸厩舎)、昨年の当レースを16番人気で制したボンボヤージ(牝6歳、栗東・梅田智之厩舎)など、伏兵陣にも快速馬がそろっている。
モズメイメイがスプリント重賞2連勝で秋の主役候補に名乗りを上げるのか、それとも自己条件を2連勝中のデュガが藤田晋オーナーに重賞2勝目をプレゼントするのか。注目の北九州記念は20日、15時25分に発走予定だ。