C.ルメール「定位置返り咲き」に確定ランプ? 川田将雅は香港遠征で逆転の望み遠のく…再奪首の可能性を握るのはイクイノックスの存在か
昨年、143勝を挙げて待望のリーディングジョッキーのタイトルを手に入れた川田将雅騎手。日本人騎手としてトップを取り返したいという想いが現実となり、自著である『頂への挑戦 負け続けた末につかんだ「勝者」の思考法』も話題を集めた。
目標となるのは2年連続での戴冠だが、先週の開催終了時点で158勝を挙げてトップのC.ルメール騎手に対し、142勝で2位の川田騎手は16勝差をつけられている状況。それでも4週間を残した段階で昨年の勝ち数と1勝しか変わらないのだから、川田騎手が急激に調子を落とした訳でもなさそうだ。
むしろ昨年を凌ぐペースで勝利を量産しているといえるのだが、今週末には香港国際競走への遠征も控えており、国内で騎乗するルメール騎手との差は、さらに開く可能性もあるだろう。
その一方で、川田騎手が悲願のリーディングジョッキーを獲得した昨年は、天敵といえるルメール騎手がJRAに所属した2015年の112勝すら下回る109勝だった点は、思い出しておきたい。
2014年から16年に3年連続でリーディングジョッキーだった戸崎圭太騎手の牙城を崩したルメール騎手が、トップの座を手にして以降、17年から5年連続で王座を守り続けていたものの、意外なことに昨年に限っては首位陥落どころか5位に低迷。見方によっては川田騎手が倒したというよりも、ルメール騎手が「例年ほど活躍していなかった」ともいえる。
突然の成績低下について、直接的な因果関係があったかどうかはわからないが、一部で囁かれたのは、絶対的なパートナーだったアーモンドアイの引退である。本馬はルメール騎手が「僕の家族」と評したほど強い思い入れのあった馬。お手馬の引退で主戦騎手も燃え尽きたような感覚に陥った可能性もある。
とはいえ、実際のところ同馬の引退は20年のこと。21年にリーディングを独走したのだから、そこまで大きな影響はなかったと見るべきだ。無理を承知でひとつだけ言えることがあるとすれば、アーモンドアイ引退の2年後になぜか成績が落ちたというだけか。
再奪首の可能性を握るのはイクイノックスの存在か
そんなルメール騎手の再浮上に大きく貢献したのが、先日に引退が発表されたイクイノックスの存在だ。事実上のラストランとなったジャパンC(G1)では、レース後に涙ぐむシーンも見られた。
天皇賞・秋(G1)の後には、ルメール騎手もイクイノックスに対し「自分にとって大事な馬。だんだん、家族に入ってきた。世界的に有名な、スーパースターになった」と評価していた。
続くジャパンCも圧勝したことで、いまやイクイノックスもアーモンドアイと遜色ない評価を得たはずだ。それだけに再び燃え尽きてしまった感覚に陥る可能性も十分にあるだろう。
2度目のリーディングを狙いたい川田騎手にとって、定位置返り咲きに現実味を増したライバルは非常に厄介な相手だ。
しかし、アーモンドアイ引退の2年後にルメール騎手が、突然調子を落としたことを考えれば、イクイノックス引退も来年再来年に謎の低迷があるサインとなるかもしれない。