M.デムーロ、幸英明の「完璧騎乗」を覆した重賞V! ビザンチンドリームが見せたポテンシャルの高さ…「騎手の判断」問われる京都の内空け過ぎ問題
4日の京都競馬場で行われたきさらぎ賞(G3)は、最後の直線を大外から伸びたビザンチンドリーム(牡3、栗東・坂口智康厩舎)が優勝。デビューからの連勝を伸ばし、R.ピーヒュレク騎手にとっても嬉しい初JRA重賞制覇となった。
「私自身は負けたと思っていましたので、この結果に驚いています」「素晴らしい終いの脚があると分かっていたので、それを信じて乗りました」
レース後のコメントでピーヒュレク騎手がそう振り返った通り、とても届かないような位置からの差し切り勝ち。2着ウォーターリヒト、3着シヴァースと横一線に並んで入線したが、写真判定の結果は3着馬までがハナ+ハナの大激戦だった。友人でもあるB.ムルザバエフ騎手からバトンを受け継いだ素質馬を勝利に導く大役を成功。本人も敗戦を覚悟していただけに喜びもひとしおだろう。
「騎手の判断」問われる京都の内空け過ぎ問題
その一方で、少々気の毒な結果に終わってしまったのは、2着ウォーターリヒトの幸英明騎手と3着シヴァースのM.デムーロ騎手かもしれない。
積極策を採ったシヴァースは、道中はテイエムリステットと並ぶ格好で馬群の最内をキープした。1頭ポツンと遅れたピエナオルフェを除けば、最もロスのないコース取り。コーナーを回るときのみ内ラチ寄りを走らせるデムーロ騎手の判断が大激戦に持ち込む起爆剤となった。
幸騎手のウォーターリヒトは、馬群の後方外目から追走していたが、残り800m付近から進路を内へと切り替え、最終コーナーでシヴァースの内へ潜り込むことに成功。道中こそ外を回ったものの、コーナーワークでうまくロスを相殺し、末脚を炸裂させることに成功した。
対するビザンチンドリームは、結果的に勝ちはしたものの、ピーヒュレク騎手の手綱捌きについては、課題が多かったように感じた。スタートで後手を踏んだのはともかく、道中で折り合いを欠くようなシーンもあり、後方から大外へ持ち出しただけの騎乗。勝利を目指して創意工夫したデムーロ騎手や幸騎手に比べ、馬の力だけに頼ったようにも映る騎乗内容にも映った。
こちらについては、元JRA騎手の安藤勝己氏が自身のSNSにて「インをすくったウォーターリヒト、展開利があったシヴァースに対して、よう届いたなって大味な競馬。接戦でも現時点では性能の差やったように思う」と回顧している。
ほぼ完璧な騎乗で接戦に持ち込んだ2頭に対し、ビザンチンドリームが力だけで覆してしまったというニュアンスだろう。それでも勝ったビザンチンドリームのポテンシャルの高さを証明するレース結果だったのではないか。
また、気になったのは京都コースの荒れ具合だ。いくら内側が荒れているからといっても無為無策に外を回している騎手が目立っている印象も残る。内枠の馬が意図的に外を走らせるなら、外枠の馬にも内へ潜り込むチャンスはある。
にもかかわらず、外を走る馬のさらに外を走っては距離のロスが出てしまう。直線で挟まれる不利を受けはしたものの、ファーヴェントに騎乗していた川田将雅騎手のソツのない進路選択は光った。
今週末を含めて残り2週の京都開催。“内空け過ぎ問題”をどう対処するかは、騎手の判断が問われるだろう。そういう意味では、乗れる騎手とそうでない騎手との差が馬券の結果にも大きな影響を与えるはずだ。