【ジャパンC】リバティアイランド参戦で「最強馬対決」に異議あり!? 池添謙一「ブチ切れ騒動」から11年…タックルが物議を醸した陣営の大誤算

イクイノックス 撮影:Ruriko.I

 23年ぶりに皐月賞馬とダービー馬が対決する今週末の菊花賞(G1)だが、その翌週に行われる天皇賞・秋(G1)では、世界最強馬の異名を持つイクイノックス(牡4、美浦・木村哲也厩舎)と、本馬を2着に退けた昨年の日本ダービー(G1)以来の顔合わせとなるドウデュース(牡4、栗東・友道康夫厩舎)の直接対決が実現する。

 約1年5か月ぶりに2頭が同じレースに出走するとあって、この秋最大の注目を集めることは間違いなしだ。天皇賞・秋の次走となるジャパンC(G1)でも両陣営が参戦を表明しており、楽しみにしているファンは非常に多いだろう。

 もちろん、国際レースのジャパンCだけに、海外からの強豪や復活を期すタイトルホルダーなど、その他の馬たちも侮れない存在となる訳だが、とりわけ関心を集めたのは、秋華賞(G1)を制して史上7頭目の牝馬三冠に輝いたリバティアイランド(牝3、栗東・中内田充正厩舎)の参戦だ。

 ラスト一冠を圧倒的な強さで制した絶対女王の次走について、ジャパンCが選択肢に入っていることは知られていたが、本馬を所有するサンデーサラブレッドクラブから正式に発表されたのは朗報である。

 そこで少々気になったのは、獲得賞金歴代1位のアーモンドアイ超えを大目標に掲げるイクイノックスが出る一戦に、“あえての参戦を決断”したことだ。

 強い馬が同じレースに多数出走することは、白熱した好レースを望むファンにとっては大歓迎であるものの、オーナー目線の場合は必ずともそうとは言い切れない事情があるからだ。

リバティアイランド 撮影:Ruriko.I

 というのも、イクイノックスを所有するシルクレーシングとリバティアイランドを所有するサンデーレーシングは、いずれもノーザンファーム系のクラブである。表向きはライバル関係とはいえ、元を辿れば同じ生産牧場のため、同じレースで“共食い”のような事態はなるべく避けたい事情も含まれているはずだ。

 ましてやイクイノックス陣営は、ただでさえ過去に敗戦を喫したドウデュースという強力なライバルがいるのだから、仮に先着を果たしたとしてもリバティアイランドに勝たれてしまうようなことがあると“想定外の大誤算”になることもあり得る。

 一応、予期せぬアクシデントが発生した際に備えて、シャティン競馬場で開催される香港C(G1、12月10日・芝2000m)の予備登録を行うことも、あわせて発表されているのだが、いわゆる同じグループ内で目にする“使い分け疑惑”の可能性が完全にゼロとなった訳ではないことは覚えておきたい。

 その一方で思い出されるのは、タックルと陣営のブチ切れ騒動にまで発展した2012年のジャパンCだ。

池添謙一騎手「ブチ切れ騒動」から11年…

 この年のジャパンCには、前年の三冠馬オルフェーヴルが出走。日本競馬の悲願とされる凱旋門賞(仏G1)でクビ差の2着に惜敗した現役最強馬だけに、国内では無敵ともいえる存在だった。それは断然の1番人気に支持したファンの多くも同じ思いだったに違いない。

 しかし、勝って当たり前と見られていたオルフェーヴルの国内復帰初戦で番狂わせを演じる大金星を挙げたのが、同年の牝馬三冠に輝いたジェンティルドンナ。3歳牝馬で53キロという斤量が味方したとはいえ、最後の直線で馬体をぶつけられる格好となった王者が怯む姿を目撃したファンが狼狽したのも無理はなかった。

 物議を醸したのは、最後の直線で最内を走っていたジェンティルドンナの岩田康誠騎手に対し、進路を締めに行ったオルフェーヴルと池添謙一騎手のコンビが“返り討ち”に遭ったシーンだ。

 進路を塞がれることを嫌ったジェンティルドンナの岩田康騎手は、オルフェーヴルにタックルするような格好で外へと弾き飛ばし、最後は歴史に残る叩き合いを制したジェンティルドンナがハナ差で勝利。オルフェーヴルは馬体をぶつけられて態勢を崩した影響もあってか2着に敗れてしまった。

 当然ながらレース後には審議のランプが点灯。約20分にも及んだ審議の結果、最終的な順位は到達通りに確定。史上初めて3歳牝馬がジャパンCを制した瞬間となった。なお、岩田康騎手には、競馬開催2日間の騎乗停止処分が下されている。

 だが、この結果を受け入れられなかったのはオルフェーヴルの陣営だ。

 池添騎手は「僕が真っすぐ走っているのに大きな動作でぶつけられた。3、4回ぶつけられて態勢を崩した」「これでこの判定は納得できない」とブチ切れ。JRAの裁決に公然と抗議した。

 さらにオルフェーヴルを管理する池江泰寿調教師も「3回はぶつけられている。1回はバランスを崩して宙に浮いた。あれだけはじき飛ばされたら、どんな馬でも失速する」と不満を露わにし、「(ジェンティルドンナの)内はガラ空きだったし、オルフェと謙一の進路に入る必要はなかったのでは……」と後味の悪さを口にするほどだった。

 あれから11年の月日が流れた今年。世界最強馬と現役最強を争う両者が激突するジャパンCで参戦を表明したリバティアイランドもまた、当時のジェンティルドンナと同じく牝馬三冠を経て出走する可能性があるということは非常に興味深い。

 3歳世代最強の声も出ている女傑の陣営が、リバティアイランドなら勝算があると考えての決断か、それとも同じノーザンファーム系クラブだけに力量的にまだ“邪魔”をすることはないという結論だったのか……。いずれにしても11月26日の決戦でその答えは出る。

GJ 編集部

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