【徹底考察】エリザベス女王杯(G1) タッチングスピーチ「世界No.1を誇るR.ムーア騎手の腕の見せ所。世代屈指の切れ者の『真の姿』とは」
タッチングスピーチはよく「切れ者」と評されているのを見掛けるが、それはおそらく唯一の重賞勝ちであるローズSの印象があるからだろう。確かに後方16番手から豪快に差し切ったあのレースのインパクトは非常に強い。上がり3ハロンにしても、最速を叩き出したミッキークイーンとわずか0.1秒差の33.9秒。父もディープインパクトと、これだけを見れば本馬が「切れ者」と評されても何らおかしくない。
しかし、着目すべきは本馬の母リッスンがSadler’s Wellsの産駒であることだ。
【血統診断】で述べた通り、リッスンはSadler’s Wells産駒としてはスピードがある。ただし、それでも欧州血統、特にSadler’s Wellsが内包する独特の「重さ」が完全に拭い去られているわけではない。それは欧州で最も大きな成功を収めたSadler’s Wellsが、日本で通用しなかった最大の原因だ。
それを踏まえタッチングスピーチのキャリアを振り返ると、これまで12戦で上がり最速を記録したのは、実はわずか3戦しかない。
それも未勝利戦の34.8秒、洋芝の札幌の500万下で記録した34.2秒、そして重馬場の京都記念の36.6秒である。つまり、ここに「切れ者」の印象はまったくない。それどころか「典型的な欧州色の強い競走馬の傾向」といえる。
無論、本馬がまったく切れないと述べるつもりはない。ただ、少なくとも「上がりに限界のある馬」である可能性は非常に高い。
実際にこの馬のイメージを定着させたローズSにしても、実は前半の1000mが58.4秒という非常にタフな流れだった。これは桜花賞馬のレッツゴードンキが逃げたことで、各馬の前への意識が強くなったためと考えられる。
そういった状況でタッチングスピーチは後方16番手から脚をひたすら溜めて爆発。ミッキークイーンと0.1秒差33.9秒の末脚は見事だが、相当にタフさが活きる状況であり、おそらくこれがこの馬の末脚の限界だろう。