武豊×天皇賞・秋「3度目」の悲劇…史上初の降着メジロマックイーン、沈黙の日曜日サイレンススズカ、このままで終われないドウデュース
「良いメンバーがそろったレースに水を差すことになって申し訳ない」
29日、この秋、ファンが待ちに待ったC.ルメール騎手×イクイノックスVS武豊騎手×ドウデュースという頂上決戦は、まさかのアクシデントにより実現しなかった。この日、天皇賞・秋(G1)を前に武豊騎手が右太ももを負傷。天皇賞・秋のドウデュースには急遽、戸崎圭太騎手が騎乗した。
主戦のルメール騎手が「本当に完璧な馬」と語った通り、トーセンジョーダンが2011年から11年間守り続けた日本レコードを0.9秒も更新したイクイノックスの走りは、世界No.1ホースに相応しいものであり、仮にドウデュースに武豊騎手が騎乗していたとしても結果は変わらなかったかもしれない。
しかし、これで完全決着というには、ドウデュース陣営にとってあまりにも残酷な結末だろう。まさかのアクシデントに見舞われ、松葉杖姿で報道陣の前に現れた武豊騎手の「無念。本当に残念です……」という一言が陣営の思いを集約している。
武豊騎手×天皇賞・秋「3度目」の悲劇…
ただ、その一方で「武豊騎手と天皇賞・秋の悲劇」は今に始まったことではない。キタサンブラックやウオッカ、エアグルーヴなどで史上最多の6勝を挙げている一方、武豊騎手は今回のような競馬史に残るアクシデントに見舞われてきた。
今から32年前の1991年。若き武豊騎手は当時の現役最強馬メジロマックイーンと天皇賞春秋連覇を懸け、天皇賞・秋に出走した。単勝1.9倍という圧倒的な支持を集めたメジロマックイーンは、得意の先行策から最後の直線であっさりと抜け出し、プレクラスニーに6馬身差をつけての独走ゴール。
勝利を確信した武豊騎手はウイニングランやガッツポーズでファンの声援に応えたが、その直後に悲劇が待っていた。第2コーナーで内側へ斜行したとして、あろうことか最下位18着に降着となったのだ。なお、G1で1位入線後に降着になったケースは、この時が初めてだった。
また、それから7年後の天皇賞・秋で騎乗したサイレンススズカは、その独特の大逃げで6連勝中と絶対的な強さを誇っていたが、先頭を快走する4コーナーの手前で突如失速……。レース後、左前脚の手根骨粉砕骨折と診断されたサイレンススズカは予後不良処分となった。
当時、競馬界を代表する酒豪として知られていた武豊騎手だったが、この時ばかりは泥酔するまで飲みに飲んだという。この年の天皇賞・秋は「沈黙の日曜日」として多くのファンの記憶に残り、武豊騎手にとっても今なお忘れることができない悲劇となった。
あれから25年後の今年。武豊騎手は3度、天皇賞・秋で悲劇に襲われることとなった。だが、今回のアクシデントが本当に悲劇なのかは、イクイノックスとの再戦が予定されるジャパンC(G1)の結果で大きく変わるはずだ。
果たして、これは3度目の悲劇なのか。それとも大きな歓喜への伏線なのか――。「早く復帰できるように頑張ります」と前を向いた武豊騎手。このままでは終わらないはずだ。