セントライト記念(G2)秋の逆襲に燃える坂井瑠星とドゥラエレーデ!30年ぶりの珍事も経験…打倒ソールオリエンスに2歳王者が挑む
先週から開幕した秋の中山開催。3歳牝馬による秋華賞(G1)のトライアルに続いて、今週末は18日のメインレースとして3歳牡馬による注目の一戦・セントライト記念(G2)が行われる。
昨年はこのレースで2着だったアスクビクターモアが菊花賞(G1)を制し、2年前も13着と大敗を喫したタイトルホルダーが菊花賞で巻き返して優勝。過去にはキタサンブラックもこのレースと菊花賞を連勝するなど、近年は本番での好走馬を多数輩出している重要なステップとして認知されつつある。
何と言っても目玉は皐月賞(G1)で1着、日本ダービー(G1)では勝ち馬とクビ差の2着と、世代屈指の実力を誇示してきたソールオリエンス(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だろう。ここを使って菊花賞に向かうことが公言されており、2つ目のタイトル奪取に向けた始動戦は大きな注目を集める。
打倒ソールオリエンスに2歳王者が挑む
その陰に隠れる格好となるが、実は今回のメンバーの中にはこの世代のG1王者がもう一頭いる。2歳時にホープフルS(G1)を制したドゥラエレーデ(牡3歳、栗東・池添学厩舎)である。
新馬戦と未勝利戦に敗れ、デビュー3戦目でダートの1700mを走って未勝利を脱出したという同馬。続く東京スポーツ杯2歳S(G2)では4着と奮闘を見せたとはいえ、やはり成績を見れば“ダートでの1勝馬”とあって、暮れの大一番は単勝90.6倍の14番人気という低評価で迎えることとなった。
ところが、短期免許で来日中だったB.ムルザバエフ騎手の手綱に導かれて道中2番手で進めると、最後は逃げ粘るトップナイフをハナ差でかわし1着でゴールイン。馬単17万5230円、3連単は246万6010円という大波乱の立役者となった。
さらに驚きを呼んだのが、年が明けて3歳となって以降の歩みだ。芝のG1を制しながら、今年初戦はドバイに遠征してダートのUAEダービー(G2)に挑戦。ここでデルマソトガケの2着と好走を見せるも、次走からは芝に戻って日本ダービーと宝塚記念(G1)の連戦という稀有なローテーションを歩んだ。
それに加えて、G1ホースでありながら競走成績の騎手欄を見ると、毎回騎手が替わっているというのも目につくポイントだ。これといった“主戦”がいないどころか、キャリア8戦すべてが“テン乗り”というのも同馬の異端さを際立たせている。
そんな中、今回は初めて「過去に乗ったことがある騎手」とのコンビで臨む。ドゥラエレーデの秋初戦の鞍上に指名されたのが、坂井瑠星騎手だ。
両者は日本ダービー以来のコンビとなるが、その時はスタート直後に落馬をしてまさかの競走中止という結果に終わっている。ダービーという晴れ舞台でのスタート直後の落馬による競走中止は、1993年のマルチマックスと南井克巳元騎手以来、実に30年ぶりという珍事だった。
思えばその3週間前には、アメリカ競馬の祭典・ケンタッキーダービー(G1)にコンティノアールとともに参戦する予定だったのだが、左後肢の歩様の乱れでまさかの出走取消。ゲートに入ることも叶わなかった。今年は2月にフェブラリーS(G1)を勝って嬉しい初G1制覇も成し遂げているが、それ以上に悔しさも味わってきている。
気が付くと今年のJRA重賞勝ちはそのフェブラリーSを最後に遠ざかっており、海外を含めても2月にサウジアラビアで挙げた1351ターフスプリント(G3)での勝ち鞍が最後。先週は自身初となる韓国遠征に臨んだが、2勝を挙げた先輩・川田将雅騎手の後塵を拝する格好の2着・3着という結果に終わった。
レース後は自身のX(旧Twitter)に「悔しい結果になりましたが素晴らしい経験をさせていただきました。いつか必ずリベンジします」と綴り、正直な想いを吐露しつつ闘志を燃やした26歳。経験という収穫を手に、持ち帰った悔しさをバネにして、この秋競馬はさらにパワーアップした姿を見せてもらいたいところだ。
その点、春の大舞台で味わった“無念”の払拭がかかるドゥラエレーデとの共闘には大きな期待がかかる。距離は違えど、昨年末にG1を制した中山の舞台で、同世代の強豪たちを相手にもう一度あっと驚くようなパフォーマンスを見せることができるだろうか。