「単勝328.1倍」シンガリ18番人気が崖っぷちで掴んだ初白星! 惨敗続きの超人気薄がまさかの「大変身」を遂げたワケ
3日の新潟4Rに行われた3歳未勝利(芝2200m)。関東圏における3歳世代最後の未勝利戦でもあったこのレースは、18頭立てシンガリ人気のケイツークローン(セン3歳、美浦・清水英克厩舎)が、まさかの逃げ切りで大波乱となった。
同馬は昨年10月のデビューからここまで9戦するも、すべて着外。馬券圏内はおろか、掲示板の5着以内にすら一度も入ったことがなかった。ここ4走も1着から1秒以上離された二桁着順だったことから、今回は単勝328.1倍の最低評価だったことも頷ける。
最内枠からスタートしたケイツークローンは、鞍上の水沼元輝騎手が主張してハナに立つ。前半1000m通過は60秒3。6週間にわたって開催された夏の新潟競馬最終日の馬場コンディションを考えると、なかなかタフなペースだったといえるかもしれない。
実際に4コーナーで早くも手綱が追っつけ通しとなる。直線に入ると外から1番人気のルーシアンが迫ってきたのだが、ケイツークローンは脅威の二枚腰を発揮。結局最後まで交わされることなく、クビ差で押し切ってしまった。
「人気が人気だけに最後はバテるだろうと思って見ていたのですが、まさかそのまま押し切ってしまうとは……。ケイツークローンは今回が初ブリンカーだったのですが、その効果も最後のひと踏ん張りに繋がったのかもしれません。
なお同馬は単勝328.1倍で、今年のJRA単勝最高配当を更新。鞍上の水沼騎手は前日2日が21回目の誕生日だったのですが、自身で祝う格好にもなりましたね」(競馬誌ライター)
殊勲の水沼騎手はレース後「最後はバテるかと思った」と話したが、続けて「障害練習の効果でトモがしっかりして、スタミナもついてきたことで粘り込めました」とケイツークローンの激走要因についてコメント。どうやら中間に障害練習を取り入れたことも、同馬にとって大いにプラスと出たようだ。
平地でやや頭打ちとなった馬が、障害練習や障害レースを経験後、再び平地に戻って好走するケースは時として見られる。普段は使われない筋肉がジャンプレースによって鍛えられることにより、走りのバランスが良くなることが要因の1つだとも言われている。
過去にはメジロパーマーが障害競走を経験後、G1を2勝。テンジンショウグンが1998年の日経賞(G2)で単勝355.7倍の大穴をあけたことなどは、コアなファンにとっては知るところだろう。
また、今年障害レースで11勝を挙げ、障害戦リーディングのトップに立っている小牧加矢太騎手は以前『netkeiba.com』で連載している自身のコラム『加矢太論』で「障害練習が競走馬にもたらす効果」について持論を展開。
詳細についてはコラムをご覧いただきたいが、効果の1つとしてお尻が大きくなり、馬体に幅が出ることを挙げている。後肢に力が付くからか「ゲートの出がよくなった」と言われることが多いようだ。
実際にケイツークローンもここまでのキャリアで一度も逃げたことはなかったのだが、障害練習を経て臨んだこの日はスタートから速い出脚を見せてハナへ。これまでと一変した積極的なレース内容で、見事に初白星をつかみ取っている。
決して恵まれたペースで押し切ったわけでもないことから、上のクラスに行っても面白い存在になるかもしれない。崖っぷちで大変身を遂げたケイツークローンの今後にも期待したいところだ。