横山武史「大ブーイング」の油断騎乗から1年、エフフォーリア妹で「禊」の一戦を快勝

横山武史騎手 撮影:Ruriko.I

「有馬記念勝ててうれしいんですけど、心の底から喜べないのが残念です……」

 今からちょうど1年前。主戦を務めるエフフォーリアとのコンビで、有馬記念(G1)を制した横山武史騎手だったが、レース後には複雑な心中を口にしていた。

 要因となったのは、前日に行われた新馬戦でのことだ。横山武騎手が騎乗したのは、単勝1.7倍の断然人気に推されたヴァンガーズハート。翌日に有馬記念を制すエフフォーリアの弟である。

 無論、周囲の期待は勝利のみ。圧倒的な支持に応える様に、ヴァンガーズハートは抜群の手応えで4コーナーを回ると、最後の直線半ばで先頭に立つ楽勝ムード。この時、鞍上が後ろを振り返る余裕すらあり、誰もがこの馬の勝利を疑わなかった。

 しかし、ゴール手前で横山武騎手が僅かに手綱を緩めたところ、内からルージュエヴァイユが猛烈な勢いで強襲。最後は首の上げ下げとなる写真判定の末、楽勝ムードから一転、まさかの2着に敗れたのだ。

 レース後にはJRAから「決勝線手前で数完歩追う動作を緩めて2着になった」として、開催2日間の騎乗停止処分を受けた横山武騎手。この騎乗ぶりにファンからも、ネットの掲示板やSNS等を通して「油断騎乗」と大ブーイングを浴びた。そんな背景もあって、翌日には有馬記念を勝ったにもかかわらず、歯切れの悪いコメントになってしまったわけだ。

エフフォーリア妹で「禊」の一戦を快勝

 あれから1年が経った25日、そんな横山武騎手にリベンジの機会が訪れた。奇しくも昨年と同じ有馬記念週にデビューを迎えることになった、エフフォーリアやヴァンガーズハートの妹ペリファーニア(牝2、美浦・鹿戸雄一厩舎)の鞍上を任されることになったのだ。

 直前の追い切りでは美浦ウッドでラスト11秒9をマークするなど、鋭い動きを見せていたペリファーニア。管理する鹿戸調教師も「雰囲気がいいし、能力も高い。初戦から楽しみ」と太鼓判を押していただけあって、昨年の兄同様に当日は単勝1.4倍の断然人気に支持された。

 スタート直後のコーナー手前で、他馬と接触する不利を受けたペリファーニアだったが、道中で中団まで追い上げると、最後の直線では早々に先頭へ。抜け出しても鞍上は最後まで気を緩めることなく追い続け、最終的に2着に2馬身差をつけて快勝した。

「昨年のミスがあっただけに、横山武騎手にとっては特別な一戦だったと思いますが、雪辱と言わんばかりの見事な勝利でしたね。追い比べの末2着に破ったレッドシュヴェルトは、奇しくも昨年ヴァンガーズハートを最後に差し切ったルージュエヴァイユと同じ東京ホースレーシングの馬。何とも言えないドラマ性を感じましたよ。

道中は鞍上が『絶望的』と話したほど大きな不利を受けながら、終わってみれば完勝と言える内容でした。陣営は来春の桜花賞(G1)を見据えているようで、先々も本当に楽しみです」(競馬誌ライター)

「血統的にも縁のある馬ですし、人気になっていたので応えられて良かった」

 禊の一戦を制し、レース後には安堵の表情を浮かべた横山武騎手。残念ながら兄エフフォーリアの復活とはならなかったが、来年はペリファーニアとのコンビで、牝馬クラシックを席巻する日が訪れるかもしれない。

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