「逆輸入」した凱旋門賞馬弟が高速馬場でデビュー勝ち!日本と欧州の違いとは何だったのか…悲願達成に向けた「ジレンマ」の正体
先週末に行われたアメリカ競馬の祭典、ブリーダーズCターフ(G1)は、R.ムーア騎手が騎乗したオーギュストロダンが優勝。不世出の名馬ディープインパクトのラストクロップとしても知られる英愛ダービー馬の快挙は、日本の競馬関係者にとってもビッグニュースとなった。
本馬以外にもサクソンウォリアーやスノーフォール他、欧州のG1レースを制した産駒を輩出しているが、日本で育成された競走馬ディープインパクト産駒に関しては、優勝が悲願とされる凱旋門賞(仏G1)で苦戦を続けている。
かといって彼らの実力が不足していたのかというと、一概にそうとも言い切れない。
ホームとアウェーの入れ替わるジャパンC(G1)に目線を移した場合、2005年のアルカセットを最後に外国馬の優勝はなし。優勝経験の有無はさておき、凱旋門賞とは正反対の状況となっている。
こちらについては、既に関係者らが案じているように、スピードに特化した高速馬場で行われる日本の競馬とタフな馬場を克服するだけのパワーとスタミナを求められる欧州の馬場との違いも大きいだろう。珍しく比較的良好な馬場で開催された今年は、ただ1頭出走したスルーセブンシーズが4着に好走する幸運もあったが、この時期は雨中の開催となるケースも多く、重や不良で開催された際には、もはや別競技に近いと例えられることすらある。
とはいえ、欧州で育成されたディープインパクト産駒が、日本馬が苦手とされる馬場で結果を残していることは、先天的なものよりも後天的な要素の割合が多く締めているような印象を受けてしまう。
それはそうとして、先週の土曜東京5Rの2歳新馬(芝1800m)をシンエンペラー(牡2、栗東・矢作芳人厩舎)が楽勝したことには少々驚かされた。
悲願達成に向けた「ジレンマ」の正体
本馬はシユーニ産駒で母父ガリレオというバリバリの欧州血統。2020年の凱旋門賞を制したソットサスを全兄に持つ、逆輸入のような血統の持ち主だ。『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)のヒットで知られる藤田晋オーナーの所有馬の上に管理しているのも「世界のYAHAGI」調教師ということもあり、デビュー前から大きな話題を集めていた。
その一方で先述したジャパンCの例にもあるが、日本と対極的といえる欧州の馬場で活躍した馬の全弟だけに馬場適性に疑問が残ったのも当然。何しろ今秋の東京開催は時計の速い決着が多く見られており、イクイノックスが圧勝した天皇賞・秋(G1)の勝ちタイムは、芝2000mで1分55秒2というスーパーレコードをマークしたばかりだった。
それだけに、もし適性がない場合は惨敗すら考えられたものの、いざ蓋を開けてみれば何の問題もなくこなし、上がり3ハロンも33秒8と申し分のない快勝。欧州血統の馬でも日本で育成を行えば、そこはやはり日本馬ということか。
仮にシンエンペラーが今後も快進撃を続け、将来的に凱旋門賞挑戦となるようなら、日本の高速馬場に慣れた欧州血統の馬が、ある意味里帰り的な遠征でどこまでやれるのかは見てみたい気がする。
“日本競馬の悲願”という割には、年々高速化の進む馬場がプラスになるとは考えにくいのだが、このジレンマの克服が求められる目標が達成される日は、いつか訪れるだろうか。