イクイノックスVSドウデュース、ジャパンC(G1)に独ダービー馬も参戦か。凱旋門賞の前哨戦を完勝も「むしろ興味がある」あえて日本へ舵を切る“思惑”とは
今週、パリロンシャン競馬場で行われたニエル賞(G2)は、世界最強馬決定戦・凱旋門賞(G1)の前哨戦となる3歳限定のレースである。
昨年、ドウデュースが出走しただけでなく、過去にはマカヒキやキズナといった日本のダービー馬がここをステップに凱旋門賞に挑戦。2006年の凱旋門賞でディープインパクトを破ったレイルリンクも、このニエル賞を勝っての挑戦だった。
今年の勝ち馬は、独ダービー馬ファンタスティックムーンだ。パリ大賞(G1)を勝ったフィードザフレイムや仏2000ギニー(G1)の覇者マルハバヤサナフィなど地元のG1馬が集結したハイレベルなレースだったが、終わってみれば2馬身半差の快勝だった。
これで重賞4勝目となったファンタスティックムーン(牡3歳、独・S.シュタインベルク厩舎)。日本から参戦するスルーセブンシーズにとっては、また1頭強敵が現れたかと思いきや、どうやら陣営は凱旋門賞挑戦に慎重な姿勢を見せているようだ。
ジャパンC(G1)に独ダービー馬も参戦か…
「初の海外遠征でニエル賞を勝ったファンタスティックムーンですが、本来は地元ドイツのバーデン大賞(G1)に出走予定でした。しかし、レース当日に馬場が悪化したことで回避。海外では珍しくないことですが、陣営は『この馬は、道悪が巧い馬ではない』と(道悪になることが多い)凱旋門賞の登録さえ行っていないそうです。
仮に凱旋門賞へ出走するにしても追加登録料が発生することもあって、陣営は『むしろ、(米G1の)ブリーダーズCやジャパンC(G1)に興味がある』と、欧州よりも時計が速い高速馬場でのレースに魅力を感じているとか。もしかしたら、11月に日本で独ダービー馬の姿を見られるかもしれません」(競馬記者)
競馬が盛んなイギリスやフランスと比較して一歩後れを取っている感のあるドイツだが、ジャパンCとドイツ馬といえば、真っ先に思い出されるのが1995年の優勝馬ランドだろう。
ファンタスティックムーンと同じ独ダービー馬としてジャパンCに挑んだランドは、現役トップホースだったナリタブライアンやヒシアマゾン、タイキブリザードといった強豪をまとめて蹴散らして戴冠。当時の日本の競馬ファンに改めて世界の強さを見せつけた。
近年は地元日本馬が圧倒的な強さを見せていることもあって、ドイツ馬のジャパンC優勝はランドが最後となっているが、仮にファンタスティックムーンが参戦すればチャンスはあるのだろうか。
「ファンタスティックムーンと同じ独ダービー馬の父Sea The Moonは日本であまり馴染みがありませんが、3代父のCape Crossは2006年のジャパンCで3着だったウィジャボードの父として知られています。
近親にあまり活躍馬がいないこともあってか、ファンタスティックムーンはセリで4万9000ユーロ(約760万円)という安価で購買された馬。今年、南関東三冠を達成したミックファイアがサマーセールにおいて500万円で落札された馬だったことが話題になりましたが、ファンタスティックムーンもそんな常識を覆した名馬の1頭に挙げられると思います。正直、やってみないと分からない部分は大きいですが、出走してくれば盛り上がることは間違いないでしょう」(別の記者)
11月26日に東京競馬場で行われるジャパンCといえば、すでに日本が誇る世界最強馬イクイノックスが出走を予定している。また、天皇賞・秋(G1)から始動するドウデュース、秋華賞(G1)で牝馬三冠が懸かるリバティアイランドなどの強豪も、この頂上決戦を視野に入れているようだ。
果たして、独ダービー馬の日本参戦はあるのだろうか。2019年に「外国馬出走ゼロ」という事態を招き、国際レースとしての存在意義が問われたジャパンCとして“箔”がつく外国馬の参戦は是非とも実現させたいところだが……。