何故「ウマ娘」シリウスシンボリはワイルドなお嬢様なのか? オグリキャップ勝利の毎日王冠(G2)で見せた“トンでも事件”とは【東大式必勝馬券予想】

 秋競馬も佳境! 今週末から舞台は府中&淀にかわり“スーパーG2”の異名をとる「毎日王冠」「京都大賞典」が開催される。

 前者はタケシバオー、カツラギエース、ダイワメジャー、後者はテンポイント、メジロマックイーン、キタサンブラックら“歴史的名馬”たちが勝ち名乗りを上げているが、私の競馬人生、この目で見た「最高のレース」と今も思っているのが1998年10月11日の毎日王冠だ。

 明け4歳(現呼称・以下同)から5連続圧勝で宝塚記念も制したサイレンススズカが名手・武豊を背に、無敗の3歳馬エルコンドルパサーとグラスワンダーに影も踏ませず逃げ切るのだが、エルコンドルPは次走ジャパンカップを制し翌年は凱旋門賞2着。グラスWはその年の有馬に勝ち翌年も宝塚・有馬とグランプリ3連覇。

 これを考えるとサイレンススズカこそ中距離では日本競馬史上最強馬で、ルドルフもディープもオルフェも一緒に走れば絶対につかまえられないのでは。彼は次走、府中の大欅の向こうで星となったが、私も天に召された時には“静かなる鈴鹿くん”の華麗な逃げを再び見てみたいものだ。

 このレースは語り尽くされた感もあるので、ここでは「史上最大のトンでも事件?」となったサイレンススズカの10年前、昭和最後の毎日王冠を紹介しよう。

 一般的には3歳のオグリキャップがクラシック登録のない鬱憤を晴らすかのように公営から14連勝、中央重賞6連勝を飾ったレースとして知られているが、“トンでも事件”はゲート入り前に起こっていた。

 “主犯”は85年のダービー馬シリウスシンボリ。今流行りの『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)でもワイルドキャラとして扱われているらしいが、普段から気性難のあった彼は何が気に食わなかったか、前年の天皇賞・秋2着馬レジェンドテイオーの左肩を突然蹴り、同馬は跛行で発走除外の憂き目に……。

 さらに前年の毎日王冠を勝った名牝ダイナアクトレスの脇腹にも回し蹴りを入れ、彼女は除外は免れたもののショックで5着に敗れてしまう。で、狼藉を働いたシリウスシンボリは腹の虫がおさまったか、ちゃっかりオグリを直線猛追して2着。レース後、厩務員の間で喧嘩騒ぎが起きたのは言うまでもない。

 だが、彼の半生を思うと大いに“同情の余地あり”だ。

 クラシック前には主戦騎手・加藤和宏を降ろす降ろさないで馬主と調教師が大ゲンカ。挙句の果て転厩騒動に巻き込まれ……。ダービー勝利の後は1年上の偉大な大先輩シンボリルドルフと一緒に渡欧のはずが、皇帝の故障で単独の武者修行。2年間も異国でひとり寂しく暮らすこととなった。

 人間ならグレても仕方ないだろう。やさぐれシンボリは次走の天皇賞・秋7着で骨折判明、ターフを去り種牡馬となったが、30歳の天寿を全うしたのには救われる。

 また、超のつくトリビアだがこの毎日王冠で4着に入ったランニングフリー、馬主の藤島泰輔氏は今渦中の藤島ジュリー景子氏の父。メリー喜多川氏を夫として支えた名作家だったが、黄泉の国で義兄と娘の騒動をどう見ていらっしゃるのか。馬の与り知るところではないが。

 ここらで「東大馬券王の大よそー」に移ろう。

 スーパーG2に相応しいメンバーが登録してきたが、焦点はVマイル・安田記念を連勝、目下「最強マイラー」ソングラインの取捨だろう。マイル超の距離は初めて。だがこの欄でもたびたび書いているように「名馬に距離は問題なし」。父キズナ、母父シンボリクリスエスから血統的にも200mの延長はドンと来い! のはずだ。

 相手もNHKマイルCの激闘以来、いつも一緒に走る同級生の男の子、シュネルマイスターで決まりか。シュネルは一昨年の毎日王冠の覇者でもある。

 この2頭の1-2(3)着、三連単フォーメーションで勝負したいが、ソングLには桜花賞、阪神Cの15着など女の子らしい謎の大凡走もありうる。そこで今年の同コース同距離エプソムCを制し、去年の当レース2着のジャスティンカフェを軸にシュネルorソングをからめた三連複も押さえに。馬券で負けても名レースを堪能できれば……エエヤン!

尼崎昇

初めて見たダービー馬はタニノハローモア。伝説的な名馬の走りをリアルタイムで見てきた筋金入りの競馬通は「当たって儲かる予想」がモットー。過去に東京大学で競馬研部長をつとめ、スポーツ新聞やラジオ解説を担当した勝負師の素顔は「隣の晩ごはん」や「おもいッきりテレビ」などの大ヒット番組を手掛けたキー局の元敏腕プロデューサー。德光和夫、草野仁ら競馬界の著名人との親交もあり、競馬談義を繰り広げる仲である。

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