藤沢和雄元調教師の秘蔵っ子が「元サヤ」と大金星! 重賞初勝利まで12年の苦労人が急成長
9日に中山競馬場で行われたフェアリーS(G3)は、11番人気のキタウイング(牝3、美浦・小島茂之厩舎)が内から豪快な差し切り勝ち。前走の阪神JF(G1)は14着に惨敗したものの、昨年の新潟2歳S(G3)覇者がその実力を改めて証明した。
「しまいを生かす競馬を、との指示でした」
外枠が不利とされる中山・芝1600mで16頭立ての14番枠だったキタウイングだが、手綱を取った杉原誠人騎手がレース後にそう明かした通り、最初から腹は決まっていたようだ。
スタートを切るとすぐさま内に潜り込み、後方2番手で脚を溜めたキタウイングと杉原騎手。4コーナーにかけて内から徐々に追い上げると、最後の直線では鋭い末脚が炸裂。最後は外から追い込んだメイクアスナッチをアタマ差振り切った。
「後方待機は作戦だったとはいえ、直線で最内を突いた杉原騎手のアシストはお見事でしたね。仮に最後の直線で外へ持ち出していたら、1着には届いていなかったかもしれません。
レース後には鞍上も『乗るたびに良くなっていますし、気持ちも強いものがあります』と成長に手応えを感じているようでしたし、ここ2年は勝ち馬のファインルージュやライラックがのちにG1でも好走しています。キタウイングの先々も期待できるのではないでしょうか」(競馬誌ライター)
およそ5か月ぶりにキタウイングの鞍上を任された杉原誠人騎手にとっても、このレースに懸ける思いがあったかもしれない。
2戦目で初勝利に導いた杉原騎手だったが、次戦の新潟2歳Sで鞍上を任されたのは昨年の関東リーディング戸崎圭太騎手。勝利直後の乗り替わりとなった上、戸崎騎手に重賞制覇を決められてしまっただけに、杉原騎手に手綱が戻ることは難しい状況だった。
したがって、杉原騎手にとって今回のフェアリーSはもう一度キタウイングの主戦騎手として名乗りを上げる、またとないチャンスだった。そんなレースを勝ち切った上に、2着メイクアスナッチの鞍上は戸崎騎手。元パートナー同士の争いは、まさに明と暗が分かれた結果となった。
重賞初勝利まで12年の苦労人が急成長
「昨年2月までは藤沢和雄調教師に所属していた杉原騎手ですが、師の引退により3月からフリーに。ただ、そこから一皮剝けたといいますか、昨夏にはアイビスサマーダッシュ(G3)をビリーバーで制し、キャリア12年目にして重賞初勝利を飾るなど、独立後から存在感が増しているような印象です。
それにキタウイングやビリーバーは、いずれも以前からパイプの強いミルファームの所有馬です。まだミルファームがG1で杉原騎手を起用した例はありませんが、重賞でも陣営の期待に応える場面が多くなれば、自然と大舞台でチャンスが回ってくる機会も増えるでしょうね」(同)
レース後、「久々に騎乗して、一段とパワーアップしたように感じました」とかつての相棒の成長に目を細めた杉原騎手。継続騎乗できるかはわからないが、この勝利で自身4度目となるG1騎乗に、また一歩近づいたはずだ。