なぜ凱旋門賞は荒れ続けるのか? 昨年「38万馬券」欧州と日本の”競馬の違い”が生む、大本命エネイブル以上に「警戒すべき」存在とは
日本期待のマカヒキがほぼ何もできずに大敗し、R.ムーア騎乗のファウンドが勝利した昨年の凱旋門賞。レース後、ショッキングな内容に日本全体が意気消沈する中、いち早くA.オブライエン厩舎の所属馬による「チームプレー」を指摘したのは、グリーンチャンネルで解説していた武豊騎手だった。
精力的な海外遠征が行われるようになった昨今でも、世界の競馬、特に凱旋門賞を含めた欧州の競馬には、まだまだ”初心”な日本の競馬界。その中で1人だけ群を抜いた海外経験を誇る武豊騎手が、即座に見抜いたオブライエン厩舎が上位独占に至った最大の要因。
それこそが、エネイブル以上に警戒しなければならない「本当の敵」である。
昨年、勝ったファウンド、2着のハイランドリール、3着のオーダーオブセントジョージという3頭の管理馬を凱旋門賞に送り込んだオブライエン厩舎。さすがにワン・ツー・スリーは出来過ぎの結果といえるだろうが、こと「ファウンドを勝たせる」ということにおいては、武豊騎手が指摘した通り、実に見事な”チームプレー”だった。
日本からただ1頭の出走となったマカヒキが、まったく内に入れてもらえずに敗戦した一方、そのマカヒキの14番と変わらない12番枠から発走したファウンドはスタート直後、即座にインコースに舵を切っている。
その時、ファウンドの鞍上ムーア騎手には「インに入れる」そして、勝負所を迎えれば「そこから抜け出せる」という自信があったに違いない。非常に高いリスクの伴う、大胆な決断を可能にさせたのが、スタートから果敢に先行集団を形成し、レースの主導権を握ったハイランドリールとオーダーオブセントジョージの存在だった。
道中、同厩2頭にしっかりとガードされる形で、内々で脚を溜めることに成功したファウンドは、最後の直線で1頭だけ矢のように伸びた。そして、その”矢”をゴールまで届かせる道を作ったのも、ハイランドリールとオーダーオブセントジョージの2頭だ。
完璧な作戦は、熟練されたチームプレーによって、完璧な成功を迎え、当時の世界No.1ポストポンドをいとも簡単に交わし切ってしまった。
あれから1年、今年の凱旋門賞に出走するオブライエン厩舎の所属馬はアイダホ、オーダーオブセントジョージ、セブンスヘブン、カプリ、ウィンターと、なんと5頭に上る。世界最強の連携を誇る名厩舎によるチームプレーの影響力が、昨年を大きく上回ることは誰の目にも明らかだろう。