なぜ凱旋門賞は荒れ続けるのか? 昨年「38万馬券」欧州と日本の”競馬の違い”が生む、大本命エネイブル以上に「警戒すべき」存在とは
その点を考慮すれば絶好の枠を引いたエネイブルだが、逆にそれが”仇”となる可能性も考慮しなければならない。2番枠を引いたということは「内々で競馬をする」ことがほぼ決まったようなものであり、単純に最後の直線で馬群から抜け出せない可能性があるからだ。
ただでさえ、他のライバルからしても警戒すべき抜けた1番人気。オブライエン厩舎勢からしても「最も警戒すべきライバル」であることは明らかで、最悪の場合、オブライエン厩舎の”策略”によって、何もできずに敗れることがあっても驚けない。
多くのファンが期待している天才少女の圧勝劇は、そう簡単に生まれないのではないだろうか。18頭中5頭が作り出す「組織力」は、あまりにも脅威だ。
では、逆に圧倒的な勢力を送り込んできたオブライエン厩舎は、「どの馬」を勝たせたいのか。
「今シーズンから、ライアン(ムーア)が我々の主力馬に騎乗します」
一昨年の4月、オブライエン調教師は世界のメディアに対して、そう公表した。つまり、この瞬間からムーア騎手がオブライエン厩舎の「エース」に正式に就任したということだ。
その上で、昨年の凱旋門賞のオブライエン勢の”動向”を振り返りたい。
昨年の凱旋門賞を迎えるにあたって、ファウンドの前走はL.デットーリ騎手が、オーダーオブセントジョージにムーア騎手、そしてハイランドリールの2走前にはJ.ヘファーナン騎手がそれぞれ騎乗していた。日本的な競馬観で見れば、本番の凱旋門賞にもこのままのコンビで参戦することが濃厚といえるだろう。
しかし、実際はハイランドリールにはヘファーナン騎手が騎乗したものの、オーダーオブセントジョージにはデットーリ騎手、そしてファウンドにはムーア騎手が騎乗とあえて鞍上をチェンジさせた。つまり、オブライエン厩舎は「エース」を騎乗させたファウンドを最有力と見ていたということになる。
その結果は先述の通り。つまり、先ほど「ファウンドを勝たせるため」と記載したが、正確には「エースが騎乗した馬を勝たせるため」のチームプレーであったといえるだろう。
その上で5頭を誇る今年のオブライエン厩舎勢の中で「エース」のムーア騎手が騎乗するのは、エネイブルと同じ3歳牝馬のウィンターだ。