川田将雅「ポツン」から豪快な大外一気!「何とか勝ち切ることができました」1億円馬ベラジオボンドが逆襲の秋を見据え、大きな一歩
11日、中京競馬場で行われた鞍ケ池特別(1勝クラス、芝1600m)は、1番人気のベラジオボンド(牡3歳、栗東・上村洋行厩舎)が勝利。今春の毎日杯(G3)で3着した好素材が、単勝1.6倍の大本命に応えた。
逆襲の秋に向け、ここは負けられないレースだった。昨年の千葉サラブレッドセールで税込み1億1000万円と、同セール初の1億円超えを果たしたベラジオボンド。昨年12月の新馬戦を快勝して期待通りのデビューとなったが、この春は共同通信杯(G3)6着、毎日杯3着、さらに京都新聞杯(G2)は14着に大敗するなど重賞の壁に跳ね返された。
特に前走の京都新聞杯は、勝負所を迎える前にズルズルと下がってしまう内容。レース後、岩田望来騎手が「馬群に入って気難しさが出て、最後も余裕がなかった」と気性面の課題を指摘。父がロードカナロアということもあって、距離に限界があるのかもしれない。
そこで陣営は今回、距離を2200mから600m短縮してマイル戦にシフト。鞍上にトップジョッキーの川田将雅騎手を配し、上村調教師も「自己条件なら決めたい」と意気込みを語るなど、まさに必勝態勢を築いた。
だが、レースでは思わぬ苦戦を強いられることとなる。
スタートこそ決めたベラジオボンドだったが、ズルズルとポジションを下げ、ついには最後方まで下がってしまう。それも一時は馬群から大きく置かれ、いわゆる「ポツン」状態になり、単勝1.6倍の大本命を応援していたファンも気が気ではなかったはずだ。
しかし、ここからがこの馬が非凡たる所以だ。最後方のまま迎えた最後の直線で大外に持ち出されたベラジオボンドは、グイグイと脚を伸ばしてライバルたちを一気に飲む。最後は2着ダイシンビヨンドに半馬身差をつけてのゴールだった。
「着差以上に強い内容でしたが、課題の残るレースでもありました。レース後、川田騎手も『なかなか進んでくれなくて』と振り返っていましたが、今回は2200mから距離を600mも短縮して挑んだレース。これまで本馬が経験した最初の600m最速は毎日杯の35.2秒でしたが、今回はそれより1秒も速い34.2秒。馬の方も初のマイル戦に戸惑っていた印象です。
ですが、逆に言えば並みの馬なら、このまま終わっていても仕方なかったレース。それを最後の直線だけで差し切ってしまう辺りは、この馬も相当な能力を秘めていると思いますし、自己条件で躓いてほしくない器だと思います」(競馬記者)
今回は+22キロと大幅に馬体重を増やしていたが、上村調教師が「まだ子供っぽさが残っている」と指摘している通り、ベラジオボンドはまだまだ成長途上。むしろ470キロ台だった馬体重が490キロまで上がったことは今後にとってもプラスに働きそうだ。
「最後は何とか動いてもらって勝ち切ることができました」(川田騎手)
今回は課題が残る一戦となったが、秋以降の大レースを見据えるベラジオボンド陣営にとって1勝クラスで足踏みしなかったことは大きい。もしここから連勝を重ねて11月のマイルCS(G1)に間に合うようなら、マイル界の新星となっているかもしれない。