【有馬記念】イクイノックス引退で19年ぶり「秋古馬三冠」ならず…「三冠皆勤」のライバルに託すバトン
先月26日のジャパンC(G1)で三冠牝馬リバティアイランドに4馬身差を付けて勝利したイクイノックス。これでG1・6連勝となり、改めて強さを語る必要はないだろう。「世界最強馬」の動向が大いに注目される中で、28日にはノーザンファーム天栄への放牧が発表された。
外厩施設への放牧ならその次を見据えている可能性もあるため、今年の有馬記念(G1)出走に期待する声も上がった。しかし続報はご存知の通り、ジャパンCをもって現役を引退し、社台スタリオンステーションで種牡馬入りとのこと。
同一年に天皇賞・秋(G1)とジャパンC、そして有馬記念を制覇する偉業に、イクイノックスは王手をかけていた。有馬記念への出走がありそうだと期待されたのは、ジャパンCと同じく、「秋古馬三冠」もまた、2億円の褒賞金が出るからだろう。
しかし、中3週が続く厳しいローテーションでG1を3連勝するのは、過酷の一言に尽きる。長い歴史上で秋古馬三冠を成し遂げた馬は2頭のみ。2017年には父キタサンブラックも挑んだが、ジャパンCのみ3着に敗れた。
成長著しいイクイノックスとて、天皇賞・秋とジャパンCを終えて疲れは隠せなかった様子。体質を不安視された2~3歳時に比べると、担当の楠調教助手も「本当にタフになりましたね」と評価していたほどだが、目先のタイトルよりも、種牡馬としての将来を優先するのは致し方ないだろう。
秋古馬三冠を達成すれば、2004年にコースレコードも樹立したゼンノロブロイ以来、実に19年ぶりだったが、大本命の引退が決まり、好メンバーの揃った有馬記念は、群雄割拠といったところか。
「三冠皆勤」のライバルに託すバトン
ここで注目したいのは、現時点で唯一の秋古馬三冠を「皆勤」する可能性の高いドウデュース(牡4歳、栗東・友道康夫厩舎)だ。
今年の夏には、すでにドウデュースの秋古馬三冠獲得に意欲を見せていた友道師。春は京都記念(G2)を楽勝したものの、ドバイターフ(G1)では直前で出走を取り消されたため、消化不良と言わざるを得なかった。それだけに、秋の巻き返しにかける想いは強かったのだろう。
そして迎えた天皇賞・秋の当日だったが、デビューから鞍上を務める武豊騎手がまさかの負傷。またもレース直前のアクシデントに見舞われたドウデュースは、気の毒と言う他ない。次のジャパンCも含めて、鞍上は戸崎圭太騎手が務めた。
レース結果としては、休養明け+乗り替わりの天皇賞・秋は7着に敗れたが、続くジャパンCでは4着と復活の兆しが見られた。上り調子で迎える有馬記念にて「三度目の正直」といきたいところ。現在の鞍上は未定だが、やはり武豊騎手の復帰は期待したい。
近年は使うレースが絞られやすいため、挑戦自体が少なくなった秋古馬三冠。昨年は1頭も挑戦しなかっただけに、果敢に挑むドウデュースにはまず賛辞を送りたい。その上で「イクイノックスを倒したダービー馬」が最強馬のバトンを受け継ぐようなら、ターフを去る同期へ、これ以上ない餞別になるだろう。