サリエラ「大誤算」の惨敗にC.ルメールもご立腹!? “天栄帰り”ノッキングポイントと明暗…重なってしまった名伯楽の「想定外」とは
3日、新潟競馬場で行われた新潟記念(G3)は、2番人気のノッキングポイント(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)が勝利。今年の日本ダービー(G1)で15番人気5着と、競馬ファンを驚かせた走りがフロックではなかったことを証明してみせた。
「今日は自信を持って臨める条件だと思っていたし、正直に前向きに一生懸命に走ってくれるのがいいところです」
レース後、そう相棒を褒め称えた北村宏司騎手は、5年ぶりの重賞制覇となった先週の新潟2歳S(G3)に続く2週連続制覇。名門・藤沢和雄厩舎の所属騎手として関東でも指折りの存在だったベテランジョッキーが完全に復活した印象だ。
また、デビュー当初からクラシック候補に挙げられていたノッキングポイントだが、単勝1.4倍に推された2戦目のサウジアラビアロイヤルC(G3)で4着に敗れるなど、その期待に応えられなかった。しかし、前走の日本ダービーから北村宏騎手と新コンビを結成して急上昇。課題だった賞金加算にも成功し、楽しみな秋を迎える。
その一方で飛躍を誓う秋に暗雲が立ち込めたのが、1番人気で7着に敗れたサリエラ(牝4歳、美浦・国枝栄厩舎)だ。
スタートの出足がやや鈍く後方からとなったが、デビューから4戦連続で上がり最速を記録したように、いつもならここから破壊力のある末脚を見せるのが本馬の強み。しかし、この日は鞍上のC.ルメール騎手のムチが入ってもなかなか反応せず……。結局、なだれ込むように7着でゴールしている。
姉に有馬記念(G1)2着のサラキア、兄に2歳王者サリオスがいる日本屈指の良血馬で、ここまでは5戦して3勝2着1回3着1回と馬券率100%だったサリエラ。単勝2.5倍の1番人気に推された今回は待望の重賞制覇が期待されたが、本来の走りを見せることができなかった。
今秋の凱旋門賞(仏G1)に登録されるなど、周囲の期待も大きい有望株のまさかの凡走……。一体、何があったのか。記者は「色々と計算が狂った結果かも」と話す。
関東の名伯楽の「想定外」とは…
「当初は今夏の札幌記念(G2)を使って凱旋門賞という青写真が描かれていたサリエラですが、1番人気に推された前走の目黒記念(G2)で3着に敗れたことで、ここ(新潟記念)を目標に。(目黒記念と)同日の日本ダービーで激走したノッキングポイントと共に、ノーザンファーム天栄で調整されていました。
その後、ノッキングポイントは美浦の(木村)厩舎に帰厩しましたが、サリエラはそのまま新潟競馬場へ輸送され、レースまで滞在することに。競馬場での調整は芝とダートしかない点がネックですが、どの道、美浦の坂路が改修工事で使えないこともあって国枝調教師が決断したそうです。
元々、天栄から新潟への直送は国枝厩舎でもよくやっていますし、レース前の輸送がない分アドバンテージもあると思われていたのですが、実は今夏の新潟はフェーン現象の影響で異常な暑さ……。馬房はエアコン完備で問題なさそうでしたが、暑過ぎることもあって直前の追い切りは軽めにせざるを得ませんでした。これには師も想定外というか、頭を抱えている様子でしたね。
また、1週前追い切りには落鉄してしまうアクシデント。あまり表には出ませんでしたが、軽い挫跖(蹄底におきる炎症・内出血)も確認されたそうです。本番の新潟記念では、この辺りの懸念がモロに出てしまったのかもしれません」(競馬記者)
1番人気馬の思わぬ凡走には、“夏のホーム”札幌から遠征してきたルメール騎手も「スタートしてからハミを取らず、進んでいかなかった。ずっとズブかった」と不満げ。挙句には「返し馬から、良い感じではなかった」と馬の状態を管理する陣営批判とも取れるコメントを残している。
勝利騎手インタビューで「元気に夏もトレーニングしてくれて、コンディションはとても良さそうでした」とノッキングポイントの出来の良さを称えた北村宏騎手とは対照的な内容になってしまった。
「直線を向いてだんだんと加速したが、この馬の瞬発力がなかった」
そう語ったルメール騎手の言葉通り、これが本来のサリエラではないはず。すでに凱旋門賞出走の意思はないようだが、陣営も「もっと大きいところへ行く馬」と高い期待をかけているだけに、今回は小さくない躓きになってしまった。