東西の“地味系騎手”に飛躍の兆し!? 意地の重賞勝利、早くも一昨年の勝利数に並ぶ
1月5日の金杯を皮切りに、怒涛の「1+3日間開催」を終えた中央競馬。年明け早々から競馬尽くしの週末となったが、その中で輝きを放ったのが37年目を迎えたレジェンド・武豊騎手だった。
8日に中京競馬場で行われたシンザン記念(G3)をライトクオンタムとのコンビで制し、これがJRAの重賞350勝目というメモリアル。大台到達だけでなく「デビューから37年連続重賞勝利」という偉業まで加え、生きる伝説が今年も存在感を見せた。
するとその翌日には、昨年悲願のリーディングジョッキーに輝いた川田将雅騎手が大爆発。9日は中京で9鞍に騎乗したのだが、10Rの雅S(3勝クラス)までを終えた段階の成績は驚異の「1着-2着-2着-1着-1着-2着-1着」というパーフェクト連対。川田騎手なしでは馬券を買うことができないような状態であった。
その後、11Rの淀短距離S(L)は1番人気のルピナスリードで4着に敗れたものの、12Rも2着で締め括ったこの日の成績は【4-4-0-1/9】。勝率44.4%、連対率88.9%という好成績を叩き出し、通算7勝は全体トップ。2年連続のリーディング獲得へ好スタートを切った。
この他にもイギリスの名手D.イーガン騎手は5勝を挙げ、今年はじめて短期免許を取得して来日したT.バシュロ騎手も3勝と、スタージョッキーたちが存在感を発揮している一方で、これまでなかなかスポットが当たらなかった“地味系”騎手たちの奮闘も目立っている。
東西の“地味系騎手”に飛躍の兆し!?
まず大きなインパクトを残したのが、9日にキタウイングとのコンビでフェアリーS(G3)を制した杉原誠人騎手だ。
相棒は昨夏の新潟2歳S(G3)を制した重賞馬でありながら、11番人気という低評価で迎えた今回のレース。外枠スタートから、序盤は後方2番手から追走しながらも、3コーナー過ぎから内ラチ沿いを通って位置を上げていくと、最後の直線はインの狭いスペースをこじ開けて見事な差し切り勝ち。重賞2勝目をもたらした。
杉原騎手にとっても、昨年のアイビスサマーダッシュ(G3)以来となる自身重賞2勝目。思えばその時も、キタウイングと同馬主のミルファームが所有するビリーバーで掴んだ待望の重賞タイトルだった。
キタウイングとは新馬戦からの付き合いで、未勝利戦を勝ったのも杉原騎手の手綱。しかし、初勝利から連闘で挑んだ新潟2歳Sでは戸崎圭太騎手に乗り替わり。これには杉原騎手が同日に札幌で行われたキーンランドカップ(G3)でビリーバーに騎乗していたため仕方がない部分はあった。
しかし、阪神JF(G1)でもキタウイングの背には和田竜二騎手。そして今回も、実は田辺裕信騎手との新コンビ誕生の可能性があったことが『東スポ競馬』のレース後取材で明かされている。大舞台では成績上位のジョッキーに乗り替わりというのが常に隣り合わせの状況の中、巡ってきたチャンスで最高の結果を出すことができたというのは価値が高い。
この一発のみならず、今年の杉原騎手は4日間で【3-1-0-9/13】と好調。それも3勝は4番人気・6番人気・11番人気で挙げたもので、2着1回も10番人気での食い込み。桜花賞(G1)を目指すキタウイングとのコンビはもちろんのこと、それ以外の場面でも波乱の使者として注視していきたい存在だ。
そしてもう一人、この3日間開催で爪痕を残したのが水口優也騎手。デビュー14年目の31歳は今年初騎乗となった7日の中京2Rをプライムレートとのコンビで勝利すると、8日の中京9R・濃尾特別(2勝クラス)では12番人気で単勝65.9倍のジローを1着に導き、馬単6万2060円、3連単258万1850円という大波乱の立役者となった。
5日は騎乗がなく、この3日間開催から始動した水口騎手の2023年。ここまでの成績は【2-1-0-2/5】と分母は小さいながらもハイアベレージで、勝率40%に連対率60%をマーク。何よりこの数字を騎乗馬の平均人気9.2で叩き出しているのだから凄まじい。
ちなみに、水口騎手はキャリアハイが2012年の年間11勝。2021年は2勝だったので、この3日間だけで一昨年の年間勝利数に並んだことになる。昨年も6勝ということで、今年はすでにその3分の1まで到達。前年超えはもちろん、11年ぶりの自己最多更新にも期待が膨らむ。
JRAのリーディング情報を見ても、杉原騎手は第11位、水口騎手は第20位にランクイン。2人とも1ページ目に名前が載っているというのは、ひとつ大きなアピール材料となることだろう。
数少ないチャンスを掴み、この一年を飛躍の年とすることができるか。好発進を切った東西の“地味系騎手”の躍進に注目だ。