マイルCSは「ニホンピロウイナーのため」に生まれたG1!? 今年は鼻毛の先まで見逃さない!【東大式必勝馬券予想】

 2週前の話で恐縮だが、私は府中の5階指定席にいた。

 メインはアルゼンチン共和国杯。握りしめた馬券は本稿で書いた通り、1着欄にゼッフィーロなどディープ産駒4頭、2(3)着欄に前年3着のヒートオンビート1頭。果たして、直線で内からモレイラ騎手が力強く抜け出し、外から橙色の帽子が59キロにもたつきながらも飛んで来る。「3着に上がった!」と思われたところがゴールだった。

 しかし、掲示板には3、4着「写真」の表示。動体視力には絶対の自信がある私は喜び勇んで払い戻しに向かうも約5分過ぎ、まさかの「同着」に……。咄嗟に脳裏をよぎったのは「タケデンバード事件」だ。

 昭和47年12月3日の東京競馬場、当時の名物重賞クモハタ記念で直線逃げる伏兵タケデンバードを本命ハクホオショウが差し切った……と観戦者や新聞記者の目には映ったが、掲示板には即座に1着⑧タケデン2着①ハクホオ。

 これに「誤審じゃないか」と声が上がり、関係者が決勝写真を見せるよう要求するも「カメラの故障」で公開されず、結果は覆らずじまい。以降、着順決定には写真判定が義務付けられたと聞く。

 禍根の残る事件であったが、今回のアルゼンチン共和国杯は当然決勝写真も動画も公開されている。私は3着同着のチャックネイトのハナはそんなに長いのか?と問いたいところだが、ゼッフィーロからマイネルウィルトス2着流しの押さえもあったので変なトリプル的中となり、多少は財布もふくらんだ。

 気を取り直し今週19日(日)の京都競馬場もほとんどゴール目の前の席だ。ハナ差どころか、ハナ毛の差まで見逃さぬぞ!

 ということで当日のメインはG1マイルチャンピオンシップ(芝1600m)。1984年、グレード制導入と競走体系の見直しで創設されたマイル王決定戦だ。

マイルCSは「ニホンピロウイナーのため」に生まれたG1!?

 第1回の優勝馬はニホンピロウイナー。2歳(現呼称・以下同)新馬から3連勝、3歳緒戦のきさらぎ賞も制した同馬は当然のごとく皐月賞に駒を進めるが、ミスターシービーから5秒近く離された最下位20着。これでクラシック路線に見切りをつけ、短距離に転じたのがよかった。

 秋に1600、1400、1200mと3連勝。明けて4歳は無双状態で、なんと12勝目となったのが第1回マイルCSだった。「ニホンピロウイナーのために作られたG1レース」とも言われた同馬は、翌年も連覇し26戦16勝という凄まじい成績で引退。後のタイキシャトル、デュランダル、モーリスらマイルの名馬が生まれたのも、このマイルCSの創設とニホンピロウイナーのお陰とも言えよう。

 思い出に残る馬は2009年のカンパニーだ。

 中山記念を連覇するなどG1にはちょっと足りないが、G2・G3では無敵の中距離王。頑丈なのも取り柄で8歳まで間断なく走り続け、34戦目となったのが天皇賞・秋だった。良くて着までとみられ指定席の5番人気……ところがだ!

 粘る有馬記念馬マツリダゴッホを直線で末脚鋭く交わしたカンパニーは、追いすがる歴史的名牝ウオッカ、JC馬スクリーンヒーローを退け先頭でゴール! 史上初の8歳G1馬(平地)となった。

 そして次走、引退レースに選んだのがこのマイルCS。単勝2.3倍の堂々1番人気に支持された彼は、直線で危なげなく抜け出しG1連勝で有終の美を飾った。人間で言うと40歳前後か(諸説あり)? オッサン世代に勇気と希望をくれたカンパニーに、私は今でも心から感謝している。 

 この辺で「東大馬券王の大よそー」に移ろう。

 女王ソングラインが渡米を選んだので、ここは同期で仲良し(着順的に)のシュネルマイスターにとって負けられないレースだ。鞍上もG1・3連勝中のC.ルメール。このコンビから毎日王冠で両馬を破った3歳エルトンバローズ、前年覇者セリフォス、前走・富士Sで実力を見せつけたナミュールへ、1頭軸3頭流しの3連単マルチで勝負したい。

 押さえに、いつも何となく着に来ちゃうダノンザキッド、去年の4着ソウルラッシュを3着にマークしたフォーメーションも。第1回のNPウイナー以来、実力馬が実力通り勝つレース。鼻毛の差まで見逃さず、ゴール前の激戦を堪能することにしよう。

尼崎昇

初めて見たダービー馬はタニノハローモア。伝説的な名馬の走りをリアルタイムで見てきた筋金入りの競馬通は「当たって儲かる予想」がモットー。過去に東京大学で競馬研部長をつとめ、スポーツ新聞やラジオ解説を担当した勝負師の素顔は「隣の晩ごはん」や「おもいッきりテレビ」などの大ヒット番組を手掛けたキー局の元敏腕プロデューサー。德光和夫、草野仁ら競馬界の著名人との親交もあり、競馬談義を繰り広げる仲である。

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