【北九州記念(G3)】元JRA安藤勝己氏も絶賛の「反則級」ロケットスタート! ハナを争うことさえさせないピューロマジックがスプリンターズS(G1)の有力候補に
スタートからほんの数秒でその結末が見えてしまった
夏の小倉に将来楽しみな快速馬が誕生した。
30日の小倉メインは、例年なら8月に行われる北九州記念(G3)。今年は阪神競馬場の改修工事に伴う開催日割の変更で、CBC賞(G3)と時期が入れ替わる形で施行された。
フルゲート18頭で争われた一戦は、サーマルウインドが単勝オッズ4.5倍の1番人気。以下、ナナオなど6頭が単勝10倍未満という混戦ムードだった。
ところが、白熱のゴール前が予想されたレースは「スタートからほんの数秒でその結末が見えてしまった」というと言い過ぎだろうか。
元JRA騎手の安藤勝己氏がレース後、自身のXに「反則級のロケットスタート。53キロの開幕週で大きなアドバンテージやった」とポストしたように、ピューロマジック(牝3歳、栗東・安田翔伍厩舎)が軽量を生かして好スタート、好ダッシュを決めると、テンの100mほどで2馬身のリードを確保。最後は半馬身差に詰め寄られたものの、そのまま逃げ切った。
「スタートを出てくれて、本当にいいレースができました。前半は速かったですが、しっかり粘って開幕週を味方につけてくれました」
鞍上を務めた松山弘平騎手もそう振り返ったように、小倉の馬場は前が止まらない状態。実際に開幕週の2日間では北九州記念を含めて芝1200mで9鞍行われたが、逃げ馬は「5-2-1-1」の好成績を残していた。まさに“行ったもん勝ち”の馬場で行われていたというわけだ。
ただ、馬場だけが勝因だったかというと決してそうではない。
競りかけさせなかったことが勝利に直結
600m通過が32秒3というハイラップを刻んだピューロマジックだったが、松山騎手は「ペースは速かったですが、自分としてはそんなに速くないと思いました」と自身の体感としては、許容範囲のハイペース。勝負所で抜群の手応えだったことも、それを物語っている。
4コーナーを迎えた頃には後続に3馬身ほどのセーフティリードをつけていたピューロマジックにとって、同型逃げ馬に競りかけられなかったことも大きかったはずだ。
同じ6枠に入った昨年の覇者ジャスパークローネやテイエムスパーダ、モズメイメイなど、逃げて真価を発揮するタイプの馬がそろっており、果たして“どの馬がハナを切るのか”という議論もファンの間で活発だった。
ところが、ジャスパークローネはスタートで痛恨の立ち遅れ。さらに内目の枠から好スタートを切ったテイエムスパーダとモズメイメイも、ピューロマジックのテンのスピードについていくことができなかった。
つまり、競りかけられなかったのではなく、競りかけさせなかったことが勝利に直結したといえよう。
これでピューロマジックは葵S(G3)に続く重賞2連勝。賞金加算にも成功し、今後は夏を休養に充て秋の大一番に直行するのか、それとも1戦挟むのか。いずれにしても、主役不在のスプリント界に将来有望な逸材が現れたことは間違いない。