武豊「中身の濃い」敗戦に反撃誓う菊花賞…「やりたい競馬はできた」が致命的な弱点も露呈、ファントムシーフが克服すべき「2つ」の課題
自身の公式サイトでファンに様々な情報や想いを発信してくれている武豊騎手だが、18日に更新された日記には、秋華賞(G1)を制して牝馬三冠に輝いたリバティアイランドに対し、「皆さんが感じた通り、勝ち馬は強いです」と改めて絶対女王の強さに感心していたようだ。
また、武豊騎手にとってのビッグニュースは、やはりL.デットーリ騎手の引退撤回だった様子。ラストイヤーを宣言していた世界的名手の心変わりについて、「きっとやめるのをやめるだろうな」と予感していたらしい。
「まだ諦める準備ができていないと感じる」とコメントした盟友の決断は、親密な関係で知られるレジェンドとしても、もちろん歓迎すべきもの。「彼と同じレースで戦うという楽しみがまだ続きます。来シーズンはアメリカ拠点だそうで、その活躍も楽しみです」とエールを送っていた。
興味深い内容だったのは、ファントムシーフ(牡3、栗東・西村真幸厩舎)とのコンビで挑む今週末の菊花賞(G1)についての意気込みだ。
2番人気に支持された前走の神戸新聞杯(G2)は、意表を突く逃げの手に出る奇策を試みた。まんまと超スローペースに落とし込んだが、極限の瞬発力勝負で後れを取って3着に惜敗。自身も上がり3ハロン33秒7の末脚を使ったものの、とても届かないような位置から伸びてきたサトノグランツに交わされたどころか、すぐ後ろで追走していた伏兵サヴォーナにも後塵を拝してしまった。
レコード決着で敗れたことに対し、武豊騎手も「やりたいレースはできましたが、この馬には馬場が硬すぎるかもしれません」と認めながらも、「そこだけです」と強調したあたりは、本番に向けて前向きなコメントだったのではないか。
また、前走の敗戦から約1か月が経過した今回の日記では、「神戸新聞杯の3着は中身の濃いもので、距離が延びるのも悪くありません。ダービーでうまく乗れていなかった感があるので、その分もここでお返ししたい気持ちです。ご声援をお願いします」と、ラスト一冠の戴冠に向けて手応えを感じている言葉も綴られていた。
ファントムシーフが克服すべき「2つ」の課題
「京都競馬場は自分の庭のようなもの」と自負するレジェンドだが、ファントムシーフが克服すべき2つの課題も残されている。
ひとつは硬すぎる馬場、イコール時計の出る高速決着への懸念である。
週間予報によると金曜の京都地方で雨の予報も出ているが、土日に降雨は期待できなさそう。先週開催された秋華賞当日は、土曜夜の降雨により重馬場でスタートしたとはいえ、日曜のメインレースは稍重まで回復して33秒台の上がりが出る状況だった。
前日夜の雨ですら当日が晴れれば影響が少なかったのだから、金曜の雨は全く問題とならない可能性が高い。秋の開催3週目でまだまだ馬場コンディションは良好のため、直線の瞬発力勝負になるようなら歓迎できないだろう。
ここまでは想定できる内容だったのだが、19日に発表された菊花賞の枠順で、外の8枠15番が当たってしまったことは痛恨だ。
神戸新聞杯で積極策を採った背景には、陣営が好位から抜け出して勝利した共同通信杯(G3)のような競馬をイメージしていたのも大きかったはずだ。なんといっても武豊騎手自身も日本ダービーでの凡走に「結果的にもっと行くべきだったのかもしれません。向こう正面での勇気が足りませんでした」と反省の弁を残していた。
今回も逃げるとは限らないが、仮に好位からの競馬を試みるにしても、距離のロスを軽減させるには、ある程度出して行ってから内に潜り込むしかない。むしろ中途半端に前で競馬した場合、終始外々を回らされる不利を受けるからだ。
とはいえ、そこは騎手の腕がモノをいう長距離戦。菊花賞や天皇賞・春(G1)で何度も頂点を味わった名手なら、“ユタカマジック”で何とかしてしまうかもしれない。