中山大障害(G1)「3勝クラス並み」の馬券売上に愕然…「これからのスターに」新王者誕生とジョッキーカメラ初公開に込められた願い

オジュウチョウサンに続く新王者誕生も

 有馬記念(G1)における武豊騎手とドウデュースの復活勝利に沸いた先週の競馬で、もう1つ大きく注目されたのが、前日に行われた中山大障害(G1)だ。

 結果は1番人気のマイネルグロンが、2着以下を10馬身以上突き放す圧巻の内容でG1初制覇。主戦の石神深一騎手の「直線は物見をする余裕もあったし、強い内容でした」という言葉通り、まさに障害界の新時代の幕開けを告げるようなレースだった。

 その一方で、レース後にファンから大きな反響があったのが、JRA(日本中央競馬会)が公式YouTubeで公開した中山大障害のジョッキーカメラの映像だ。

 詳細は当サイトでも先日取り上げたので確認してほしいが、JRAが障害レースのジョッキーカメラを初公開したこともあって、レース当日に「ジョッキーカメラ」がトレンド入りするなど、多くのファンの関心を呼んだ。

 特に勝ったマイネルグロンと石神騎手の映像は、わずか1日余りで20万再生を記録。100万再生のドウデュースと武豊騎手の有馬記念には遠く及ばないものの、これは今月のチャンピオンズC(G1)を勝ったレモンポップと坂井瑠星騎手の24万再生に匹敵する数だ。「障害レース」という括りで鑑みると、異例の反響と言えるだろう。

 実は現在の障害界は深刻な問題を抱えている。慢性的な騎手不足だ。

「大真面目な話、熊沢の引退と合わせて、完全な障害騎手不足。このままだといずれ障害競走自体が番組が組めなくなる可能性がある」

 自身の公式X(旧Twitter)でそう警鐘を鳴らしているのは、「ニシノ」「セイウン」の冠名で有名な西山茂行オーナーだ。西山オーナーと言えば、昨年の中山大障害の覇者ニシノデイジーの馬主であり、本馬は先週の中山大障害でも2着した。

 今年、第68回を迎えた有馬記念の第1回が1956年だったことに対して、中山大障害の第1回は1934年。これだけを見ても、日本競馬が障害レースと共にその歴史を紡いできたことがうかがえる。しかし、現在の障害レースは開催自体が危ぶまれるほど、深刻な状況に陥っているのだ。

 ちなみに武豊騎手らを筆頭に現役騎手の多くがJRAの競馬学校を卒業しているのだが、彼らは平地免許だけでなく、障害免許も取得している。だが、その大多数が平地だけで騎乗していることは、ファンも知っての通りだろう。だが、当然ながら彼らが悪いわけではない……いや、関係者もファンも誰も悪くないからこそ問題は根深いのだ。

騎手たちは何故、障害レースを乗らないのか

「我々に職業選択の自由があるように、騎手にも当然選択の自由はあります。ただ、障害は平地と比較して、やはり危険が大きいですし、その分『平地で騎乗するよりも儲かるのか』と言われれば、賞金分配は平地5%に対して7%、騎乗手当も障害の方が高いのですが、微々たる差と言わざるを得ません。

それに騎手は身体が資本。この秋は武豊騎手の負傷離脱が大きな話題になりましたが、騎手は負傷などで馬に乗れなくなると途端に収入を失ってしまう職業でもあります。その点、騎手が平地に比べて落馬の危険性の高い障害レースにリスクを感じてしまうのは当然。現状、リスクとメリットが見合っていないことが、障害騎手が増えない大きな要因の1つになっていると思います」(競馬記者)

 無論、JRAも1999年に障害レースにもグレード制を導入するなど、これまで様々な施策を打ってきた。

「条件戦並み」の馬券売上に愕然…

 ただ、23日の中山大障害の馬券売上が20億506万2300円だったことに対して、同日に行われたグレイトフルS(3勝クラス)の馬券売上は19億8270万6900円。つまり、G1と3勝クラスがほぼ変わらない売上だったということになる。障害騎手を増やすための待遇改善は効果が見込めるかもしれないが、この売上ではレースの賞金増額へ簡単に舵を切るわけにもいかない。

「(中山大障害の)翌日の阪神ではサンタクロースSという3勝クラスのレースが行われましたが、その売上は13億7216万6100円でした。グレイトフルSが19億円売れたのは、その日のメイン(11R)だったことも大きいと思います。

レースの格であればG1の中山大障害がメインを務めるべきですが、あまり遅い時間帯になると、日が傾いて視界が西日などで著しく遮られる可能性が高まります。障害レースが比較的早い時間に行われているのはそのためなのですが、早い時間だと馬券が(あまり)売れないという事情もあり……」(同)

「これからのスターになれる素材だと思う」

 中山大障害のレース後、新王者マイネルグロンにそう期待を寄せた石神騎手は、かつてオジュウチョウサンとのコンビで一世を風靡したジョッキーだ。その言葉には、王者としてだけでなく、かつての相棒のように障害界全体を大きく盛り上げる存在になってほしいという願いも込められているに違いない。

 この秋も熊沢重文騎手、平沢健治騎手という名手が引退することになった障害界。ますます深刻さが深まる中、新王者マイネルグロンの誕生、そしてジョッキーカメラの初公開が障害レースに光が当たる大きなきっかけになることを祈るばかりだ。

GJ 編集部

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