アスコリピチェーノ「勝利」とルージュスタニング「敗戦」は必然だった!? 新潟2歳S(G3)「人気馬2頭」で分かれた明暗
27日、新潟競馬場で行われた新潟2歳S(G3)は、1番人気アスコリピチェーノ(牝2歳、美浦・黒岩陽一厩舎)が快勝。デビューから2連勝で見事に重賞タイトルを手にした。
大外12番枠から五分のスタートを決めたアスコリピチェーノは、序盤からしっかりと折り合いをつけ、道中は外目の5番手を追走。抜群の手応えで4角を迎えると、直線は馬場の真ん中を力強く伸び、最後は逃げ粘るショウナンマヌエラをゴール前で図ったように交わした。
「力のある馬なので、人気になるなと思っていましたが、スムーズな良い走りでしたし、結果を出せて良かったです」
レース後のインタビューで安堵の表情を浮かべそう語ったのは、2018年の関屋記念(G3)以来、実に5年ぶりの重賞勝利を決めた北村宏司騎手だ。G1を通算3勝している43歳のベテランも、近年は度重なるケガに苦み、昨年は自己ワーストの9勝に終わっていたが、復活に向けて大きな勝利だったに違いないだろう。
そんな北村宏騎手とアスコリピチェーノに対し、期待を裏切る凡走に終わったのが差のない2番人気に支持されていたルージュスタニング(牝2歳、栗東・友道康夫厩舎)と5年目の若手・菅原明良騎手である。
ルージュスタニング「敗戦」は必然だった!?
ソツのない競馬を見せた勝ち馬に対し、ルージュスタニングはロスが目立った。
まず、スタートでやや後手を踏むと、隣のエンヤラヴフェイスと接触するなど、序盤からリズムに乗ることができなかった。勝負所では、外にいたヴァンヴィーヴから執拗にプレッシャーをかけられると、最後の直線でなかなか前が開かず……。ようやく進路が開き、加速しようとしたところで、再び前が壁となる痛恨の不利。最後はブレーキをかけるように9着に沈んだ。
「道中も直線もスムーズではありませんでした。上手くいきませんでした」と敗戦の弁を述べたのは菅原騎手。レースを通して、チグハグな騎乗となってしまったことは否めない。
ともに人気馬に騎乗するも、巧みな手綱さばきで勝利に導いた北村宏騎手と、馬の能力を発揮できなかった菅原騎手。2人の明暗を分けたのは、レースの前の準備段階にもあったのかもしれない。
「アスコリピチェーノはC.ルメール騎手が、ルージュスタニングは坂井瑠星騎手が初戦の手綱を取っていました。ところが2人は、26~27日に札幌で開催されていた『ワールドオールスタージョッキーズ』に参戦していたため、新潟での騎乗はなし。人気馬にもかかわらず、乗り替わりが発生していました。
北村宏騎手と菅原騎手は、どちらもキャリア1戦の2歳牝馬にテン乗りという条件は同じ。しかし、レース前にどれだけ騎乗馬とコンタクトを取れていたかが明暗を分けた気もします」(競馬誌ライター)
北村宏騎手は勝利ジョッキーインタビューで「中間も調教に乗せてもらって、スタッフ・先生と色々話し合っていた」「キャリアの少ない2歳馬のレースなので色々と想定して臨みました」と、レースに向けて、準備万端だったことを明かしている。
その一方で、美浦所属の菅原騎手は関西馬のルージュスタニングに追い切りで跨ることはなく、初コンタクトがレース当日だったこともチグハグ騎乗の一因になったことは否めないだろう。
乗り替わりに対する準備の段階で2頭の勝負は決していたのかもしれない。