国枝栄師「悲願」の牡馬クラシック制覇に暗雲?最強ジョッキー川田将雅とのタッグも不発
現役唯一の1000勝トレーナーである国枝栄調教師。ご存知の通り、アパパネ、アーモンドアイという2頭の三冠牝馬を育てた名伯楽だ。先週末の開催を終えて、調教師リーディング8位(関東3位)と、好調を維持している。
ただ、なぜか牡馬クラシックには縁がなく、師もたびたび「ダービーを獲りたい」と公言しており、こちらについては競馬サークルの七不思議とも囁かれているほどである。調教師の定年は70歳とされているため、その夢をかなえるタイムリミットが刻々と迫っている。68歳の師にとって、厩舎の解散は2026年2月、つまりチャンスはあと2年しかない。
今年、春先には「今年は牡馬の方がいいかな」と、来年の牡馬クラシックに向けて手ごたえを口にしていた国枝師。ただ、牡馬に限れば8月末時点で2頭がデビューして4着、5着と初陣を飾れなかった。
そして迎えた2日の新潟5R(芝2000m)に満を持して登場したのがモスクロッサー。父ハーツクライ、母は米国のG1勝ち馬で兄にもG1馬がいる血統。師も「ハーツクライ産駒らしく筋肉量があり、大物感がある。距離も2000~2400が合いそう」 とコメント。そして何より期待値を上げたのは鞍上に川田将雅騎手を迎えたことだ。川田騎手は言うまでもなく現在、最も頼りにされるジョッキーで、勝利数はもちろん、3割を超える驚異的な勝率を誇る、まさに必殺の優勝請負人。国枝師にしてもどうしてもこの馬で勝ちたいからこそ騎乗を依頼したのだろう。
レースでは当然のごとく1番人気に支持された。ただゲートは普通に出たものの、行き脚がつかずに道中は後方寄りのポジション。3コーナーからペースが上がり、鞍上が促すもなかなか前に追いつけない。そして最後の直線も弾けることなく、1着馬から1秒4離された7着。つまり、ほとんど見せ場もないうちにデビュー戦は終わってしまった。
「悲願」の牡馬クラシック制覇に暗雲?
「国枝厩舎と川田騎手のコンビ、サンデーレーシングの良血馬で単勝オッズは2.5倍だけに、ちょっと残念なレースぶりでしたね。とはいえ、国枝厩舎の新馬戦は余裕残しというケースもあります。血統的にも兄は20年のジャパンダートダービー(G1)を勝ったダノンファラオ。父がハーツクライに替わりましたが、ダート向きの可能性もありそうです」(競馬ライター)
今回のタッグは昨年のダノンザタイガーを思いだした人も多いだろう。本馬はセレクトセールにおいて約3億円で取引された良血馬で、国枝師も川田騎手も「この馬でクラシックを」と大きな期待を寄せていた。しかし2戦目の未勝利戦を勝った後、東京スポーツ杯2歳S(G2)2着、共同通信杯(G3)3着と勝ち切れず、結局、クラシック路線に乗れなかった。その悔しさを晴らすべく、手綱を任されたのがモスクロッサーであったはずだ。
「レースぶりでは2戦目の変わり身も期待薄かもしれません。ただ国枝厩舎は良血馬の宝庫。アパパネの産駒(父ブラックタイド)をはじめ、良血のキタサンブラック産駒などもスタンバイ。これから来年のクラシックを狙える逸材が登場する可能性は大いにあるでしょう」(同)
今年も「牝馬の国枝」は健在で、牝馬路線ではすでに3頭が勝ち上がり、いずれも来春の活躍が期待できる素質馬が揃った。ただ牡馬も既走馬を含め、まだまだ来年のクラシックを諦める時期ではない。国枝師の巻き返しを期待したい。