園田の名手を父に持つ「大型新人」が離れ業で初白星!「僕の所有馬にも騎乗してもらいたい」有言実行の有名オーナーも好騎乗を称賛
「ゴールの瞬間は勝利を確信できませんでしたが、周りから声をかけていただいてようやく確信できました」
勝利騎手インタビューでレースをそう振り返ったのは、24日の阪神メイン・六甲S(L)をボルザコフスキー(牡5歳、栗東・清水久詞厩舎)で制し、デビュー34戦目にして嬉しいJRA初勝利を飾ったルーキーの吉村誠之助騎手だ。
同騎手は、地方通算3300勝以上をマークしている園田の名手・吉村智洋騎手を父に持つ期待の大型新人。ただ今月2日のデビューから3週間で未勝利……。23日の阪神12Rは2番人気ネイトで5着に敗れた後、父から「あんな騎乗するならもう2度と乗るな」と叱責もされてしまったようだ。
結果を出せぬまま迎えたのが、この日のメインレースだった。すでに初白星を挙げた同期もおり、焦りを感じ始める時期ながら、冷静な手綱捌きが光った。
吉村誠騎手のパートナー・ボルザコフスキーは15頭立て9番人気と低評価だったが、スタートを五分に決めると道中は中団後ろのインコースでじっくりと脚をためる。
4コーナーもインコースをロスなくタイトに回って直線に入ると、内から3頭目のスペースから馬群を割ってスルスルと末脚を伸ばした。ゴール前では外からワールドウインズが猛追してきたが、最後はハナ差しのいで1着となった。2着馬との差を考えると、両馬の通った進路の違いが結果的に明暗を分けたといえるだろう。
「これがメインレース初騎乗でもあった吉村誠騎手でしたが、肝の据わった好騎乗でした。デビューしたばかりの新人とは思えない見事な立ち回りだったと思います。
ボルザコフスキーは前走重賞で5着と、実績の割に9番人気と低評価でしたが、鞍上が未勝利のルーキーだった影響もあったでしょうか。ただしっかりと結果も残しましたし、これから注目の騎手であることは間違いありません」(競馬誌ライター)
前日の騎乗については厳しい言葉もかけていた父・吉村智騎手も、息子の待望の初白星に「初勝利まではと毎週競馬場に来ていましたが、これでもう来なくてよさそうです(笑)」と安堵のコメント。吉村誠騎手も「馬主さんをはじめ、先生や関係者の皆様が良い馬を僕の為に用意してくださって本当に感謝しています」と、騎乗を依頼したオーナーはじめ関係者に感謝の気持ちも忘れなかった。
犬塚悠治郎オーナーも好騎乗を称賛
「ボルザコフスキーを所有するのは『ぐりぐり君』の愛称でも知られる犬塚悠治郎オーナーですが、実は吉村誠騎手は競馬学校を卒業したタイミングでその犬塚オーナーに挨拶の手紙を送っていたようです。
これには犬塚氏も『機会があれば僕の所有馬にも騎乗してもらいたいです』とポスト。今回はそれを実行した形となりましたが、実際には期待の所有馬、それもメインレースでデビューしたばかりの新人騎手を乗せるというのは、なかなかできることではないと思いますよ」(同)
ちなみに犬塚オーナーはボルザコフスキーが勝利した後、自身のXに「ルーキー吉村誠之助騎手が好騎乗してくれました」「JRA初勝利おめでとうございます」と愛馬を勝利に導いた鞍上を褒め称えるポスト。これには2000以上の「いいね」がついており、この中には今村聖奈騎手のアカウントからの「いいね」も含まれている。
「ゆくゆくは日本のトップジョッキーとして名を上げられるように頑張っていきたいです」
初勝利のインタビューではそう宣言した吉村誠之助騎手。競馬学校卒業生としては史上6人目となるメインレースでの初勝利という離れ業をやってのけたルーキーのこれからの活躍に期待だ。