スキルヴィングの非業の死から1年…懸念される青葉賞(G2)の超高速化と歴代最速馬の悲劇

好メンバーの揃った青葉賞だが…

 27日に東京競馬場で開催される青葉賞(G2)には、今年もダービー切符を狙う素質馬が揃った印象だ。

 弥生賞ディープインパクト記念(G2)で1番人気に支持されたトロヴァトーレ、キタサンブラックの弟シュガークン、先着を許したのが皐月賞馬ジャスティンミラノだけのヘデントール、先週のフローラS(G2)を勝ったアドマイヤベルを破ったマーシャルポイントなど、まだ底を見せていない大物候補がズラリ……。

 また、東京スポーツ杯2歳S(G2)2着馬シュバルツクーゲル、共同通信杯(G3)でジャスティンミラノ、ジャンタルマンタルに続く3着だったパワーホール、京成杯(G3)3着、スプリングS(G2)4着のコスモブッドレアなど、実績組も充実している。

 日本ダービー(G1)の優先出走権が得られるのは1、2着だけだが、どの馬が本番に駒を進めても一考の価値が生まれそうな好メンバーと言えるだろう。今年こそ「青葉賞組はダービーを勝てない」というジンクスが覆るシーンを見ることができるか期待したい。

 だが、その一方で懸念されているのが青葉賞の「高速決着」だ。

記憶に新しい昨年のスキルヴィングの悲劇

 先週行われたフローラSは、元JRA騎手の安藤勝己氏が「トライアル勝負をモノにしたって印象。オークスは王道組やな」(公式Xより)とジャッジするなど、そこまでレベルの高い内容ではなかったかもしれない。

 しかし、その一方でアドマイヤベルの勝ち時計1:59.0は、フローラSが現行の東京・芝2000mで行われるようになってから歴代3位という好タイム。この時期の東京開催は高速馬場化が進み、このまま順調に行けば今週末の青葉賞でもレコードに近い時計が記録される可能性が高い。

 ただ、かつて2020年に日本ダービーでコントレイルが記録した2:24.1 より1.1秒も速い2:23.0という青葉賞レコードを記録したオーソリティは、その5日後に骨折が判明。秋までの休養を余儀なくされることとなった。

 また、歴代2位のアドミラブルは1番人気に支持された日本ダービーこそ3着に善戦したが、その後に脚部不安を発症してこちらも長期休養。結局、故障が重なって復帰できないまま引退となってしまった。

 そして、ファンにとっても記憶に新しいのが昨年のスキルヴィングだろう。

スキルヴィング 撮影:Ruriko.I

 歴代3位の好タイムで青葉賞を制したスキルヴィングは、本番の日本ダービーでも2番人気に支持されたが、まったく力を発揮できずに最下位でゴール。入線後、鞍上のC.ルメール騎手が下馬した直後に倒れ込むと、急性心不全でそのまま死亡してしまった。

 木村哲也調教師ら関係者はもちろん、日本ダービーという晴れ舞台を見守った全国の競馬ファンが大きなショックを受けたことは言うまでもないだろう。

 無論、関係者が「走りやすい馬場だから時計が出る」と話している通り、高速馬場を走った反動と故障の因果関係に明確な根拠はなく、スキルヴィングの事件に青葉賞の影響があったことは一説に過ぎない。歴代4位のハイアーゲームや、5位のプラダリアのようにダービー後も元気に走り続けた馬も当然存在する。

 だが、この時期の3歳馬にとって2400mを連続で走ることはやはり過酷だ。これだけの高速馬場の上、これだけの好メンバーだけに、今年の青葉賞が遅い時計で決着することは考え辛いが、まずは人馬無事であることを願いたい。

 オルフェーヴルのライバルとして活躍したウインバリアシオンは歴代ワースト2位の勝ち時計2:28.8であり、青葉賞馬の出世頭シンボリクリスエスの2:26.4も下から数えた方が早い。無事之名馬ではないが、人も馬も不安なく心から楽しめるのが競馬のあるべき姿であるはずだ。

浅井宗次郎

1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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