カラ馬が“ビクトリーロード”を形成?「元クラシック候補」がスランプ脱出!イクイノックスの名門から転厩&去勢手術明け初戦で待望のオープン入り
WIN5、4億4605万7430円のもう1頭の立役者
1時間足らずの間に4億円を超える大金を手にした強者が現れた。12日の中央競馬で行われたWIN5である。
637万2249票が投じられたこの日のWIN5は、最終5レース目のヴィクトリアマイル(G1)を前に144票が生き残っていた。人気を集めたマスクトディーヴァかナミュールのどちらが勝ってもおそらく1000万円近い配当になっていただろう。
ところが最終レースを制したのは14番人気のテンハッピーローズ……。的中票数は「1」となり、払戻金は今年の最高額、歴代でも4番目に高い4億4605万7430円に跳ね上がった。
超高額配当を決定づけたのはヴィクトリアマイルのテンハッピーローズだったのは間違いない。ただ、初っ端の京都10R・錦S(3勝クラス)で12番人気のボーデン(セ6歳、美浦・上原佑紀厩舎)が勝利したことも大きな要因となった。
淀の芝1600m外回りで開催された同レースは、1着から6着までが0秒2差の大激戦。スタート直後にタイゲンが落馬したこともレースに少なくない影響を与えていた。
1枠1番のタイゲンはスタートで大きく躓いて、鞍上の和田竜二騎手が落馬。カラ馬のまま序盤はインの“最後方”を追走した。そしてタイゲンの目の前の後方2番手、いや“最後方”に控えたのがボーデンだった。
ボーデンの鞍上を務めた団野大成騎手は右後方を走るタイゲンをチラチラと見ながらの追走。最初のコーナーに差し掛かるあたりで、タイゲンが内々を通って“進出”を開始すると、団野騎手とボーデンは進路を譲ったため、すぐ外にいたトオヤリトセイトと接触する場面もあった。
3~4コーナーにかけて、タイゲンは内ラチ沿いを徐々に押し上げていく。接触を恐れる他馬はやや距離を取りながらの追走。そんな中で、ボーデンと団野騎手はタイゲンの直後を確保し、追尾するように前へと進出していった。
4角ではカラ馬が大きく外に膨れてしまい、その影響を被った馬が4頭ほどいた。ボーデンはそれらの馬を尻目にロスなく最後の直線を迎えた。
しかし京都外回りの長い直線で、前を走る先行馬がズラッと横に並びボーデンの進路はなかなか開かない。残り100m地点で内にうまく潜り込むと、先頭に立っていたリッケンバッカーをクビ差交わしてゴールイン。上がり3ハロン最速となる33秒3の強烈な決め手を発揮して久々の勝利を挙げた。
「直線はこちらが思った以上にしっかりと反応してくれました」
鞍上を務めた団野騎手は初めてコンビを組んだボーデンの激走をそう称賛。「カラ馬がいた分、スムーズさを欠いた部分はあった」というものの、直線で進路が開くのをギリギリまで我慢する好判断も最後のひと伸びにつながったか。
クラシック候補の1頭だったボーデン
波乱をもたらしたボーデンだが、もともとはエフフォーリア、シャフリヤール、タイトルホルダーが三冠を分け合った現6歳世代の中でクラシック候補と呼ばれた1頭でもあった。3年前の皐月賞トライアル、スプリングS(G2)と続くラジオNIKKEI賞(G3)で1番人気に支持されるなど、早くから高い評価を得ていた。
ところがスプリングSで3着に入り、皐月賞の優先出走権を獲得するも、フレグモーネを発症したため回避。ラジオNIKKEI賞も6着に敗れ、その後は自己条件を歩んだ。4歳の夏に2勝クラスを勝ち上がったが、3勝クラスで頭打ち状態に。同クラスでは8戦連続馬券圏外という屈辱を味わった。
そんなボーデンの転機となったのが、今年1月の節分S(3勝クラス)で8着に敗れてからだ。去勢手術を受け、木村哲也厩舎から上原佑厩舎へ転厩。心機一転の再スタートを切ったのが今回のレースだった。
「イクイノックスなどを輩出した名門の木村厩舎から開業2年目で重賞未勝利の上原佑厩舎に移籍。さらに去勢と(関西への)長距離輸送の影響もあってか、久々にもかかわらず馬体重は18kg減でした。12番人気だったのも頷けますよね。
ただ、かつてはクラシック候補と呼ばれていたようにポテンシャルは一級品。ショック療法ともいえそうな転厩と去勢がいい方向に出たのでしょう」(競馬誌ライター)
先に名前を挙げたエフフォーリアらクラシックを勝った3頭のほか、シュネルマイスター、テーオーロイヤル、プログノーシス、ジャックドール、レモンポップなど近年では屈指のハイレベルとされる6歳世代。約2年ぶりの勝利をきっかけに今後の重賞戦線でボーデンの活躍が見られるかもしれない。