【武蔵野S(G3)展望】ステラヴェローチェ「ダート初参戦」! 横山典弘VS横山武史の親子対決にも注目

 11日、東京競馬場ではダート1600mが舞台の武蔵野S(G3)が行われる。このレースの特徴は差し、追い込み脚質の馬がめっぽう強いことだ。

 過去10年(2013~22年)の脚質別成績を見ると、逃げ、先行が1勝ずつなのに対し、差し、追い込みが4勝ずつと、とにかく偏っている。レース前半に脚を溜めることが最重要。同じ条件のフェブラリーS(G1、14~23年)が逃げ1勝、先行6勝、差し2勝、追い込み1勝なので、正反対の傾向といえるだろう。

 そうなると、久々でもレッドルゼル(牡7歳、栗東・安田隆行厩舎)の好走に期待ができそうだ。

 ダートの短距離路線で息の長い活躍を見せる7歳馬だが、条件馬時代は先行抜け出しが勝ちパターンだった。ところがオープン入り後は徐々に脚質を転換。特に6歳になって以降は後方から直線勝負のレースが多くなっている。

 実績的にも頭一つ抜けた存在だ。2年前のJBCスプリント(G1)をはじめ、同年の根岸S(G3)、昨年の東京盃(G2)と重賞をこれまで3勝。今年のフェブラリーSは、レモンポップの2着と衰えを全く感じさせない走りを見せている。

 前走は3月のドバイゴールデンシャヒーン(G1)。21~22年と2年連続で2着した好相性のレースで“三度目の正直”を狙った。ところが、スタートで行き脚がつかず、道中はやや離れた後方集団を追走。直線でインを突いてスルスルと脚を伸ばしたが、6着がやっとだった。

 その後はJBCスプリントを目標に調整されていたが、夏負けの影響もあってコンディションが整わず見送り。それでも追い切りを重ねて、当初より1週遅い武蔵野Sで復帰戦を迎える。

 陣営のコメントなどから、状態は7~8分といったところだが、この馬本来の実力が出せれば、上位争いは濃厚。新コンビの横山典弘騎手が勝ちに行く競馬をするのか、それとも次につながるレースをするのかにも注目だ。


 そんな横山典騎手の三男・横山武史騎手と新たにコンビを結成したのがドライスタウト(牡4歳、栗東・牧浦充徳厩舎)である。

 デビューから3連勝で全日本2歳優駿(G1)を勝利したのは2年前の12月。その後は体調に合わせて無理使いせず、デビューから2年強の間にまだ9戦しかしていない。

 4歳となった今年は、フェブラリーSでレモンポップと2強を形成。3番人気のレッドルゼルを引き離しての2番人気に支持されたが、好位追走から直線で伸びきれずに4着に敗れた。

 さらに、確勝を期したかきつばた記念(G3)でウィルソンテソーロにハナ差で競り負けて詰めの甘さを露呈。しかし、夏を休養に充てたことで馬がリフレッシュされたのだろう、秋初戦のテレ玉杯オーバルスプリント(G3)で10か月ぶりの勝利を飾っている。

「休み明けのぶん調整が難しく、まだ動きが物足りません」と陣営も半信半疑だった中での復帰戦で結果を残し、状態は上昇中。重賞2連勝も視野に入るが、ポイントになるのが脚質だ。先行脚質のため、今回は苦戦する可能性もある。

 横山武騎手がこの馬の持ち味を生かす先行策を取るのか、それともレース傾向に合わせて、控える競馬をするのか。前走で賞金加算に成功したため、次を見据えた戦法を取ってもおかしくはない。


 ドライスタウトと同じく、好位抜け出しを勝ちパターンにしているのはペリエール(牡3歳、美浦・黒岩陽一厩舎)だ。

 これまで7戦4勝とまだ底を見せていない3歳馬で、敗れた3戦は初めて地方で走った全日本2歳優駿、初海外のUAEダービー(G2)、初めて3か月以上の休み明けで臨んだ前走のグリーンチャンネルC(L)である。

 ただし、その3戦でも掲示板は確保しており、大きく崩れていない点は評価に値する。今回と同じ東京マイルコースは3戦2勝と好成績。特に、2走前のユニコーンS(G3)は好位追走から直線で鋭く伸びて3馬身差の快勝を収めた。世代限定戦とはいえ、そのレースで初めてコンビを組んだC.ルメール騎手も「今回はめちゃくちゃ強かった」と同馬の走りを称賛していた。

 ただ、単勝1.8倍の断然人気に推された前走が0秒7差の3着と不甲斐なかっただけに古馬と2度目の対戦となる今回は試金石の一戦となるだろう。


 脚質的には末脚自慢のセキフウ(牡4歳、栗東・武幸四郎厩舎)にチャンスがある。

 中央、地方、海外と場所を問わず、ほぼ休むことなくダート戦線で走っている4歳馬のセキフウ。今年に入ってから春先までは不調だったが、夏の北海道シリーズで復調し、エルムS(G3)で1年8か月ぶりに勝利を挙げるなど、近4走は全て上がり最速をマークしている。

 鞍上には、復調のきっかけとなる4走前の大沼S(L)で初コンビを組んだ藤岡佑介騎手を再抜擢。2度目のコンビで重賞制覇を狙う。

ステラヴェローチェ 撮影:Ruriko.I

 これが初のダート挑戦となるステラヴェローチェ(牡5歳、栗東・須貝尚介厩舎)。1年7か月ぶりの復帰戦となった前走・富士S(G2)は、2番手からレースを進めたが、さすがに息が持たず7着に敗れた。

 休み明け2戦目で適性未知数のダートに矛先を向けてきたが、3歳時に不良馬場の神戸新聞杯(G2)を快勝しているようにパワーも持ち合わせている。本来の実力が発揮できれば、あっさり勝っても不思議はないだろう。

 この他には、前走初ダートの桂川S(3勝クラス)を4馬身差で快勝したペースセッティング(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)、3走前のかしわ記念でメイショウハリオの2着、前走・南部杯で4着とG1でも堅実に走っているタガノビューティー(牡6歳、栗東・西園正都厩舎)、ペルセウスS(OP)で約2年ぶりの勝利を挙げたヘリオス(セ7歳、栗東・西園正都厩舎)など個性あふれる伏兵陣もそろっている。

 1か月後のチャンピオンズC(G1)や来年のフェブラリーSにもつながる重要な一戦を制するのは果たしてどの馬になるのか。武蔵野Sは11日、15時30分に発走予定だ。

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