JRAスターズオンアース級「クラシック候補」が鮮烈デビュー!? 人気はなくても実力あり、リバティアイランドに強敵出現か
デビュー戦でキラリと光る勝ち方をした素質馬を、記事で採り上げることがライフワークとなっている筆者。これまでダノンベルーガ、ナミュール、ドゥラドーレス、プレサージュリフト、レイベリングらに注目し、それなりに活躍してくれた。
昨年6月から始まった新馬戦も、そろそろタイムリミットの2月中旬が近づいて来た訳だが、日経新春杯(G2)の行われた先週末の日曜中京の6Rでデビュー勝ちを決めたマスクトディーヴァ(牝3、栗東・辻野泰之厩舎)もクラシック候補の1頭として期待したい素質馬だった。
舞台は12頭立てで行われた芝2000m戦。単勝オッズ2.8倍で1番人気に支持されたヴィンセドリスに対し、マスクトディーヴァは15.1倍の6番人気と下馬評では大きな後れを取っていた。
しかし、デビュー前の馬ばかりで実際に走ってみないと分からないのはいつも通り。終わってみれば、戦前の評価を覆してマスクトディーヴァが圧勝したのだから……。この勝利に展開の恩恵や人気馬の不利があった訳でもなく、おそらく何度やり直しても勝ち馬だけは変わらなかったと思えるだけの強さを確認できた。
スターズオンアース級「クラシック候補」が鮮烈デビュー!?
レースは、1000m通過63秒1のスローに落とした2番人気グランデサラスが先導。対するマスクトディーヴァは中団やや後ろの7番手と苦しいポジションから追走する。最後の直線で2番手から先頭に躍り出たウインスノーライト目掛けて、各馬が一斉に襲い掛かり、激しい攻防を繰り広げた。
ただ、そんな展開を全く問題にせず、1頭だけ異次元の脚で突き抜けたのがマスクトディーヴァだ。
重馬場でパワーと適性を求められる舞台ながら、マークした上がり3ハロンのタイムは34秒4と出色。最終的に2着に粘り込んだウインスノーライトも35秒3で2位だった訳だが、2頭の間には0秒9もの差があった。3着に入ったガットネロの上がりも35秒4で3位タイだっただけに、積極策を採った馬が前残りするレースだったといえよう。
にもかかわらず、先行有利なレースを後方から大外を回して突き抜けたマスクトディーヴァの強さが目立ったのも無理はない。勝負どころとなった最後の直線半ばでは、ガットネロが外へと大きく膨らんだ煽りを受けて、距離のロスもあった。それでもハナやアタマ、クビではなく、1馬身3/4という明確な力の差を証明したことに大きな価値がある。
この鮮烈デビューに対して、騎乗した吉田隼人騎手は「走ってからは能力があると感じた」、管理する辻野調教師も「素質を感じていましたし、軽い芝ならもっといいパフォーマンスができると思います」と好感触。陣営のコメントを踏まえると、どうやらマスクトディーヴァは本番で強いタイプらしい。
そして今回の勝利は、オーナーである社台ファームにとっても、昨年の牝馬二冠を制したスターズオンアースに続くクラシック候補登場の期待も持てそうである。実はこのマスクトディーヴァ、血統的にもなかなかの良血馬なのだ。
父はエアグルーヴ一族の血を引くルーラーシップ、母父にディープインパクト、母母もビハインドザマスクと大物の名前がズラリ。母系が短距離寄りの印象こそあれ、芝2000m戦で強い勝ち方をしたのだから、中距離もこなせるだろう。
距離短縮を苦にする血統でもないため、桜花賞(G1)に出てきても面白い。時期的なことを考慮すれば、オークス(G1)なら余裕のあるローテーションを組めるか。3歳牝馬については、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を圧勝したリバティアイランド一強という見方が大半かもしれない。
だが、マスクトディーヴァの披露したパフォーマンスは、2歳女王の打倒も夢ではないと思わせてくれる内容だった。この予感が正解なのか、それとも過大評価なのか。次走でも注目したいヒロイン候補の登場だった。