JRA藤田菜七子「2018年」の軌跡。勝ち星「倍増」で女性騎手・最多勝記録更新も、賛否を呼ぶ”菜七子ルール”誕生……激動の一年を振り返る
全国的な「菜七子フィーバー」と共にデビューを迎えて大注目を浴びる中、かつては「成績が伴っていないので戸惑いを感じる」と漏らしていた本人だったが、20歳を迎えた3年目はもはや堂々としたもの。競馬界の顔役として表舞台に立つ姿も板についてきた印象で、そこには二十歳を迎えた「大人」の姿があった。
上半期を締めくくる6月、そんな藤田菜七子騎手に大きな勲章が訪れる。
所属厩舎のベルクカッツェで今年9勝目を上げた藤田菜七子騎手は、ついに通算31勝に到達。それは本人も「憧れ」と語る競馬の花形「G1競走」の騎乗資格となる。「そんなに甘い世界じゃない」と話していた通り、残念ながら今年のG1騎乗はなかったが、初の大舞台参戦は時間の問題。菜七子騎手が騎乗することで、G1がまた1つ大きな盛り上がりを見せるに違いないだろう。
ただ、勝負の世界に生きる以上、当然試練も訪れる。
まずは、藤田菜七子騎手のここまでの躍進を支えてきた敏腕エージェント中村剛士氏との契約解消だ。今の競馬界は、まさに「エージェント全盛」といわれて久しい時代。騎手として成功するには純粋な実力だけでなく、どれだけ優秀なエージェントを確保できるかという”政治力”も問われる。
その点、戸崎圭太騎手、内田博幸騎手といった関東リーディング常連騎手を手掛ける中村氏との決別は、ファンに大きな不安を与えた。
しかし、そんな周囲の心配を余所に藤田菜七子騎手の活躍は止まらない。7月には昨年に続く二ケタ勝利となる10勝目、さらにはJRA通算30勝目の節目に到達。8月には自身初となる1日2勝の活躍で昨年の14勝に並ぶと、その翌週には15勝目を上げ、本人が持つ女性騎手による年間最多勝記録をあっさりと更新した。
さらに同月、ばんえい競馬とJRA騎手のコラボイベント『JRAジョッキーDAY』で、人生初のばんえい競馬にも挑戦。残念ながら勝つことはできなかったが、JRAでは通算35勝に到達し、牧原(現増沢)由貴子元騎手が持っていた女性騎手・通算最多勝記録を更新した。「たくさんの馬に乗せてもらったおかげ」と関係者に感謝を示しつつデビュー3年目にして、早くも女性騎手の新境地を切り開いていく立場となった。
G1開催が続く秋競馬が近づいてきたこともあって、この辺りからG1騎乗が認められた藤田菜七子騎手が「どのG1に騎乗するのか」が話題となる。