川田将雅もC.ルメールも受賞ならず…競馬にも「沢村賞」を? 昨年の戸崎圭太に続き、松山弘平にも「違和感」が気の毒

撮影:Ruriko.I

 4日、JRA(日本中央競馬会)が2023年度における調教師・騎手部門のJRA賞並びに厩舎関係者表彰の受賞者を公式ホームページ等で発表した。各受賞者には月末に改めてJRA賞授賞式が行われる。

 毎年、大きな注目を集める騎手リーディングは、C.ルメール騎手が前年王者の川田将雅騎手との争いを制して2年ぶりにリーディングに返り咲き。イクイノックスとのコンビを始め、年間G1・7勝という活躍ぶりで獲得賞金との2冠をゲットした。また、最高勝率を獲得した川田騎手の0.305はJRA史上最高というレベルの高さ。今年のリーディングもこの2人が中心になることは間違いないだろう。

 一方で、いよいよその存在の見直しに迫られているのが「MVJ」ではないだろうか。

MVJなのにNo.1ジョッキーが選ばれない

 2013年の創設から今回で11年目となったMVJは、野球やサッカーなどで最も活躍した選手に贈られるMVP(Most Valuable Player)のジョッキー版であり、そのままMost Valuable Jockeyを略したものだ。

松山弘平騎手 撮影:Ruriko.I

 毎年の「勝利度数」「勝率」「獲得賞金」「年間騎乗回数」4部門のポイントによって決定し、2023年度は松山弘平騎手が初のMVJに輝いた。

 その一方で本来、最も活躍した騎手に贈られるはずのMVJが、先述したルメール騎手や川田騎手でないことには少なからず違和感があると言わざるを得ない。ちなみに2人はポイント争いの2位どころか3、4位だった。今年は松山騎手と2位の横山武史騎手とわずか1ポイント差の大接戦だったというのだから、いよいよ「MVJ=最も活躍した騎手?」というのが率直な感想ではないだろうか。

 また2022年は川田騎手が「勝利度数」「勝率」「獲得賞金」の3冠を獲得し、史上4人目の騎手大賞を獲得したものの、MVJは戸崎圭太騎手。この結果はネット上でも大きな議論を呼んだ。このような“捻じれた結果”になったのは、騎手大賞とは関係のない「年間騎乗回数」がMVJの評価対象に含まれているからで、川田騎手は1ポイントも獲得することができなかったからだ。

 これには川田騎手の騎乗馬を絞るスタイルが原因という声もあったが、今年はルメール騎手が「勝利度数」「獲得賞金」の2冠を達成し「勝率」でも2位だったが、それでもMVJ争いでは3位止まりだった。

2022年度のMVJに輝いた戸崎騎手

 無論、大前提として松山騎手や横山武騎手、ルメール騎手、川田騎手らの活躍に落ち度はまったくない。先述した通り“捻じれ”が起こってしまう最大の原因は、MVJに「年間騎乗回数」が含まれていることだ。

 ただし、個人的にはMVJの選考ポイントから「年間騎乗回数」を外す必要はないと考えている。何故なら騎乗数が多いことは、ただ身体的に優れているというだけでなく、その騎手が馬主や調教師といった関係者から信頼されている証でもあるからだ。競馬の場合、その意味が他の競技よりも重いことは多くの競馬ファンが知る事実だろう。

MVJと騎手大賞との差別化を

 要は、MVJがMost Valuable Jockeyだから“捻じれ”が生まれてしまうのではないだろうか。

 例えば、これがプロ野球の沢村賞のように有馬賞とか、安田賞という名称なら、少なくとも違和感は少し緩和される気がする。何ならMVJが創設された2013年当時にJRAの理事長だった土川健之氏から「土川賞」でどうだろうか。

 いずれにせよ、昨年の戸崎騎手や今年の松山騎手が「何故、川田騎手、ルメール騎手じゃないのか」と言われてしまうのは気の毒だ。騎手大賞という一目瞭然で最優秀賞とわかる賞があるのだから、MVJはもう少しあり方を考える必要があるのではないだろうか。

浅井宗次郎

1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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