「ムチを取り上げた方がええんちゃう」イジられた制裁王が久々の重賞制覇…名伯楽の愛弟子は岡部幸雄や横山典弘にも師事、いぶし銀の中堅に復調の兆し

北村宏司騎手 撮影:Ruriko.I

 先週末の新潟2歳S(G3)は、1番人気に推されたアスコリピチェーノが優勝し、デビューから2連勝で重賞タイトルを手に入れた。

 また、これが初コンビとなった北村宏司騎手にとっても5年ぶりの重賞制覇。デビュー戦で手綱を取ったC.ルメール騎手が、札幌の「2023ワールドオールスタージョッキーズ」に参加していた関係で、今回は代打の意味合いが強かったものの、しっかりと結果を残した。

「落ち着いた淡々とした流れでしたから、前の馬も力が残っていました。それでも、大きなストライドで、この馬の良さを発揮した良い走りをしてくれました」

 レースをそう振り返った北村宏騎手だが、「スムーズな良い走りでしたし、結果を出せて良かったです」「キャリアの少ない2歳馬のレースなので色々と想定して臨みました」と事前のシミュレーションを怠らなかった様子。2着に入ったショウナンマヌエラとは1馬身と差はつかなかったものの、スローペースを味方に粘り込んだ相手を直線半ばで余裕の差し切り勝ち。着差以上に強さを感じられるレース内容だった。

「アスコリピチェーノは操作性が高くて乗りやすい馬でしたが、テン乗りで見事な騎乗だったと思います。大外枠とはいえ12頭立ての12番と大きなロスもなかったです。開催が進んで外が伸びる馬場傾向も、決め手のある馬には好都合。勝つ時というのは全てがうまくいくものですね」(競馬記者)

 解散した藤沢和雄厩舎からデビューした北村宏騎手は、関東の名伯楽から英才教育を施された実力派ジョッキーだ。

いぶし銀の中堅に復調の兆し

 ヴィクトリアマイル(G1)のダンスインザムードや、菊花賞(G1)のキタサンブラックなど、いぶし銀の手腕で活躍を見せていたが、近年は大きな怪我もあり、レースに乗れない期間も長かった。

 かつては年間100勝を超えた年もあったが、半年間休んだ昨年は僅か9勝とデビュー以来最低の数字。どんなに優れた騎手でも、実戦での勘というのは取り戻すまでに時間を要する。ましてや落馬による負傷を経験すると馬込みを捌いたり、インを突くことに躊躇してしまい、一瞬の判断力も鈍ると言われている。

 近年は、若手騎手の台頭もあって存在感が薄くなっているベテランだが、元騎手の岡部幸雄氏や横山典弘騎手から受け継いだ技術は確かなモノがある。関東のトップトレーナーとなった木村哲也調教師も調教や競馬で北村宏騎手を重宝しており、まだまだ活躍を見込めそうだ。

「あえて弱点を挙げるなら、丁寧に乗る割にいざというところで無我夢中になってしまうところでしょうか。皆さんもご存知だと思いますが、今年の制裁点数でトップを独走中です。先週もムチの使用制限による制裁で10万円、斜行で5万円の過怠金を受けています。

北村宏騎手は、ムチの過剰使用の常習犯で裁決委員からもマークされていますね。『勝ち負けの場面だから仕方ない』といった側面があるにせよ、彼は日本騎手クラブの副会長。若手騎手の模範とならなければいけない存在だけに、制裁王では立場がないです」(同)

 これには某ベテラン騎手から「また北村くんは制裁を受けたみたいやな。もうムチを使ったらあかんで。取り上げた方がええんちゃう(笑)」とイジられていたという。ムチに関しては近年の世界基準によるルール変更で対応に苦慮している騎手もいるが、騎手クラブの副会長なら改善する姿を見せていかなければならないだろう。

 その北村宏騎手は、今週末の新潟記念(G3)では3歳馬ノッキングポイントに騎乗を予定。初コンビの日本ダービー(G1)で15番人気の低評価を覆して5着に導いたパートナーである。

 元々腕は確かなだけに、これから始まる秋のG1戦線でも注目しておきたい騎手だ。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

関連記事

JRA最新記事

競馬最新記事

人気記事ランキング 17:30更新

競馬

総合

重賞レース特集
GJ編集部イチオシ記事
SNS