「神騎乗」「めちゃめちゃ強い」と称賛の嵐、長岡禎仁がマイルCS前に存在感発揮!「変幻自在」の好判断が会心の勝利を呼び込む
先週末に京都競馬場で行われたマイルCS(G1)は、藤岡康太騎手が騎乗した5番人気ナミュールが、後方から鋭く末脚を伸ばして優勝。当日の京都2Rで落馬負傷したR.ムーア騎手の代役として急遽の登板となった藤岡康騎手だが、プレッシャーのかかるG1の大舞台で満点の結果を残すことに成功した。
これが待望のG1初勝利となったナミュールに続き、藤岡康騎手もジョーカプチーノで制した2009年のNHKマイルC(G1)以来となる14年ぶりのG1勝利。これには本人も“嬉しい誤算”だったに違いない。
そんなマイルCSの藤岡康騎手とは別の意味で“嬉しい誤算”が勝利に繋がったのは、同日の京都10R近江特別(2勝クラス)を2番人気ウインスノーライト(牡3、栗東・杉山晴紀厩舎)で制した長岡禎仁騎手だ。結果だけなら2勝クラスのレースを2番人気馬が勝っただけではあるが、実は長岡騎手の好判断と好騎乗が会心のレースを導いていた。
17頭立てで行われた芝2000m戦。前走で逃げ切り勝ちを決めていたウインスノーライトだが、ゲートで煽るような格好となって道中は10番手の後方から追走を強いられた。逃げの手に出たキボウノダイチと2番手につけたスカーズの2頭が淡々としたペースを作り、1000m通過は61秒1と平均的なラップでレースは進む。
しかし、この膠着状態に一石を投じたのが出遅れたウインスノーライトと長岡騎手のコンビだった。1000m手前に外目をスルスルと進出すると、3コーナーまでに先頭に踊り出る大胆な奇襲を敢行。そのままペースを落とすことなく最終コーナー手前からセーフティリードを取るべく後続との差を広げに掛かる。後続馬も一斉に追い上げを図るが、最後までウインスノーライトの影を踏むこともできずに終わった。
「ゲートの悪さが出て後手を踏んでしまいましたが、ペースが遅かったのでマクりに作戦を切り替えました。最後もいい脚を使ってくれて、いい競馬でした」
レースをそう振り返った長岡騎手としては、まさに「してやったり」の快勝劇。パートナーの能力があってこその結果だったとはいえ、変幻自在のレースぶりにはネットの掲示板やSNSで「めちゃめちゃ強い」「凄い」「神騎乗」といった、人馬を称賛する驚きの声が相次いだ。
「変幻自在」の好判断が会心の勝利を呼び込む
「マイルCSの藤岡康騎手も好騎乗でしたが、個人的にこの日の京都で、最も印象に残ったのは長岡騎手のウインスノーライトでした。道中では各馬の騎手と駆け引きもあったでしょうけど、あそこで“動く判断”をしたのが最大の勝因ですね。
先行勢としては中盤の息を入れたかったタイミングでマクられたため、完全に主導権を奪われる形となりました。しかも後半の1000mは58秒5と、前半の61秒1より2秒6もペースが上がっています。実質ロングスパートを掛けていたのと同じな訳で、後ろから追い上げた組に有利な展開。それを押し切ったことに価値があります」(競馬記者)
一般的に競馬における馬と騎手の割合は7:3と評されているが、このレースに限っては騎手が4にも5にも感じられる好騎乗だったといえるのではないか。
ただ、リーディング上位に名を連ねていない長岡騎手だが、決して他の騎手に腕で見劣る訳ではない。過去には2020年のフェブラリーS(G1)で16頭中最低人気だった単勝142.6倍の超人気薄ケイティブレイブで2着、同年の小倉記念(G3)を10番人気アールスターとのコンビで大波乱を演出した手腕の持ち主である。
騎乗馬に恵まれさえすれば、実力は申し分ないだけに存在感を発揮するチャンスもあるだろう。今後も重賞やG1に騎乗する機会があれば、注目したい騎手だ。